第十三話:王都の逆上と忍者棟梁ガンドの誕生
――フロンティア領主館・深夜
王都から派遣された魔導騎士団のエースと暗殺者たちは、フロンティア領主館の応接室で三週間も足止めを食らい、苛立ちの限界に達していた。
「領主! 貴様、本当にダイキチの居場所を知らぬと言うのか!? 我らの王都からの招待状を無視し、三週間も雲隠れするなど、王権に対する明確な反逆だぞ!」
魔導騎士団のエースが剣の柄に手をかける。
領主は冷や汗を拭いながらも、必死で平静を装う。
「も、申し訳ございません! ダイキチ殿は気まぐれな御仁ゆえ……。しかし、私も連絡手段がなく……」
その瞬間、領主館の外で、轟音と魔力の爆発が響き渡った。
「な、なんだ!?」
暗殺者が窓から外を覗き込む。
「……バカな! 消えていたログハウスが、一瞬で元に戻っている! ダイキチが戻ったぞ!」
「よし、行け! 今度こそ捕縛だ! 力ずくで連行する! 奴の能力は国家の資源だ!」
王都の刺客たちは、三週間の鬱憤を晴らすかのように、ログハウス目掛けて殺到した。
――ログハウス・システムの起動
転移魔法でフロンティアへ帰還したダイキチは、ログハウスを定位置に戻すと同時に、ログハウス周辺のチートビル群に仕掛けたシステムを起動させた。
ログハウスの二階でビールを片手に、ダイキチは目の前のタブレットのセンサーに映る赤点(刺客)を確認する。
「やれやれ、相変わらず面倒な奴らだ。俺が美味しいウニ丼を食べている間に、よくもまあご苦労なこった」
シーナがタブレットを操作し、冷静に報告する。
「ダイキチ様。魔導騎士団が魔法陣を展開中です。彼らは迎撃を想定していません」
「当然だ。この世界には『科学』というチートが存在しないからな」
ダイキチはタブレットをタップした。
チートビル群の屋上に設置されたドローンが一斉に離陸し、静かにログハウスの上空を覆う。
そして、周辺の森と道路に展開している、秋葉原で仕入れたポータブルセンサー網がチートビル周辺を監視する。
魔導騎士団のエースが、ログハウスに向けて火炎魔法を放とうとした、その瞬間――
「警告! 侵入者を検知。退去しなければ非致死性ガスを放ちます」
ログハウスの周囲に設置されたスピーカーから、シーナの声で設定された電子音と警告が大音量で鳴り響いた。
「な、なんだこの音は!? 魔法ではない!上を見ろ!黒い飛行物体が……」
さらに、ドローン群から、閃光と無力化を目的とした非致死性ガスが一斉に放たれた。
魔導騎士団は体が硬直するような不快感に襲われ、暗殺者たちは未知の熱感知センサーに体が灼かれるような錯覚に陥る。
「くそっ、これがダイキチの異世界魔法か!退け!攻撃の準備を立て直す!」
――ミリアの怒りと能力
王都の刺客が一時的に混乱する中、ログハウスの裏口から、一人の女性が飛び出した。
ミリアだ、彼女の指には、札幌でダイキチに贈られた特注の高級リングが輝いている。
ミリアの瞳には、北海道旅行という至福の瞬間を邪魔されたことへの冷徹な怒りが宿っていた。
「主の緩い生活を脅かす面倒は、私が排除する」
ミリアは、身体強化(5倍)を施された身体と、四属性の付与魔法が施された腕輪の力を借りて、暗殺者の一団へと飛び込んだ。
戦闘開始。
ミリアは腕輪の風の付与魔法を一瞬で発動させ、横方向に高速スライドして敵の攻撃を避け、同時に土の付与魔法で地面から土壁を隆起させて複数の刺客の視界を遮る。
「馬鹿な……奴隷上がりの女が、ギルドの一流暗殺者相手に……。まるで、戦鬼だ!」
ミリアは魔導騎士団のエースの剣を素手で叩き落とし、地面に組み伏せた。
「ダイキチ様の『快適な生活』の邪魔をするな。二度と来るな」
王都の刺客たちは、科学兵器と強化された忠実な奴隷によって、完璧に迎撃され、屈辱にまみれて撤退していった。
――ガンド、忍者棟梁への道
戦闘後、ログハウス二階。
ダイキチはビールを飲み干し、ミリアとシーナの働きを褒めた。
「完璧な迎撃だった。よくやった、ミリア、シーナ。あの新しい強化と腕輪、さっそく役に立ってくれたな」
ミリアは満足げに腕輪を見つめる。
「ええ、主。この身体強化(5倍)と、風を使った横移動、そして土の遮蔽は、魔法士団のエースでも対応できなかったわ。」
シーナは冷静だ。
「ダイキチ様の『快適生活の護衛官』として、当然の責務です。これで当分は、王都の面倒は来ないでしょう」
そして、ダイキチはガンドを呼び出した。
「は、はい! 殿! 何なりとお申し付けくだされ! 拙者、この生命をかけて殿の『快適な城』を守りますでござる!」
ガンドは既に忍者服に着替え、時代村で買った黒い布で顔を覆い、強化を施された腕輪を握りしめている。
ダイキチは、「夜の快楽ビジネス」の青写真が描かれていたタブレットを、ガンドに差し出した。
「ガンド。お前には、あの夜の快楽を提供する店の代わりに、新しいビジネスの棟梁になってもらう」
ガンドは悲しげにタブレットを受け取る。
「うう……やはり、あの夢の快楽は……」
「泣くな。代わりに、もっと面白い。お前が北海道で熱狂した『忍者屋敷』だ。異世界初の『侍と忍者のテーマパーク』を造る。お前の戦闘技術と、『拙者』という新しいアイデンティティを活かして、最高の『忍者棟梁』になれ」
ダイキチは、ガンドの戦闘経験を「エンターテイメント」に転換させる道を選んだ。
ガンドはタブレットに表示された時代村のイメージ図を見て、涙を一気に拭った。
「に、忍者屋敷の……棟梁! わかり申した! 殿の夢、拙者がこの命にかけて実現させますでござる!」
ダイキチはビールを一口。
「よしよし、ガンドには喜んで働いてもらって、勝手に稼いでくれる。俺の暇つぶしにもなるし、最高だ。」
フロンティアのチートビル群は、「異世界漫画喫茶コミックガーデン」「美の聖地サロメ」「高級雑貨店ジェリーフィッシュ」に加え、次なる「エンターテイメントチート」を手に入れることとなった。




