1話 狂った世界と一人の人間
今回は文字数が少ないです。
これから物語を進行する上でとても大切な所なので、御愛嬌下さい。
秩序が永遠とある世界などありはしない。
そう、不変は否定され、有限が肯定される。
これがこの世界で、唯一の規則。
約束された不変。
人間にも、死という有限があるからこそ、今まで生き長らえてきた。
世界は私達の創造主。
故に世界が変わる時、私達も変わる事を迫られる。
進化をし、より高位へと成る。
その為の犠牲は、仕方の無いこと。
───全ては世界の御意向のままに。
変化を受け入れ、それに適応する以外に私達には生きる道などない。
私達は弱い。
生態系の頂点に君臨していおうが変わらない。
だから、私達は強き者に縋るしか方法は残されていないのだ。
足掻くのは、身体に疲労がたまり、精神を削られ、後悔の念が強まるだけ。
こんな茨の道を誰が欲する?
私達は皆、いずれは死に絶える。
なれば、最期くらいは楽に逝けた方が良いだろう。
人間というのは怠けた生物だ。
自分達は楽をしたいが為に、これまで色々な発明品などが生まれた。
それら全ては、生活を豊かにし安らぎを、人工の祝福を齎す。
人生を彩ってくれるのだ。
これ程までに都合の良い事に誰が文句を垂れよう?
世界が変化を求めるのなら、私達はそれに従う他ない。
だが、それはいつ、どこで起こり得る?
不安を感じ、勿体ぶって最期まで自分の選択を渋るのか。
余りにも退屈で、慎重すぎるのだろう。
人生という物語は自分でしか綴れない。
なのに、その物語の筆者が綴る事自体を辞めてしまえば、一体どうなる?
答えは簡単。
白紙のままだ。
一切の面白味も無く、ただひたすらに後悔が募るだけ。
あの時こうしとけば良かった、などと思っても既に遅い。
人生は一度きり。
シリーズ物の本ではないのだ。
決して、続きなどという希望の一欠片は残されていない。
そしてやがて愚者は気付く。
「今までやってきた事全て、無意味だったのか?」
と、人工の祝福を受け取らず、ただ闇雲に走っていた事に。
この世界において、抗う行為は何とも虚しい。
まるで、窓すら見えぬ鳥のように。
道はある。
だがそれが決して、進めるものかと聞かれればそうでは無い。
鳥が私達人間のような手は存在しない。
だから、窓という阻まる壁を知ったとしても飛び越える事は出来ない。
────そして、私達人間も同じように。
道はそこにあるのに、それを越える策など私達にはないのだ。
結局、抗い自己を犠牲にして何を得た?
何を成した?何がお前をそこまでする?
分からない。抗う者の気持ちが分からない。
既に手元に残っているのは後悔という念だけだ。
それなら、人工の祝福を貰った方が良かったんではないか?
頑張った。
何も覚えてなかった。
だけど、踏み出し進んだ。
各地を周り、人を助けた。
その度に礼を言われた。
それに酔いしれ、また次も頑張ろう。
そう思ってた。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯なのに、最期は私の手から滑り落ちた。
折角掻き集めて、新しく記憶した事も全て。
様々な人との出会い。
その中には、この終焉まで着いてきてくれた者さえ居た。
誰もが優しく、心が浄化されていくよう。
本当に心地よく、皆が家族だと思った。
それを伝えはしなかったが、常々考えてた。
このまま楽しい日々が続きますように。
狂ったこの世界でも、希望がある。
記憶が無いながらも何故か、そう思えた。
そして、これからも色んな人を助けていこう。
闇を照らす、一番星になるのだ。
まるで現実味のないように思えるだろう?
だが、本当に⋯⋯⋯⋯⋯純粋な心には思えてしまった。
【手を伸ばし、光を掴む】
そうして、その光を分け与えれば良い。
だったら少しくらい、人生が彩られるというもの。
『純粋な私』はいつまでも、そう考えていた。
慈悲深く、優しくて、それで私の罪の償いまでしてくれた。
この瞬間さえもだ。
感謝してもしきれない。
希望の楽園を夢見て。
家族と一緒に永遠なる幸せな人生を送る。
たとえ、絶望という運命から逃れられなくても。
その気持ちは紛れもなく、心のそこから思うことであった。
抗う者に光を、弱き者に慈悲なる希望を。
純粋な私は、とても言葉では表せないくらいに優しかった。
本当、今の私が情けなく感じる。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯今までの純粋な私の行動をみたとしても。
希望を抱かせる存在を、その旅路を追体験したとしても。
この真っ黒な絶望は拭いきれなかった。
何故私が生き残る?
何故純粋な私は居なくなった?
何故【世界を◯◯◯◯】?
側から声が聞こえる。
数多の亡霊の嘆きだ。
その中には子供のものだってある。
目の前が暗くなる。
時刻は既に夜中の0時を通り過ぎた。
空は雲に覆われ、星の光の欠片すらも見当たらない。
ここからでも分かる、これから雨が降る。
もしくは、今の気温ならば雪かもしれない。
私はそんな事を思う.
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
辺りは静かで、風が草木を撫でる音しか聞こえない。
少し強かったのだろうか?
私のスカートが捲れた。
特徴的である銀白の髪もまた、風によりなびく。
素足を出してる分、少々肌寒くなってきた。
全身を巡る血液もまた、冷たくなる。
手が寒い。
顔が寒い。
足が寒い。
あと少し経てば、この感覚も無くなる。
つまり、楽になれる。
死が解放?
死こそ全て?
新たに疑問が湧くが、それを求める頭はもう限界だ。
本当に死期が迫ってくる。
私の物語も、ここで終わり。
ただ、一人で立ち尽くす。
倒れそうになるのを、やっとの事で踏み留まる。
私は空を見上げ、星を見る。
まだ何も見ることは出来ない。
残念だ、最期くらい光を見せてくれたって良いのに。
世界はそれを望んではいないらしい。
やはり、罪なる者は見放されるのか。
慈悲など、甘い事は私には似合わない。
そう言いたげな世界に、手を掲げる。
視界が霞がかり、余り前が見えない。
頬に冷たい何かが落ちてくる。
それはすぐに溶け、私の顔に水滴を作る。
少しだけ、寒くなった気がした。
冷たい身体が、更に冷たくなる。
だが、そんな身体にムチを打って動かせる。
私は最後の力を振り切る。
たとえ、運命に、世界に拒まれても何回も挑む。
私の物語は決して終わらせない。
こんな結末など、絶対に認めない。
また絶望に呑み込まれても、再び立ち上がる。
【全て、罪なる私の償いの為に】
ここで死んでは、私が犯した罪はどうなる?
まだ償いも少ししか出来ていないのに。
生きて、生きて苦しむべきなんだ。
死なんて甘え、私にはない。
それが、償う唯一の方法なのだから。
「リ⋯ス、タート⋯⋯!」
視界が暗転する。
記憶がなくなっていく。
今までの事がまるで、なかったかのように消えてゆく。
あぁ、これで良い。
出会いすらも忘却の彼方へと行ってしまう。
だが、それでも良い。
罪が付き纏う。
それが私の望んだ事だから。
世界が戻る。
また、あの日に。
全てが狂い始めた、この世界の変化まで。
物語が白紙になる。
また綴り、私という人物が望む結末にしてみせる。
無駄では無い事を証明するのだ。
絶望の運命に抗い続るという、無謀な事を。
────さすれば、私という大罪人も心置きなく死ねるというものだ。
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