ワキナ共和国へ
装備を整え、万全の準備が完了した。
エリスキーやエルフィーナは出発が決まった日から青い顔をしているが、旅に出てみれば気分も変わるだろう。
歩いていくのは変わらないが、気分は上々。
気持のいい日差しの下、人に仇名す龍退治。
お母様…お父様…俺は今日も元気です――――
そんな訳で旅立ちの日。
俺達が龍の討伐に出ることは一夜で町中の噂になっており、ギルド内では知らぬものなど一人もいないというような状況だ。
そして、どこで聞きつけたのか俺達がいざ町を出ようとすると、町の入口にはずらりと町人やギルド所属の人間が並んでいた。
「…なんだこれは」
さすがに圧倒される。
どこにこんなにいたのやら、見渡す限り人、人、人。
そして、その誰もが悲しげな視線を俺達に向けているではないか。
「龍の討伐というのはギルドの人間や騎士に限らず、あらゆる人の夢でもあるんです。しかし、現実では歴史上、龍を討伐できた人間はまだ数える程しかいないんです。そんな理由もありまして、龍の討伐に出る者を勇者として送り出す決まりがあるんですよ」
後ろからのエリスキーの囁きになるほどと俺は納得した。
そして、こいつらの悲壮な顔の意味も。
これは死地へ向かう人間に投げかける視線だ。
俺達が死ぬのだとこいつらは決めつけている。
まったもって失礼な話だ。
送り出すなら笑顔でしろ。
たとえ、九分九里死ぬであろうとしても…だ。
俺達は勇者なんだろ?
死ぬために戦いに行く奴なんていないだろうに…。
「この国の連中は悲観的な所がダメだな…」
「仕方ありませんよ…。私も騎士団長などと大層な肩書を持ってはいますがその実震えが止まらないんです。龍を討伐しに行くと聞かされた時から怖くて仕方がない…」
それは騎士にあるまじき発言だろうが、ここにそれを咎める人間はいない。
「はぁ…」
俺はため息をつき、エリスキーと緊張で一言もで言葉を発しないエルフィーナに向き直る。
「そんなに怖いならここに残ったらどうだ?」
「そ、それは…できません。私も騎士です。棗様に誓った忠誠を覆す気はありません!」
「……」
エリスキーは言葉で、エルフィーナは俺の服の裾をぎゅっと握ることで意思を示す。
弱く、脆いが、それは戦う意思だ。
「だったら俺についてこい」
その褒美に――――
「お前らに龍殺しの栄誉をくれてやる」
なんたって俺は――――
「勇者をなめるな」
そう高らかに宣言し、俺達は村を旅立った。
旅に出て早一時間。
俺達はピンチに陥っていた。
「暇だ…」
出発前の高揚感などなにもなく、そこにあるのは退屈だけ。
「暇すぎる…」
ぶっちゃけると俺はもう飽きてきていた。
龍は見てみたい気持ちは今も変わらない。
ただ――――
俺達はヴェゼーラとワキナ共和国を繋ぐ街道を旅しているわけだが、ここからワキナ共和国の首都までは10日間。ワキナ共和国の国境を超えるまで町や村はなく、そこまで7日かかるのだという。
つまり、最低7日はひたすら歩いて野宿。
――――甘く見ていた…。
その場の勢いでなんて面倒な選択をしてしまったんだ…。
かといって、依頼は受けたい。
龍はロマンだ。
俺は今、そんな悲痛な板ばさみにあっているのだ。
「棗様?どうかなさいましたか?」
「いや…」
エルフィーナの問いかけに歯切れ悪く答える。
さすがに本音を口にするのは憚かれる。
あれもこれもそれもどれも龍のせいだ!
俺はこの苛立ちを龍にぶつけることを誓った。
「なぁ、龍ってどんな姿してるんだ?」
あまりにも暇なのでエルフィーナと雑談に興じてみる。
正直、雑談なんかはあまり得意なことではないのだが、この暇を持て余し続けるよりはました。
「私も実際には見たことがないのですが、本などの伝承では…体長20メートルを超し、以外と細身で縦長のようです。肉体を覆う鱗はあらゆる魔法を無効化するとか。あとは…龍の爪は次元を切り裂く能力を持つを言われています」
「次元を切り裂く?」
「ええ、なんでも龍の爪で切り裂かれた人が忽然と消えたようなんです。それがどういう理屈かは解明されてなく、次元を切り裂くというのも本当の所は分からないんです」
「なるほどな…で、他には?」
「なにぶん資料が少なくて…それくらいしか、申し訳ありません」
「え、美少女になったりしないの?」
「は!?び、美少女ですか?そ、それは聞いたことないです」
なん…だと…。
い、いや焦るな…。
し、資料が少ないだけでなる…はずだ!
そんな馬鹿な事を延々と考えながら、その日は過ぎて行った。
今回の文章は酷いです。
本当に申し訳ありません!
次は長さ、質ともに向上できるように努力します!
ご意見・ご感想どしどしお待ちしております。