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外道勇者の華麗なる旅路  作者: 雪道棗
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勇者といえば冒険

魔族のジャルバーン為り替わり事件から一週間。

罪を犯した貴族達とその他の大貴族、王族が手を取り合い、尽力した結果ヴェゼーラが以前よりも強固な結束を得、国民の混乱もようやく落ち着いてきた。

無論、まだ裏でわだかまりもあるだろう。

しかし、それは彼らが乗り越えるべきことで俺としては得に興味はない。


フローラは当初、事件を黙認していたと責任を追及されていた。

フローラ自身も父の汚名返上ができたおかげで甘んじて罰を受け入れようとしていたが、俺が貴族共に事情を話してやると、国王の命によりフローラが家督を継ぐことになり、他の大貴族からの支援も受けながら目下奮闘中だ。

支援が受けられるのは、フローラの才覚とジャルバーンの人徳のなせる技だろう。


国王に関しても、今回の件を重大に受け止め、精進すると家臣たちに頭を下げていた――――ので一発殴っておいた。

王が頭を下げてはだめだ。

王は王という生きものであって人間であってはならないというのが俺の考えだから。

王に間違いは許されない。

王は間違いを認めてはならない。

そのぐらいの覚悟がなければ王になどならないほうがいい。

とりあえず国王には俺の思想を押しつけておいたので、少しくらいはましになる――――ような気がする。

まぁ、どうでもいいか………。








「めんどくせぇ…」


そんな訳で俺はだいぶん暖かくなってきた日差しの下ヴェゼーラをひどく懐かしんでいた。

身に纏うのはこの世界の貴族がよく愛用するという品のある刺繍の施された服と黒のローブ。

学生服は目立つということで仕立ててもらったのだ。


「あ、あと少しですから我慢してください棗様!」


隣には動きやすさと可愛さを同居させた――――ワンピースのような――――服を着た第一王女エルフィーナ。

俺達二人は護衛もなく、ただひたすらに続く道を歩いていた。



それは二日前、唐突に告げられた。


「魔族の情報を集めてほしい」


国王は夕食時、対面に座る俺とエルフィーナにそう告げた。


「は?」

「各国を回って魔族の情報を集めてほしいのだ」


俺は一瞬考え――――


「断る!」


――――即刻、決断した。

だって面倒だし…。


「ふむ」


しかし、その答えを予想していたのか、国王は怯まない。


「棗殿は美しい女性に目がないとか」

「ま…嫌いじゃないな」


ただ好きなのかと聞かれると答えに困るが、嫌いではない。


「世界を旅すればこの国ではお目にかかれない美女もたくさんいるぞ?それに棗殿の興味を引くような様々な文化がある。どうも棗殿は退屈を嫌う傾向にると思うのだが…どうかな?」


さすがは賢王と囁かれるだけのことはある。

俺の性格を見抜いている。


「お父様」


そこにエルフィーナが口を挟んでくる。


「なにかね?」

「私は棗様について行ってもよろしいんですよね?」

「もちろんだ。それが召喚の巫女の役割でもある」

「そうですか。…よかった」


ホッ、と安堵の息を零すエルフィーナ。


「それにしてもエルフィーナよ。お前は棗殿が他の女性と仲良くするのを黙って見ていてよいのか?」


国王は冗談交じりに問いかける。

それに応じるエルフィーナは満面の笑み。


「もちろんですわ。私は棗様をお慕いするのみです。捨てられない限り、私は棗様のすべてを肯定します」

「そ、そうか」


気圧されたように頷く国王。

エルフィーナは変わった――――否、俺が変えたと言うべきか。

始めの気弱さはなりを潜め、今ではすっかり女王らしくなった。

そしてなにより、俺を狂信している。

それがいいことなのか悪いことなのか今はまだ分からないが、しばらく放っておこう。


それよりも今は今後の事だ。

この世界を回ってみる。

非常に興味を刺激されるが、リスクもある。

エルフィーナは王女で旅に出た際の危険は計り知れない。

だが、ここにいても俺の目的を達成できないこともまた事実。

この世界にある魔法。

それならば――――俺の願いを叶えることができるかもしれない。


「おい、国王。旅に出てやってもいい」

「ほう。本当かね?」

「ああ。エルフィーナもそれでいいな?」

「勿論ですわ。棗様」

「では出立は二日後。それまでに用意はこちらで済ませておこう」

「分かった」






確かに俺は旅の用意を任せた。

だが、何故歩きなんだよ!

馬車とかあんだろうが!

まったく、日焼け止めもないのに焼けたりしたらどうするんだ。

ここら辺は得に安全だからといって護衛の一人もないのも問題がありすぎる。

俺達が向かっている目的地に護衛役は一人待っているそうなのだが…。


「エルフィーナ。目的地まであとどれくらいだ?」

「そうですね…あと二時間といった所でしょうか?」


効いた途端、脱力した。


「まじかよ…」



光り輝く朝日の中、俺は目的地の村で絶対馬車を用意させようと心に堅く誓った。

少し遅くなってしまい申し訳ありません!


ご意見・ご感想どしどしお待ちしてますので、よろしくお願いします!!

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