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28.新しい制服


 学園への編入が決まったレオノアたちは、制服を受け取っていた。白いブレザーの制服を見たレオノアは「汚れが目立ちそうだわ」と若干嫌そうな顔をした。可愛い制服に胸をときめかせるのではなく、汚れが目立ちそうなことに本気で嫌な顔をするあたりがレオノアらしいと言えるかもしれない。



「なぜこんな色になさったのかしら。魔法で大体の汚れは落とせるけれど、基本的にそんなことに魔法を使うことってお仕事以外では無駄よね」



 女子は紺色のリボンタイ、男子はネクタイ。胸元には梟とツタをモチーフにした校章の刺繍があり、レオノアは「作るのが大変そう」なんて考えていた。



「君、もう少しマシな感想は出ないの」

「あら。……とても似合うわ」



 試着したサミュエルが顔を出すと、レオノアの表情がパッと明るくなった。

 着なれないというようにネクタイを触るサミュエルを見ながら、レオノアは思わずニコニコしている。



「君の方が似合うよ。可愛い。……向こうの制服よりいいんじゃないか?」

「……サミュエルにそう思ってもらえるなら、この汚れが目立つだけの服にも意味はあるわね」

「汚れが目立つだけのって言うのをやめろ。あと、汚さないようにすればいいだけだろう」



 呆れたように言うサミュエルだが、なぜかレオノアの機嫌がいいためこれ以上の小言はいいだろうなんて考えて赤い髪を掬い上げた。手に取ったそれに唇を落とすと、「学生生活っていうのも少しは楽しみかもな?」といたずらっぽく笑う。



「……気障ねぇ」



 呆れたようにサミュエルを見る彼女だが、そんな行動も様になるとは思う。

 けれど、「これ以上、他の女の子に騒がれることをしないでほしい」という気持ちの方が

大きい。せっかく職場の同世代の女の子に別の男を斡旋してライバルを減らしているのだからおとなしくしていてほしかった。



「こういうのは好まないのか?」

「二人きりの時なら、いいけれど人前では……」

「それは牽制にならないんだが」



 一方でサミュエルも自覚なし美少女のレオノアから男を引きはがすための行動でもあるので、若干不服だったりする。

 レオノアの感情がそう簡単に揺れるとは思わないが、彼女が奪われるような状況を作るのだけは死んでもごめんだった。というか、そんなことになったら「君を殺して俺も死ぬ」を実行しかねない。



「そういえば、君の欲しがっていた素材。収穫できたぞ」

「まぁ!本当!?」

「あとで渡すよ」



 サミュエルは自分が褒めた時よりもテンションの上がったレオノアを見て、少しだけ肩を落とした。



「もう少しくらい、俺の言葉で態度を変えてくれてもいいと思うのだが……いや、少しは意識している感じがあるだけ俺は男として見られている……」

「何をブツブツ言っているの?」



 すでに気持ちが錬金術に使う新しい素材に向いているレオノアが首を傾げる。そんな彼女に少し、いや、かなり悔しい気持ちを抱えながら「何でもない」と無理やり笑顔を作った。



(何でもない、という顔ではないのだけど……)



 他でもない、サミュエルが自分を思って錬金術の素材を確保してくれるのが嬉しいというのに、なぜ怒っているのか。そんなことを考えながら、サミュエルを見つめる。

 二人とも、かなり言葉が足りていなかった。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。

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