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転生したら悪役令嬢でしたが退場させられました!?  作者: 雪菊
第二部

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23.家族との再会

 以前よりはずっと近くで生活しているようで、宿に一回泊りはしたが馬車に乗って二日目には目的地にたどり着くことができた。



「道を舗装するか車輪を浮かせばもっと早くなるかしら……いえ、そういった技術はカイル様の馬車に使われているから、コスト面が問題。馬がより早く走れるように補助する方法が必要……そうするにあたって必要なものは……」



 近くにいるからと欲が出たのかレオノアが馬車をじっと見つめてブツブツとそんなことを呟き始める。御者はそんな彼女の様子を見ながら、「嬢ちゃん、後ろ。後ろ」と指さしていた。エリオットと並んだサミュエルが立っていた。

 エリオットは涙目でレオノアを見つめている。それを見た彼女は今までは何だったのかいうスピードで立ち上がってエリオットを抱きしめに行った。その隙に御者はさっと帰った。サミュエルの目が怖かった。



「姉ちゃん!!」

「エリィ!!」



 抱きしめ合う光景は感動の再会である。その後ろでレオノアの両親も泣いていた。愛娘が行方不明だと聞いて彼らもとても心配していた。



(本当にレオノアは運がいいのか悪いのか、わからないな)



 レオノアは確かに生家には恵まれなかった。だが、優しい養父母と可愛い義弟に恵まれている。

 学園での生活では嫌がらせを受けていた。だが、冒険者活動を通して出会った六色の魔法使いたちとはうまくやっている。

 命を狙われた。だが、非常に強い人間に助けられ、侍女として働いていた。

 レオノア自身は「私、運がいいの」なんて言っているが、前提条件が悪いので少し反応に困る。



「無事でよかったわ、レナ」

「もう危ないことをするんじゃないぞ」



 家族で抱きしめ合う姿を見て、サミュエルも「よかった」と微笑んだ。

 レオノアの笑顔を見ていると、心の底からそう感じる。できれば、一番大事な存在が自分になればいい、そう思っているのは確かだが、こうやって家族を大事にできるのは彼女のいいところだと思う。



「ありがとう、サミュエル」

「俺は何もしてない」



 サミュエルはそう返したけれど、エリオットにあっさりと「黒くておっきな羊と犬に指示して、荷物とか運んでくれたんだよ」なんてバラされていた。



「メェちゃんはふわふわだった!また会いたいな」



 ニコニコのエリオットを見ながらレオノアも「メェちゃんは本当に可愛いわよねぇ」とのほほん返す。

 血は繋がっていないはずなのにそっくりの笑顔で自分を見ている姉弟。サミュエルは「また今度な」とだけ返した。

 メェちゃんはただいま義姉の家族の引っ越しを手伝っていたりする。



「そういえばあの黒い犬の名前ってなんなの?」

「教えていなかったか?ネロという。これは兄さんがつけた名だ」



 サミュエルは別の名前を付けようと思っていたが、サルバトーレに押し通されていた。なお、サミュエルがつけようとしていた名前が「マロ」である。

 レオノアが「可愛い名前ね」というのでサミュエルはちょっとだけ複雑な心境だった。



「新しい家、僕が案内するね!」



 エリオットがレオノアの手を引いていく。

 現在、レオノアの両親はシュバルツ商会関連の仕事を引き受けて生活している。知り合いもいない国で生活基盤を整えるためにもそうするしかなかったというところはあるが、レオノアの母であるエラの織物などはシュバルツ商会でも高値で取引されるほど素晴らしいものであったりするので、どちらも損はしていなかったりする。ジャンも力仕事が得意なので頼りにされていた。

 レオノアを切り捨てることなく、『自分たちが育てた大事な娘だ』と事情を聞いてすぐに国すら捨てた彼らをサミュエルも尊敬している。


 案内された家はそう大きな家ではないが、以前の家よりは広い。近くにシュバルツ商会があるのも利点だろうか。



「……この家見つけたの、サミュエルでしょう?」

「……何のことだろうな」



 利点は利点だが、こんなに近くにあるのを怪訝に思ったレオノアはジト目でサミュエルを見つめていた。サミュエルが猛プッシュしたという確信が、今の彼女にはあった。

 レオノア、大当たりである。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。


サミュエル「こんな時だけ勘がいいな」

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