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17.サルバトーレとカロリーナ


「レオノアちゃん!!」



 再会そうそう抱きしめられたレオノアは強く抱きしめられすぎて「ぎゅあ」みたいなよくわからない呻き声を出していた。抱きしめているカロリーナに「レオノアが死ぬ……死ぬから……」と引きはがそうとするサミュエルは悪くない。

 サルバトーレは苦笑しながら「そろそろサミュエルに返してあげなさい」なんて言っていた。その言葉で、カロリーナは渋々レオノアを離した。



「きゅう……」

「またわけのわからない可愛い声出して……」



 レオノアを受け取ったサミュエルがそんなことを言っているのを見ながらサルバトーレは眉を下げた。サミュエルはレオノアが何をやっても可愛いというので、もう取り返しのつかないところにいる気がした。



「久しぶりだね、レオノアさん」

「はい、お久しぶりです。家族の件、ありがとうございました」



 しっかりと頭を下げるレオノアに、「構わないさ」とサルバトーレは微笑みを浮かべる。実際、レオノアと関わっていなければ、六色の魔法使いそのものが国から追われるだなんて思いもしなかっただろう。幸い、ロンゴディアはこのエデルヴァードにまで手を伸ばす気はない様子だ。おそらくは自国の掌握に努めているのだろうが、どこまで持ちこたえられるものだろうか。



「君がいなくてサミュエルが荒れていたからね。君が見つかって落ち着いてくれてよかったよ。あはは」

「兄さん!!」



 少し恥ずかしそうにしている。だが、レオノアはすでに「レオノア、次に俺の手を振り払ってみろ?……次は、君を殺して、俺も死ぬ」と脅し(?)をかけられていたので何を恥ずかしがっているのだろうと訝しんだ。



(あの発言の方が恥ずかしいのでは……?)



 サルバトーレは弟が直接そんな発言をしているなんて知らなかったので「あの異常さがバレなければいいな」と思うばかりだった。もうあわよくば引き取ってほしい気持ちでいっぱいである。レオノアと再会してからやつれていた弟が調子を取り戻したこともあって、一緒の姿を見るとホッとする。



「今日は泊まっていくかい?」

「外泊許可が取れていないので今日は帰ります」



 カイルは「いや、さすがに未婚の娘が男の家に泊まるんじゃない。お前、一応貴族令嬢だったんじゃないのか!?」とレオノアに頭を抱えていたりするがそれはそれである。レオノアは「一緒の部屋で寝ているわけじゃないし……」なんて首を傾げていたが、カイルはそれを聞いて更に頭を痛めていた。もう一回ケイトリンのところに行かせようかと検討中である。

 そういうわけで許可が出ることはないだろう。



「えー……残念。一緒にお風呂に入ったり、いろんなお洋服を着てもらったりしたかったなぁ……」



 カロリーナは赤い髪、赤い瞳に戻ったレオノアを見てとても着せ替えがしたかった。以前から整った外見をしていたと思ってはいた。だが、本来の姿の今は以前よりずっと美しい。

 これはサミュエルが心配して追いかけても仕方がないとカロリーナも思う。すでに貴族男性に求婚されていて、商会でちょっとした修羅場になったと聞いているが、それも納得する。



「ま、また来るので……!!」



 残念そうなカロリーナを見て焦ったようにそう言うレオノアに「たくさん見立ててあげますからねー」と頬ずりした。

 嬉しそうなレオノアを見ながら、サミュエルは兄の隣で「それは俺の役割では」と呟いた。



「あまり可愛い服を着せたらまた面倒な男を釣り上げてしまう……」

「でも、生半可な服も着せたくないんだろう?」

「好きな女には奇麗でいてもらいたいものだろう」



 サルバトーレはめんどくさいことを言い出した弟に溜息を吐いた。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。

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