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15.優秀な問題児


 宣言通りやってきたサミュエルにレオノアは「えぇ~……」と言って額に手を当てた。どんな手を使ったのだろうと思っているのが顔に現れていたのだろう。彼はジト目で、「庭師の求人が出ていた」と告げた。



「俺は大体なんでもできるからな」



 実際、採用試験にも通っているのでカイルも「まぁ……役に立つならいいか」と受け入れている。なお、この手の技術を磨いていたのはレオノアが薬草などを錬金術で使用するので、その供給用である。勉強していたこと自体がもはや愛である。兄であるサルバトーレからは「怖いよ。お前の執着心」とドン引きされている。

 高齢になった庭師の弟子として、真面目に職務に励みながら、レオノアの仕事を見ていた。



「レオノア、お前の友人……目線が怖いのだが」

「実質、ゲイリーが増えたようなものですからねー」



 カイルにそんなことを言うのは金髪の軟派な雰囲気の少年だった。ケラケラと笑いながら「レナちゃんを好きになる男って難有りなのかも!」なんて話している彼だが、一番難が有るのはレオノアである。



「いや、ゲイリーは一目ぼれだから何とも言えないが、コイツが歪ませている気がしてならん」

「さすがにそれは言い過ぎでは?」



 レオノアのジト目に、少年は何がおかしいのかまた笑っていた。

 彼はライアン・クローヒ。エデルヴァード帝国侯爵家の次男である。カイルの友人であり、側近として過ごしている。



「まぁ、ボクも睨まれたし過保護になる何かがレナちゃんにあるのはわかるなー。まぁ、ボクには手に負えないのは確かだね」



 そういってウィンクするライアンに、カイルは深々と溜息を吐いた。

そんな感じのライアンだって、つい最近「わたくしにこの男は手に負えませんわ!」と婚約を白紙にされたばかりのある種の問題児である。彼はこんな軟派ななりをして超絶真面目だった。

今日は時間が空いているようだが、普段は分刻みのスケジュールを組んで剣の練習や、勉学に励んでいる。これだけならばまだ問題がないように見える。だが、会っても勉強の進行度やら領地の特産品の話やらしかしない。流行りにも興味がないし、娯楽に興味があるのかもちょっと怪しい。令嬢曰く「これと一生添い遂げると思うとキツイ。ビジネスパートナーならありなので、採用試験を受けていらしてほしいですわ」である。ほんのりワーカホリック化して家に帰って来ない未来も見える。



(なんで優秀ではあるが何か問題のある人間を私のところに持ってくるのだろうな、父上は……!)



 それはカイルがなんやかんや彼らと上手く付き合ってしまうためである。無理だったら投げ出せばよかったのに、「まぁ、仕事はできるし何とかなるだろう」と環境を整えて受け入れてしまうので、彼らも居心地がよかった。



「じゃあ、ボク帰るねぇ~」



 婚約白紙でむしろ生き生きしている友人を見送って、カイルは溜息を吐いた。渡された事業計画で使う資料はとても分かりやすい。やっぱり優秀は優秀だ。

 目の前にいる侍女レオノアもそうだ。彼女が持ち込んだ抗精神魔法の魔道具は非常に優秀だった。備蓄ポーションもレオノアが来てから高性能なものに少しずつ変わっていたりする。



「そういえば、サミュエルは本来何が得意なんだ?」

「動物や使役できる魔物の扱いでしょうか」



 それを聞いたカイルは「何で庭師やってるんだ」とボヤく。

 レオノアの近くにいるために紅玉宮の求人を漁った際に潜り込めそうな仕事で面接と試験を受けただけである。ここで働けるなら仕事なんてなんでもよかった。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。

たぶんカイル普通に頭抱えてる。

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