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13.水と油?


 レオノアの感覚がおかしいことは置いておいて、彼女を挟んでサミュエルとゲイリーはバチバチやっていた。相変わらずレオノアを離さないサミュエルから渋々と剣を引いたゲイリーはホッとした顔のレオノアに微笑みかけた。

 とりあえず別室に移動して、レオノアは今まで自分に起こった出来事を話す最中もサミュエルは彼女を膝の上に乗せて離さなかった。少し痩せただろうか。以前より顔色も悪い気がした。



「……なるほど。俺が一緒なら君に血しぶきなんて見せなかったのに」

「ははは、俺だったらそもそも、彼女を抱きかかえて移動できていたので崖から落ちかけるなんてこともありませんでしたけど」

「なんで二人ともそんなにギスギスしているの?」



 呑気にそんなことを言っているレオノアを見ながら、サミュエルは「相変わらず最悪の鈍さ」と呟いて、ゲイリーは「本気で言ってますか?」と目を逸らした。



「なんで君が好きな男同士で仲良くできると思う?」

「さすがにこれは同感です」

「これが同担拒否……?」



 前世の記憶を持つ人間が聞いていたら「違う!」と言ったかもしれないが、目の前にいる二人は意味が分からず首を傾げた。言った当人もあまり意味を理解しているとはいいがたいが。



「まぁ、無事でよかった。これからは一緒にいるだろう?」



 そう問いかけるサミュエルにレオノアは困ったように眉を下げた。

 このまま仕事を放置するのはあまりに不義理だろう。レオノアは自分の手助けをしてくれたカイルたちに報いるためにももう少し働くつもりだった。素直にそう話すと、サミュエルはストンと表情の抜け落ちた顔で「そう」とだけ呟いた。



「じゃあ、仕方がないな。俺もどこかに潜り込めないか調べてみるよ」

「諦めないんですね」

「この程度で諦めるようなら、こんな女を好きになってない」



 サミュエルの言葉に不服そうな表情をしたレオノアだったが、「君の中身の成熟度が幼児なのが悪い」とあからさまな悪口を言われて、しかもゲイリーまで頷いている。しょんぼりした顔に変わっていった。



「レオノア嬢は妙に大人びているように感じる時と、他のご令嬢より子どものような時がありますね。そんなところが愛らしくもあるのですが」

「やらないぞ」

「そもそも、レオノア嬢はあなたのものではない」

「は?俺のだが?」



 目からハイライトが消えている。絶対離すものかとレオノアを捕獲するサミュエルの腕の力は強い。



「レオノア、次に俺の手を振り払ってみろ?……次は、君を殺して、俺も死ぬ」

「ぴえ……」



 若干怯えているレオノアだが、このモンスターを作り出したのは確実に、100パーセント、間違いなく自分自身である。大体レオノアが悪い。逃げろ、生きて会おうと振り払った手がサミュエルのトラウマスイッチ兼病みスイッチになっている。

 サミュエルが(目からハイライトが消えている以外は)柔らかな笑みを浮かべているのも余計に恐怖を感じさせる。



「好きな女性を怯えさせるのはどうかと思うが」

「これくらい言わなければ、レオノアはまたやる。今日確信した。悪いなんて思っていないものな?」



 全員で生き残れる方法があるならばその方が絶対良いだろう、と思ってレオノアは手を振り払った。その結果、相手がどう思うのかなんて一切考えずに。

 確かに、あそこでの時間のロスはルーカスたちにとって非常に命取りになっただろう。だが、それでもサミュエルにしてみれば「一緒に落ちた方がマシ」だった。



「でも、ちゃんとあなたの元に戻ってきたわ」

「その言葉は俺に監禁されてくれるのなら受け取ろう」

「かんきん」

「それくらいしないと安心できない」



 サミュエルの病んだ感情は根が深そうだった。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。

レオノアが悪いんだよ……?

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