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6.冒険者登録と新たな出会い


 王都に来てからの一日目を掃除で消費し、二日目。

 レオノアは冒険者協会を訪れていた。


 冒険者になる理由は単純で、小遣い稼ぎである。

 朝晩の食事に寝床、学費に筆記用具、教科書。

 これらは国から支給されている。

 必要なのは普段着や、趣味、家族への土産など、レオノア自身が欲しいものを買う資金である。

 もう一つ理由があるが、そちらは学園で生活するうえで必要となってくるものを知るためのものだ。貴族が当然知っているべきものもレオノアにはここに来る他知る方法がないからだ。



(ゲームではヒロインが冒険者活動を通して金銭を得ていたけれど……)



 あくまでもレオノアの勘だが、ヒロイン……異母妹マリアは冒険者なんてやらない気がした。

 ゲームでは、ヒロインと義弟になるはずの男は、アマーリアに冷遇・虐待されており、特にヒロインは侯爵家の令嬢だというのに制服以外にろくな服を持っておらず、日々の食べるものや筆記具にも困る有様だった。それゆえに、彼女は冒険者として活動し、その金銭を運用して武器・好感度アイテム・服を揃えていくことになる。

 恋愛RPGロールプレイングゲーム「乙女の祈りは誰が為に」のヒロインは最終的に女神の加護を得た聖女という存在へ至る。使える人間が珍しいとされる光属性の魔法を駆使して、世界の穢れとされる魔物や瘴気を祓い、清める存在だ。

 戦闘パートがあり、ヒロインは冒険者としての活動を通して、自身の力を高め、強くなっていく。最終的に、ヒロインは唯一の愛する人と手を取り合って、穢れの元凶たるドラゴンを倒すのだ。

 しかし、今のヒロインにはアマーリアという脅威がいない。

 父はヒロインに甘く、彼女が求めたものを侯爵家の地位と金で手に入れることは容易だろう。冒険者になるなんて泥臭い真似は必要ない。



(魔道具で解決する問題も多いでしょうし、魔法や剣術なんて家庭教師から教えてもらえばいい)



 アマーリアの代わりに第一王子の婚約者になっている可能性も、僅かながらにある。今の貴族社会について知る機会はないので、どうなっているのかなんてわからないけれど。


 物語通り生きるなんて道はすでに途絶えている。あまり気にしても仕方がないと切り替える。

 冒険者協会の扉を開くと、正面にいる受付嬢がレオノアを見て柔和な笑みを浮かべた。



「ようこそ、冒険者協会へ。新人さんですか?」

「はい」



 カウンターの前に立つと、新人冒険者用の書類を渡される。

 冒険証の登録用紙、研修の案内、初心者用のしおり、初期武器のカタログなど多種多様だ。



(そういえば、ヒロインも初めにここで使用武器を決めたりしていたわね)



 前世のレオノアは「やはり細身で可愛いヒロインには大剣。それがロマン」なんて言って大剣を選択していたけれど、この世界で自分に合わない武器を選択すれば命が危ない。

 体格や今の力に合わせたものが必要だろう。



「武器の選択が難しい場合は、当協会が今年契約しております商会で見てもらうことも可能です!」

「今年?」

「はい!毎年、ちがう商会と契約をすることで、癒着を防ぐ意味があるそうです!とは言っても、ランクが上がっていくと個人で商会・武器屋を開拓していくのでどうしても使うお店が固定化していきますけどね」



 確かに、個人によって合う人・合わない人もいる。得意な商品だって経営者ごとにちがうだろうし、そうなっていくものだろう。

 そう思いながら、レオノアはカタログを開き、その商会の近くにある店舗の位置を頭に入れる。初めての武器選びなのだ。素直に従っておくことにした。

 研修の予約をして、説明を受けている間に作ってもらっていた冒険証を受け取る。

 そのまま、店に向かうことにした。



 王都の大通りにあるその場所は冒険者で賑わっていた。レオノアのようにろくな装備ももっていない者から、それなりに金がありそうな者まで、そこにいる人は様々だ。

――シュバルツ商会。

 そう掲げられた看板を確かめてから、レオノアは店へと入った。



「おや、いらっしゃい。冒険初心者かな」



 黒い髪に、空のような青い瞳の青年にそう、声をかけられてレオノアはうなずいた。

 穏やかで優しそうな青年に安心して冒険者協会で案内されたことを話すと、「赤?」という少し驚いたような声が聞こえた。



「赤色、何それ……だっさい髪色。変えるならもっとマシな色にしろよ」



 赤、そして髪色という単語に、レオノアは警戒を滲ませた。

 レオノアは王都に出てくる前にはすでに髪を茶色に染めていた。この世界にコンタクトレンズはないし、姿を変える魔法なんて習ってはいない。それゆえに正体を隠すにはこれが限度だったのだ。

 レオノアの髪色が本来のものとは違う、だなんて今現れた少年が知るはずのないことだ。


読んでいただき、ありがとうございます。

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