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59.転移陣と悪意


 楽しみにしていた授業が始まって、レオノアは少しワクワクしていた。来週には国外に出る予定なので、割とぎりぎりだ。

 すぐ目の前に第一王子とその側近がいるというのにウキウキしながら参考書を見ているレオノアにクラスメイトは「だから彼女があの班なんだな」と妙な納得をした。成績だけではなさそうなことを察したのである。レオノアは他者から見ても全く玉の輿なんて狙っていなかった。


 授業が始まって、班ごとに転移陣が配られる。それを凝視しているレオノアをルーカスとウィリアムは苦笑しながら見つめていた。ここまであからさまに「興味ないです」という対応をされることは珍しい。おかげで居心地はよいがなんだか複雑な心境だった。



(ルーカス殿下とアスール様が『金』と『蒼』なのはわかるし、気が付かれている気はするけど、何も言ってこないからいいわよね)



 ようやく同類を感知できるようになったレオノアはそんなことを思いながら、転移陣に書かれた古語を写し取っていた。

 後で解読する気満々である。

 教師が「それでは起動しろ」と言うので、レオノアはようやく本を鞄にしまって、ルーカスたちの横に並んだ。少し残念そうである。



「そんなに面白いかい?」

「はい」



 これを起動させ、今いる場所に戻ってくるまでがこの授業での課題だ。

 だから、ルーカスはそれを起動させようとした。だが、ルーカスが魔力を注ぐ前に転移陣が光を放つ。

 レオノアたちは勝手に発動した転移陣によって予定とは違う場所に飛ばされていた。



「ウィリアム、帰還用の転移陣は」

「これです」



 ウィリアムがルーカスにそれを渡す。ルーカスが帰還用の転移陣に魔力を通す……その前にレオノアが彼からそれを奪う。



「この魔法陣、転移のものじゃありません。爆破です」



 レオノアは確認して、眉を顰める。

 もし気づかずに魔力を通していたら、三人そろって大怪我をしていただろう。

 混じりっけなしの悪意を感じる。



「……ラファエル派か」

「おそらくは」



 苛立った声のルーカスたちに、レオノアは不安な顔をした。第二王子の名が出てきた時点で非常に不穏だ。



「すまない。王位争いの謀略に君を巻き込んだらしい」



 申し訳なさそうなルーカス。レオノアは現実逃避のように「平民の命って軽いからなぁ」と考えていた。一緒にいるのがレオノアという平民だったから、爆破してもそこまでの問題にはならないと考えられたのかもしれない。



「とりあえず、帰還用の転移陣を作るか場所を特定して戻るか、だな」

「転移陣の材料……専用のインクとペン、それから専用の加工をした羊皮紙ですね」

「さすがにないな」



 ウィリアムが難しい顔でそう呟いた。

 レオノアもさすがにそれ専用の材料なんて持っていない。ルーカスだってそうだ。

 三人は顔を見合わせて、溜息を吐く。そして、とりあえず今いる山らしきところから脱出することを目標に据えた。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。

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