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46.拾いもの


 イザベラにも渡したことで、アミュレットがあちこちに出回る結果となった。レオノアは「まぁ、それでまともな人が増えるならいっか」と思ってそれ以上考えないことにした。



(厳しい目も少なくなったし、マリアとの接点もなぜかなくなったし、いいことずくめ)



 イザベラがオリビアを通じてその兄にアミュレットを渡したことで、ようやく彼が正気に戻った。それゆえに守られていることをレオノアは知らない。知らないまま呑気に勉強に励んでいた。

 表面的には事態が収束しそうになっていたが、何も全員がアミュレットを手に入れられるわけではない。そして、それが効かないほどにのめりこんでいる者もいた。マリアはそんな男たちに囲まれながら少し不服そうな顔をしていた。


 色んな人間に守られながら、レオノアは平穏を手に入れた……はずだった。



「落ちてる」



 廊下を歩いていると、一人の少年が落ちていた。少年とはいってもおそらくは年上だろう。周囲にいる男子生徒と比べても背が高い。



(いや、ウィルの方が少し大きいかも)



 そんなどうでもいいことを考えながら、どうしようか少し考え込む。結果、仕方ないから保健室に運ぶかと足を掴んだ。幸いにもここは学内の廊下。そして、保健室は近くである。少しくらい引きずってもそんなに大きなダメージにはならないだろう。

 そうやって、引きずって救護室の扉を開くと、常駐の保険医が「私、その運び方はさすがにどうかと思うなぁ」とコメントした。ドン引きしながらベッドに運んでくれた彼は「知り合い?看病する?」とレオノアに尋ねた。



「いえ、落ちていたので連れてきただけです。全然知り合いとかじゃありません」



 素直にそう返答して、レオノアは落ちていた男子生徒を引き渡して出ていく。

 保健室を離れてしばらくすると、「病人がいるんだ。出ていきなさい」という声と共に何か飛んで行った。



「あれ、壁に穴が開いたんじゃないかしら」



 そう言って首を傾げる。

 そして、落ちていた男子生徒のことを思い出して、サミュエルに会いに行くことにした。



「男を拾ってなんでそうなる。平穏になったならよかったが……」

「いえ、拾った方、髪が橙色だったから……また色の人かなって」



 橙もいたな、くらいの気持ちである。

 サミュエルはそんなレオノアに「まさか、誰なのかを聞きに来ただけか?」とジト目になった。好きな子に会えることは嬉しいが、内容が他の男の素性を調べるためなんて若干腹立たしい。



「それもあるわ。一番は納品だけど」

「そこは嘘でも俺に会いに来たって言えよ」



 レオノアは追加でアミュレットを作っていた。それをサルバトーレに渡してお金をもらっている。ルカたちとあまり会えないので貴重な収入源である。



「……君に言っても無駄か。おそらくそれはローガン・アウラ。伯爵家の子息だな。あまり家族仲が良くないと聞く。まぁ、傍系の自分たちに彼のような子が生まれるとは思っていなかったのだろう。それにしても倒れていた……な」



 橙の魔法使いは代々、地属性魔法が優秀なゴーレム使いであるという。鉱山などから宝石や魔石を見つけるのも非常に得意で、その周りには富が集まった。



「まぁ、今代が虚弱体質なのかもしれないし、何も言えることはないか」

「イザベラ様なら同格の貴族だけれど、私が関わりにいくのは違うわよねぇ」



 サミュエルはレオノアが関わりに行くつもりがないと聞いて安心したように息を吐いた。ただでさえ一緒に冒険者をしているというルカたちがレオノアを見る目が『自分と同じ』なのだ。これ以上、ライバルを増やされたくない。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。

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