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44.アミュレット


 サミュエルに貸してもらった本を読んでいたレオノアはパタンとそれを閉じてゆっくりと息を吐いた。寮にはもう結界を張っている。疲れはするが、身の安全のためなので仕方がない。



(あまりこちらの魔法は得意でないのだけれど)



 結界や治療魔法などの光系統の魔法はむしろ苦手な部類だ。レオノアが得意とするのは全てを焼き尽くすかのような火系統の攻撃魔法だ。ただし、使えないわけではない。それなりの魔力は持っていかれるが、慣れてくればそれも効率化できるようになっていくだろう。

 うんざりとした顔をしながらも、本の表紙を撫でる。



(おそらく、対抗策は見つけた……けれど、これを広めることは私では不可能ね。とりあえず完成させたらまずはサミュエルに渡さないと)



 敵になりたくない人物から渡そうと算段を立てる。

 まずはサミュエル。次にルカ・ウィル。そしてサルバトーレとカロリーナ。最後にイザベラ。レオノアから働きかけられるのはそれくらいだろう。そこから更に必要となれば、どこかの錬金術師を雇って作るだろう。



「というか、貴族なんだから魅了に対する予防くらいしておくべきだと思うけれど」



 それで家にとって望まぬ婚姻をすることになれば、害にしかならないと思いながら、レオノアは困った顔をした。別にマリアでなくても魅了魔法は使えるのだ。現在魅了にかかっている人間が対抗策を持っていないことの方がどうなのだろうか。



(門番なんて特に国からそういったアイテムを支給されていていいものだと思うけれど)



 その時、窓からコツコツと音がした。そこにいたのは美しい夜空色の鳥だった。首にかけられたポーチと足に付いた手紙を外すと、「きゅるる」と鳴いて飛び立っていった。



「……配達料金とかよかったのかしら」



 困った顔でそう首を傾げた後、気を取り直して手紙を開いた。

 サミュエルからの手紙で「仕事が早いわね」と嬉しそうに内容物を確認した後、「このうち二個をもらえれば材料費はいらない」という文面を見て顔色を変えた。



「もう!だからそういうことをしちゃダメなのって言ってるのに!!」



 サミュエルは貢ぎ癖でもあるのかと心配になる。貢がれているのは自分だけだと思い至らないあたり、若干サミュエルがかわいそうである。

 何とか料金を払わなければ、と気合をいれる。

 そして、作業に入った。

 錬金釜に材料を入れる。例の指輪と違って正確な作り方が記されてあるのがありがたい。だから、目的のものがすぐにできる。魔眼を発動させると、『抗精神魔法のアミュレット』が完成したことがわかった。



(もう少し慣れれば、デザインなどもこだわれるかしら)



 ダサいとは言わないが、ちょっと微妙。そんなブレスレットを見ながら溜息を吐いた。今回も失敗するといけないと思って量自体はそれなりに頼んでいる。絶対に料金を受け取らせる。そう決意を新たに、レオノアは続いて必要な量を作り出した。

 レオノア自身にそこまでの自覚はないが、彼女の作ったアミュレットは一般に出回っているものよりよほど性能が良いものだった。それこそ、サミュエルの渡した材料で二個ほど作ることができれば、十分に元が取れるくらいだ。だからこそ、サミュエルは作ったものをもらえれば材料費はいらないと告げたのだ。

 魔道具や魔法薬を作ることを楽しんでいるだけの彼女はあまりにもその価値を知らな過ぎた。サミュエルが過保護っぽくなるのはそのせいでもある。


 レオノアは翌日にサミュエルに料金とアミュレットを渡した。サミュエルは無言でセバスチャンにそれを渡すと、「ふむ」とだけ言って一時退出した。

 少しして戻ってきた彼の手にはカルトンに似たもの。その上に何かずっしりと入っていそうな袋があった。



「アミュレット三つの料金から材料費を抜いた金額でございます」

「ひえ……」



 レオノアは若干怯えながらサミュエルを見ると「正当な金額だ」という答えが返ってきた。



「ご相談なのですが、旦那様、奥様、それから私の分もお作りいただいて構いませんか?」



 更に提示された契約内容に、サミュエルを見る。



「正当な金額だ。君が望むならもう少しつり上げすることもできるぞ」

「み゜」



 レオノアは震えた。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。


サミュエル「ふ……なんだ?その妙な鳴き声」(可愛いな)

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