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40.脱出劇


 遠くから聞こえる大きな爆発音。それをBGMにレオノアは魔石に魔力を流しながら魔法陣の修復を行っていた。魔石を魔法陣に押し付けると、ゆっくりと溶けて陣を修復していく。レオノアの想像以上に時間がかかる。



(……っ、早く、早くっ!!)



 そうでないと、クラッカーボムを持って時間を稼いでくれているルカとウィルの身が危ない。焦る気持ちを抑えるように修復に使う魔力のコントロールに集中した。後ろから攻撃がしかけられているが、無視している。致命傷でないなら、後でどうとでもなる。

 少しずつ元の状態へ戻っていく陣の修復率が九割を超えたあたりで、ルカとウィルがレオノアの様子を見に戻ってきた。虫系の魔物に背や腕、足を攻撃されているのに修復を続けているレオノアの様子を見た二人は大きく目を見開いた。それと同時にルカが全てに光の矢をぶつける。



「レナ!」

「……できた!!早く乗って」



 怒るようにその名を呼んだ直後にレオノアが顔を上げた。傷ついた足でうまく立ち上がれない彼女をルカは横抱きする。ズルズルと近づいて来る音と怒ったような、威嚇するようなシューシューという音が聞こえる。

 音に敏感な蛇に、大きな音が出る爆弾はたいそう効いたようだ。



「最後に全部、持っていけ!!」



 ウィルはクラッカーボムを鞘がついたままの剣で遠くに打ち飛ばした。同時に三つも飛ばせたのを見てレオノアは「ウィルってば器用……」と呟いた。レオノアたちの転移が終わると同時にそれは炸裂する。耳をつんざくような音がソレを襲った。


  一方で、急に戻ってきたかと思えば傷だらけのレオノアたちに気づいた王都ダンジョンの門番は慌てた。レオノアがしていたケガはどう考えても申請していた階層でするようなものではなかった。何があったか聞き取りを行えば、Bランク以上相当の化け物が現れていたというのだからいっそ夢であってくれとでも言うような、真っ青な顔だった。

 それはすぐに冒険者ギルドに伝達され、討伐部隊が組まれることになった。当面、調査のためにダンジョンへの立ち入りも禁止されることになった。



「どうして逃げなかった!?」



 それはそれとして、レオノアはルカに怒られていた。

 倒せるはずの魔物に背を何度も切り付けられて裂けていたし、足は骨折していた。腕につけられた傷には毒が入っていたため、毒消しのポーションを慌てて飲むことになった。



「早くしなくちゃ、としか考えられなくて集中していたら気が付かなかったの」



 ケロリとそう言ってのけたレオノアに、ルカは「傷が残ったらどうするんだ。毒も……死んでいたかもしれないんだよ」と返す。けれど、それよりもっと危機的な状況で逃げ回っていたルカに言われても、とレオノアは眉を下げた。



「でも、やらないとここに戻ってこれていないわ。私はできることをやっただけ。あなたと同じように」

「そうだな。俺もお前もケガくらいしてるし、危ない場面もあった」

「けど、レナは女の子で」

「それは、性別は冒険者にとって関係があるのか?」



 ウィルの返答でルカは言葉に詰まった。数秒考えて、戸惑うように視線をさまよわせる。



「心配してくれたのよね。ありがとう。けれど、それは一人で比較的安全な場所で作業をしていた私も同じ気持ちだったわ」

「うん……ごめんね。けど、君はやっぱり大事な子だから、大きなケガを見てしまうとすごく、怖くなる」



 そんなに大事に思われているなんて友人冥利に尽きる、なんて思いながらレオノアがニコニコ笑う。それを見て、ウィルは「なーんかすれ違ってる気ぃすんな」とボヤいた。

 数日後、ポーションでケガを全て治してからシュバルツ商会へ向かったレオノアは、騒ぎを聞きつけていたサミュエルに「これからはこの帰還のスクロールも持参しろ」と魔法の巻物を押し付けられた。そんな高額な代物は受け取れないと返却しようとした。



「受け取らないなら、今から、君の目の前で、燃やす」



 本当に燃やそうとしたので、燃やすくらいならと受け取った。心配性である。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。

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