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18.夏季休暇の前に


「レナ、今日はキラーラビット討伐にしよう」

「あら、いいわね。あの子の角は薬の材料になるのよね」

「……査定は下がるが」

「今はお金が優先だからそのまま出しましょう」



 レオノアは頭の中で夏季休暇前に欲しいものを思い浮かべてそう返した。それなりの金額をため込んではいるが、サミュエルに聞いた中古の錬金釜にかかる金を考えれば、家族へのお土産代が欲しいこともあって少々心もとない。



「君が無駄遣いしているところを見たことがないけれど……一体、何でそんなにお金がいるんだい?」

「あら、私のことが気になるの?ルカ」

「そういうわけじゃ……!?」

「ふふ、冗談よ。家族へのお土産代と欲しいものがあるからお金を貯めているの」



 その『欲しいもの』が気になるけれど、言わないということは教える気がないのだろうと二人は判断する。レオノアは時々、妙に線引きをする。そのことをルカとウィルは少し寂しくも思うけれど、彼らもまた秘密を多く抱えている。だから、踏み込めない。踏み込むべきでないとどこかでブレーキがかかる。

 レオノアはそんな二人を見てただ笑顔を浮かべるだけだ。



(サミュエルがもう確保してくれているのよね。ふふ、楽しみ。何かお礼をしないといけないかしらね)



 一緒に過ごすことが多いのはルカとウィルだが、彼女がより信頼しているのはサミュエルだ。彼には隠し事がない。それに、サミュエルはレオノアのことを心配しているのか、相談すれば大体願いを叶えてくれる。そう言うと『都合のいい男』とも取れるが現在のレオノアにそんな自覚はない。



「それじゃあ、裏の山に行こうか」



 ルカの言葉にレオノアとウィルはうなずいて移動を始めた。

 三人は移動しながら、今後の予定について話し合う。



「夏の一か月ほどは王都を離れるのだったか」

「ええ、故郷へ帰るの。早く家族に会いたいわ」



 レオノアの普段の言動から、彼女が相当家族を好きであることを知っている彼らは苦笑する。内心では引き留めたい。だが、それで嫌われては仕方がないと堪える。

 王都から一週間もかかる土地だ。夏季休暇を逃せば次にいつ帰れるか、なんてわからない。冬季の休暇は雪で道が閉ざされ、春季の休暇は短い。であれば、黙って見送るべきだろう。



「レナは家族思いだね」

「?普通ではないかしら」



 苦笑するルカに、彼もまた家族と仲が良いと言えないのだろうと察する。けれど、深入りもしてほしくなさそうなので、レオノアはそれ以上何かを言うことを避けた。

 こういうところで、信頼しきれないのだろう。そう考えるけれど、レオノアにだって秘密はそれなりにある。



(そう考えると、距離感としては今くらいでちょうどいいのかも)



 互いに干渉しすぎず、たまに協力し合う。それくらいの関係がちょうどいいのだろう。

 ルカとウィルはおそらく貴族だ。いつかは会わなくなる人間であるし、知らないことが多くても仕方がないだろう。

 そんなことを考えるレオノアはかなりドライだった。


 山に到着すると、すぐに討伐を始める。

 かつてはそれなりに苦労もした討伐任務だが、今の三人には少し物足りないくらいになっている。



「そろそろ、ダンジョンに挑戦してみるのもいいかもしれないな」

「王都のダンジョンは奥に行けば行くほど魔物が強くなるのよね……?準備をしてから少しずつ攻略してみる?」

「誰かもう少し高位の冒険者を雇うのもありだな。初心者狩りをする連中もいるというし」

「やだ、最悪」



 レオノアの言葉にウィルも「全くだ」とばかりに頷いた。


読んでいただき、ありがとうございます。

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