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28.戦いの時、近く


 王宮に帰ったレオノアたち、忙しなく動く官吏たちを見て、『何かが起こっている』ことを察した。カイルの帰りはすぐに知らされて、指定された部屋に集まるようにと声がかかる。

 招集された人間たちが集まった部屋には皇帝であった男の姿はなく、そこにいるはずの席にはデレクがいた。



「よく戻った」

「……ご心配をおかけいたしました」



 そう言ったカイルに、デレクは一瞬いたわるような目を向けた。しかし、次の瞬間には「今、ロンゴディア王国で起こっていることについてもう報告を受けているか」と問いかける。



「いえ、まだ……ただ事ではないということは宮中の様子からわかりますが」

「そうか。それでは、私から言おう」



 デレクはカイルたちをまっすぐに見つめながら「邪竜ファフニールと見られる個体が出現した」と告げた。

 その時、カイルたちもまたラファエルたちの蛮行の理由に気づいて眉を顰めた。



「なるほど……だから」



 感情を優先させるならば、ロンゴディア王国が滅びるまで見ていたいものだが、すでに魔物の数は増え、ファフニールの影響を受けた魔物が動くことで人間から力を奪う瘴気が広まりつつあった。

 それらによって奪われた命は、魂はファフニールにとっての燃料となり、時間が経つにつれ、それが強くなっていくことは明らかだった。



「アストラ神の神殿や教会がある場所は比較的被害が少ないということで、一時避難場所とさせている」

「しかし、ずっと避難させておくわけにはいきませんからね」



 デレクの隣にいる第二皇子エリアスが難しい顔でそう言うと、部屋の扉が開いた。そこから、ルーカスとウィリアムが現れる。レオノアとサミュエルの姿を見て少しだけ微笑んだルーカスだったが、すぐに真剣な表情へと変わる。



「お呼びと伺いました」



 デレクに跪くルーカスたちの姿を見て、レオノアは少しだけ目を逸らす。なんとなく、いたたまれない気持ちになるのはどうしてだろうか。そう自分に問うてもなんとなく、という曖昧な理由しかでてこない。



「我々は、何としてもあの邪竜ファフニールを倒さなければならない。そうでなくては、やがて滅びるしかないだろう。そのために、互いに手を取り合う必要があるのではないだろうか」



 デレクの言葉に、『ロンゴディア王国元第一王子』へと向ける厳しい視線が緩くなる。



「ここに、もう一つの聖剣があり、彼らの元にもアストラ神の加護を持つ剣が二振りある。……我々にはまだ、戦う術がある」



 それは、周囲を鼓舞する言葉であり、同時に彼自身も鼓舞する言葉だったのかもしれない。

 デレクの言葉が引き金になったように、あたりに光が満ちる。白く温かい光は少しずつ人の形を取っていき、そこには金色の髪をもつ青年が立っていた。青年は辺りを見回すと、懐かしそうに目を細めた。



「ふむ。そろそろか、と姿を見せたが正解だったか?」



 彼はアストラ。

 アウローラと共に生まれたこの世界の神である。



「約束を果たそう」



 そう言って、彼は微笑みを浮かべた。



いつも読んでいただき、ありがとうございます。

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