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24.救出


 レオノアはカイルたちの回収の任務を受けて、準備をしていた。

 騎乗できる竜のいる小屋の前に立つと、溜息が出る。暇な時にフラッと冒険者活動をしてはいたし、騎乗訓練も受けているが、まさか単独で飛び回る日が来るとは思っていなかった。



(まぁ、伝言して終わりなので気楽ではあるけれど)



 無事に撤収できるならば奪われた聖剣の回収や戦闘は後回しでいいと言われている。これから先のことを考えると、二度作ることに成功している聖剣よりもカイルの方に価値があると考えられているからこそだろう。

 小屋に入ると、黒い竜がひょっこり顔を出した。レオノアを見て甘えるように頭を差し出す姿はどこか愛らしい。



「ふふ、よろしくね」



 黒い竜を厩舎から出すと、鞍と手綱を着ける。そして、聖魔法を防ぐアミュレットを首輪につけた。



「一緒に、サミュエルたちを連れて戻りましょうね。もし、何かあれば私じゃなくて殿下たちを助けてあげてね。私は運がいいから」



 サミュエルが聞いたら全力で止める言葉だが、今ここに彼はいない。

 レオノアは自分の価値を重くみていなかった。彼女からすれば、これは他のみんなに生きてほしいという願いであり、愛なのだが、相変わらずその結果、残された者がどう思うかに関して無頓着なままだった。


 黒い竜に乗って飛び立つと、レオノアはロンゴディア王国方面へと向かっていく。

 カイルたちの進行方向はデレクから聞いている。魔力探査機能のついた双眼鏡を使ってカイルたちを探す。



(遭難者救助用に作ったものだったけれど、こんなところで役に立つとはね)



 苦笑しながらあたりを見回す。まだ改善点の多い魔道具ではあるけれど、今役に立つものであることには変わりがない。しばらく飛び続けて、いると魔力の束が見えた。



「見つけたかしら……?」



 これがロンゴディア王国の者たちならば困ったことになるが、魔力を持った人間がそこに複数いることだけは確かだ。

合図をして下降すると、崖の近く、背中合わせで戦うカイルとゲイリーを見つけた。サミュエルがいないことに少し不安を感じるものの、元々彼らは別の人間の指示で別行動をしている。共にいないことに自分を納得させる。

 しかし、カイルとゲイリーの置かれている状況を見て眉を顰める。


 彼らと敵対しているのは、エデルヴァード帝国の騎士だった。



(……なるほど、魅了を大盤振る舞いしたようね)



 ゲイリーは確かに強い。だが、操られた相手を一方的に殺すことはさすがに躊躇した、もしくはカイルからできるだけ気絶させろとでも言われたのだろう。苦戦しているように見受けられる。

 溜息を吐いて、急下降するとカイルとゲイリーを飛竜に掴んでもらってもう一度上昇した。



「ご無事ですか?」

「お……まえ、どうしてここに」

「デレク殿下より、『カイルを連れ戻してこい』と命を受けました」



 少し離れたところで降ろすと、カイルは疲れたような顔をしていた。ゲイリーは「皇帝陛下は」と端的にレオノアに問いかける。



「今頃、退位を迫られているところではないかしら。……皇太子殿下はロンゴディア王国と邪竜を相手する際にカイル殿下の力が必要となると判断していらっしゃったわ。そのうえで私に問いかけたの。陛下と自分。どちらに付くかを」

「レオノアは兄上を選んだということか?」

「生存戦略ですわ」



 にっこりと笑うレオノアを見て「そうだろうな」とカイルは溜息を吐いた。



「聖剣については後回しでも構わないのだろう。そもそも、あれは邪竜やその他魔物に対して効果はあるものの、戦争に効果的というわけではない。……むしろ、脅威に思うべきはある程度の対策を施していたというのに、わが国の騎士たちを操ってみせたあの女だろう」

「カイル殿下と俺を操れないことに苛立ってはいたようなので、これレベルになると効果があるみたいではありましたが」



 ゲイリーが指したのは皇族と仲間内のメンバーに渡していた一番効果の高いアミュレットだ。これだけしか彼女の力を防ぐことができなかったという事実にレオノアは眉根を寄せる。材料や時間の関係もあって、量産するのは難しい。となると、マリア・ハーバーに対して何らかの手段はやはり必要となるだろう。



いつも読んでいただき、ありがとうございます。

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