19.戦いの準備2
カイルの計らいで部屋を用意してもらったレオノアたちは、そこで三年前に別れたきりの仲間たちと再会していた。
レオノアとサミュエルを見た二人は嬉しそうに微笑んだ。
金色の髪、金色の瞳を持つ青年はロンゴディア王国の元第一王子であるルーカス。
紺色の髪、青い目の大柄な青年は、かつて伯爵家の長男であったウィリアムだ。
「久しぶりだね。レナ、サミュエル」
「まさか、本当に早期に見つけ出して側にいるとは思わなかったぜ……」
「それは君たちの執念が足りないんじゃないか」
レオノアはサミュエルに「執念なんだぁ」と恨みがましそうな目を向けた。
「愛じゃないんだぁ……」
「愛に決まってるだろうそれに加えての執念と執着と束縛をしたいという気持ちだよやつらにはそれが足りない」
「レナ、コイツ怖くないか?」
ウィリアムに話を振られたレオノアは首を傾げつつ「いつものことではないかしら?」と口に出した。血走った目をしながら一息で言ったサミュエルにドン引きしているルーカスとウィリアムは互いに目を見合わせて、溜息を吐いた。
「……出遅れた上にこれが相手では、な」
「何を言ってるんだ。レオノアはこちらでも大変面倒な男に好かれている」
言わずもがな、ゲイリー・オルコットのことである。
レオノアの表情を見て、サミュエルの言葉が本当であることを察したルーカスは小さく「勘弁してくれ……」と呟いて項垂れた。
「それよりも、わざわざカイル殿下に手紙を送るくらいだ。何か重要なことがあったのではないか」
「……まず一つ。我が国に伝わっていた聖剣が、折れた」
「まぁ、俺ら相手に国宝持ち出すような阿呆がいるとは思わなかったから俺がちょっとやっちゃったわけだが」
ロンゴディア王国の刺客から追われながら、冒険者をしていた。その中で、ロンゴディア王国から流れてくる魔物の数が異様に多い……しかも、日々増えていることに気が付き、原因を探っていた。
活性化する魔物の原因を追い続けるうちに、彼らは邪竜復活の話にたどり着いた。そこまではよかったが、ロンゴディア王国も思い出してしまった。強い力を持つという剣が手元にあるということに。
「元からバカなのか、あの女の影響下にあるから愚かしいのか、俺にはわからねぇけど、それを俺たちを殺すために持ち出したんだよ。でも、俺らはそんなこと知りようがねぇだろ?やらなきゃ殺されるだけだしな、こう強化魔法を纏わせた剣を思いきりぶつけたら真っ二つになった」
ウィリアムの言葉に「聖剣ってちゃんと伝わっていたんだなぁ」とレオノアはなんだか感慨深い気分になった。レオノアのご先祖様たちが作った業物は一応邪竜が復活した時のために国宝として保管されていたようだ。なんとも言えない理由で破壊されてしまったが。
「折れた剣はそのまま帰ったもんだから、回収したらルカが国宝だって真っ青な顔をするもんでビビった」
「本当に我々を魔物か何かだと思っていることがはっきりとわかったのは収穫だったかもしれないな」
迫害された天才たちが手を取り合って作った国だったのに、その子孫が再び迫害されているなんて、皮肉な話である。
「しかも、この国の遺跡を調べて回っていると、邪竜を封印したときの話が出てきて、そこに聖剣の名があった。だから、それに準ずる武器をと思って各地を渡り歩いたんだ」
レオノアの前に置かれたのは、白い剣と青い刃の大剣。そして、二つの大きな魔石だった。
「アストラ神より力を授かったとされるものだ。これの強化を、レナ。君に頼みたい」
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