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10.聖剣の材料


 三人でケイトリンに指定された場所へと向かうと、すでに学者たちが集まっていた。たくさんの学者が本を抱え、議論をしている中でレオノアたちは異質だ。



「来たのね、あなたたち」



 その中から、ケイトリンが三名の侍女を引き連れて現れた。アメリアが軽く手を振ってくる。それに気が付いた隣の侍女が振っている手を軽く叩いた。

 ケイトリンは三人を近くの机に案内すると、そこに古文書の写しと解読したものを並べる。それは、剣の作り方と必要な材料であるようだった。



「まず、あなたたちを呼んだのは、聖剣の材料になるものを手に入れるためよ。これを手に入れるためには、妖精の鱗粉と聖竜の鱗、人魚の涙が必要なの」



 これは、聖剣を作るための金属を作るために必要で、採集するためにこの国の難関ダンジョンの一つ、聖なる白と呼ばれる洞窟へ行く必要があると説明される。



「妖精、か」

「何か問題でも?」

「彼らは金属を好まない。剣などを携えたまま向かえば、姿を現さないでしょう」



 サミュエルの言葉に、ゲイリーが少し面倒くさそうな顔をした。彼が得意なのはさっさと斬って捨てることのできる討伐である。剣なしでも戦えるが、あまり得手とはいえない。

 そんなことを考えているだろうゲイリーを横目で見て、サミュエルは溜息を吐いた。



「魔馬等は使っても、他の魔物に対しては大抵そんな反応をするが……方法さえ間違えなければ友好的な魔物もそれなりにいる。全てに剣を突きつける必要はないだろう」

「その『友好的』がわからないだろう」

「……いや、俺がこの国にくる以前から魔馬は流通していたはずだ。言い訳だな」



 睨みあう二人を放置したまま、レオノアは「剣を持たずに入るとなると、空間魔法を扱えるようになっていただく必要があるかしら」とのんびり言った。



「マジックバッグを持って行ってもいいかもしれないけれど、初動に差が出ると思うの。一応、高難易度ダンジョンだもの。安全性には気をつけなければ」

「ご安心を。あなたへ捧げるものを持ち運びしやすいように、その魔法はすでに獲得しております」

「相変わらず気色が悪いわ」



 ゲイリーを見るケイトリンの視線が冷たい。

 レオノアにとってはいつものゲイリーなのだが、やはり外側から見ると、相手のいる男に対していつまでもこの態度だというのは異常に見えるらしい。

 レオノアも「そろそろ、他に目を向けては?」と勧めているのだが、「感情というのは理性の利かぬものでして」という返答があるのみだ。諦めるつもりはまだないらしい。



「まぁ、その気持ち悪いところも此度は役に立つようなので大目に見ましょう」

「ケイトリン殿下にどう思われようと俺はどうでもいいのですが」

「……カイルは従者にどんな教育をしているのかしら!」

「カイル殿下は基本的に放置主義ですよ。レオノアを見ていればわかるではありませんか」



 サミュエルの言葉を聞いたケイトリンは彼をキッと睨んだ。それに笑顔を向けて、「問題ないようであれば、出発日時を決めましょうか」なんて言うサミュエルもここ数年でだいぶ肝が据わった。



「そうね。準備期間に三日あげる。馬車も一番早いものを使いなさい」



 サミュエルがシュヴァルツ商会の者であると知っているから、そのくらいあれば必要なものをかき集められるだろうとケイトリンは判断した。レオノアに小切手を手渡すが、そこに金額はない。



「これで物品を購入なさい」



 レオノアは「金額は書いておいた方がいいんじゃないかなぁ」と思ったけれど、ありがたく頂戴しておいた。特に悪用をする気もないが。



(あとでカイル殿下には言っておこう)



 呑気にそう考えてから、まだバチバチやっている二人を引っ掴んで部屋から離れた。



いつも読んでいただき、ありがとうございます。

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