10.冒険者仲間
魔眼についてはまだ悩みながらも、レオノアは冒険者としての活動を始めることにした。最初にシュバルツ商会に行ったときに基本的な装備品は安価で買わせてもらった。研修も完了して準備はできている。薬草の採取や弱いとされる魔物の討伐などから慣れていくことにした。
(最初は薬草の採取にしようかしら。ある程度はおばばに教わっているからわかると思うし、周辺に生息している薬草の図鑑ももらっているもの。将来的なことを考えるときちんと見分けることができないといけないし)
そもそも、錬金術のスキル持ちである。剣士や魔導士、盾使いなどではない。戦闘力が高いわけではないのだ。ゆっくりと慣れていけばいいだろうと判断した。
そうして、壁に貼ってあった依頼書を手に取ろうとすると、手が重なったのを感じた。
振り返れば、アッシュグレーの髪の少年がいた。年はレオノアとそう変わらないだろう。青い瞳になぜか胸が騒ぐ。
「……?ああ、すまない。俺たちも初心者なんだ」
手が触れた後、少年はレオノアと同じように不思議そうな顔をして、それから我に返ったように手が触れたことを謝った。それに、「偶然ねぇ」と笑う。
「俺は、ウィル。後ろのこいつはルカ。お前は?」
「私?私はレオノアというの」
よく見れば、優しい茶色の髪に金色の瞳を持つ少年がいた。「よろしくね、レオノアさん」とほほ笑む姿は優しそうだ。
「本当は魔物の討伐をやってみたいんだけど、ルカが依頼の一連の手続きを一回やってみたいからって薬草の採取を受けることにしたんだ」
「依頼の薬草は初級ポーションに使うものだろう?森の入り口付近にあるものらしいし、初めはそれくらいでいいんだよ。君は?」
「同じようなものよ。私は一人だし」
「一人なの……?そうだ、わ、僕たちと一緒に行かない?」
その提案を少し考えた後に受け入れた。
正直なところ、レオノアだって冒険者活動は初めてなので不安な気持ちもある。誰かと協力ができるならありがたかった。年齢がそう変わらないのもホッとする。
「じゃあ、そうだな……レナって呼んでいいか?」
「別にいいけど……」
「じゃあ、僕も!」
レオノアはちょっとだけ「この二人、距離の詰め方どうなってるんだろう」と思った。けれど、彼女は気づいていなかった。
不思議そうな顔をしているレオノアを周囲の者たちがどんな目で見ていたか。
レオノアは美しい少女だった。所作こそ普段は平民のように見えるけれど、時折貴族のようなものが混じる。レオノアが気づいておらずとも、アマーリアであったときに身に付いたものが完全に消えるわけではない。
どこかの貴族の血を引く、訳アリの娘だと思われても仕方がない。
それだけでなく、彼女を囲いたいと思う欲の籠った目を向ける人間だっている。
大切に、育てられた娘なのだろう。「よろしくね」とほほ笑むレオノアを見て、二人はそう感じた。
「僕たちのことも呼び捨てでいいからね」
「ん、わかった」
彼らは栗色の髪と、どこか目を引かれる赤い瞳を持つ少女に手を差し出す。
こうして彼らはパーティを組んだ。
森へと向かった彼らはすぐに薬草を見つける。
彼らはそれを談笑しながら採取した。時折、ウィルがそこを離れたが、ルカは「気になるものでも見つけたんじゃないかな」と笑った。だから、レオノアは「弱めの魔物でもいたのかな」なんて考えていた。
実際に彼らの近くにいたのは、レオノアとルカに目をつけた不届き者であったことを彼女が知る必要はない。
ルカは、レオノアが何も気にすることがないように、と笑顔を見せた。
読んでいただき、ありがとうございます。




