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王太子の結婚 〜飲んだくれの俺が幸せを見つけるまで〜  作者: 雪女のため息
〜陽の差す方へ〜
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2



本日、2話目の投稿です。




 ジェイクと別れ自室に戻ると、ソフィアがまだ起きて俺を待っていた。


「セオドラ様、今日はありがとうございました。」


 ソフィアはにっこりと笑って俺を見た。

 もう、何年も、何十年も見る事ができなかったソフィアの微笑み。

 

 俺はソフィアが心から愛おしくて、抱きしめて激しく口づけをした。


「ソフィア、ずっとこうしたかったんだ。」


 思わず漏らした言葉にソフィアは頬を染めて答えた。


「セオドラ様。わたくしも…」


 俺の幸せはソフィアと共にある。

 俺はいつまでもソフィアを抱き続けた。





 翌日、俺はルークとローリーを呼んでジェイクと共に、俺達の見た未来の話をした。


 俺達が未来から戻って来たと2人が信じるとは限らなかった。でも、今思いつく最善の策は、2人に協力してもらうという事だけだった。

 もちろん、全部は話せない。

 2人が、今はまだ知らなくていい未来もあるのだから。



 唸りながら俺達の話を聞いたルークは言った。


「ゼノンが殿下とジェイクをここに戻した、という事は、今なら間に合うということですな。」


「ルークもローリーも、俺達の話を信じてくれるのかい?

 あり得ない話だと、笑われるかと思っていたんだ。」


 ローリーがくすっと笑った。


「殿下とジェイク殿が、わざわざこんなに手の込んだ話をするとは思えない。

 2人揃っておかしくなったとも思えない。

 私もルーク殿も、お二人の事を信じておりますよ。」


「そうですぞ!

 しかも、あのゼノンですからね。

 …確か…殿下の守護になったと言っていたはず。私達の力では考えられない事もできるのでしょう。

 とりあえずはゼノンの力を信じて、進んで参りましょう。」


 ルークはまず事実確認からですと俺達に指示を出した。


 俺はコペル男爵家にヒューイットの話を聞きに行く。

 ローリーはヒューイットの足取りを掴む。

 ジェイクとルークはカーラの身元調査をやり直す。


「我々がこれから起きる出来事を知って今を変えていくと、未来もどんどんと変わっていくのだと思います。気を抜かずに対処いたしましょう。

 そうですなぁ…。この事は4人だけの秘密にしましょう。皆を巻き込む必要はありませんからね。」


 ルークはそう言った。

 1つの出来事が変われば、それに続く出来事も変わって行くだろう。


 とりあえず、1週間後にまた集まる、と決めて解散した。





 突然ではあったが、俺は早速ソフィアを連れてコペル男爵家へと飛んだ。

 

 ソフィアは挨拶もそこそこに、跳ねるようにカイセルの部屋へと向かって行った。


 ソフィア様、落ち着いて!と言うアリスの声がエントランスに響いていた。



 シガールームに落ちたいた俺は、ヒューイットの名を出した。すると、義父エイダム コペルは、眉を顰めた。


「殿下…なぜあいつの名前をご存じなのですか?

 あいつはソフィアが13歳の時にここから放り出しました。俺はソフィアの婚約者だ、などと訳のわからんことを言いましたので。

 ソフィアが結婚する頃にもここに来て、ソフィアを迎えに来た、などと…。

 あいつがまた何かしでかしたのでしょうか?」


 不安げな義父エイダム コペルに、俺は笑って顔の前で手を振った。


「いやぁ、ちがう、ちがう。そんな大事じゃないんだ。

 実はね。

 最近、ヒューイットという男が貴族の家の下働きの息子だとか言って、あちこちで金を借りてるらしいんだ。だから、気をつけるようにと言いに来たんだけど。

 まあ、それは言い訳でカイセルの顔を見たかったんだよ。ソフィアもなんだか飛び跳ねてるしね。」


 俺の言葉にエイダム コペルは疑いも持たずに笑った。


 これで、ヒューイットは俺達の知っている通りの行動をしている、という確認が取れた。



 さて、帰ろうとすると、トントントンというノックの後、かたんとドアが開いた。そこにはソフィアにとてもよく似た女性がいて、俺とエイダムに微笑んでいた。


「伯父様。セオドラ殿下にお茶をお持ちしたのですが、よろしいですか?」


 そして、辺りを見てちょっとだけがっかりとした表情をした。


 ええっ?


 エイダムは、ありがとうジュリアと言い、一瞬にして顔が綻んだ。

 

「ジェイク殿がいないからと、そんなにがっかりした顔をするんじゃないよ。

 代わりに、ジェイク殿と出かけた話でも殿下にお聞かせしたら?」


 ジュリアは顔を赤らめて、知りません!とお茶を置いて部屋から出ていってしまった。


 ええええっ〜!


 エイダムは、ふふふと笑った。


「どうなることやら…私は見守るだけですよ。」


 そう言うエイダムに俺はジェイクとジュリアの話をさりげなく聞き出した。


 2人はパーティで知り合ったという。

 ジェイクはソフィアとそっくりのジュリアを見て、ポカンと口を開けていたようで、ジュリアはその顔も素敵だった、と言ったらしい。

 

 前の俺はソフィアの従姉妹など聞いたこともなかった。それなのにジェイクと…!?


 ゼノンの仕業!

 なかなかやるなぁ、と俺は嬉しくなった。




 ソフィアはコペル家に1泊する予定で、そのまま残った。帰ろうとするとソフィアは俺を見上げてキスをした。


「わたくし、明日ちゃんと帰ります。

 待っていて下さいませ。」


 可愛いその顔を見ているとキスが激しくなりそうで、俺はかろうじて堪えた。

 コペル男爵家の皆が微笑んでいるのがわかって、俺は頬をほりほりと掻いて照れ隠しをした。




 城に戻り、護衛の交代で俺の所にやって来たジェイクをちょいちょいと手招きして近くに呼び、俺はジェイクに囁いた。


 お前さ、ジュリアと仲良しなんだってね


 ジェイクはものすごく狼狽えて、シールドを張った。


「殿下!

 新しい私は大変な事になっておりました。」


 未来から戻ったジェイクには、驚く事が起きていたのだそうだ。


 来月、パーカー伯爵家を引き継ぐ事になっていて(そんな事は知らなかった)


 結婚を急かされており(そんなこと言われても)


 結婚相手候補の1人にソフィアの従姉妹ジュリアがいて(誰なのか知らない)


 自分も乗り気になっているようで(なぜ?)


 父や母にどうするのかはっきり決めろといわれ(ええ〜っ!)


 その上、この前の2人での外出はどうだったのかと聞かれて(そんな記憶は、ない…)


 返事に困った。



「殿下!私はまだ…ジュリアなる女性に会った事がないのです。

 どうしましょう!どうすればいいのでしょう?

 困った。困りました!

 新しい私に、私はついて行けません!」


 俺は笑いを堪えきれず、ジェイクの背中をバンバンと叩いた。


「モテが来たな!がんばれ。

 コペル家でジュリアに会ったが、ソフィアにそっくりの可愛い娘だった。17歳だそうだ。お前の事が好きなんだと思うよ。

 うまくやれ。応援してるぞ。」


 ええ〜っ…


 そんな顔をしたジェイクはシールドを消し、ぶちぶちと言いながら護衛についた。

 

 そんなジェイクを見て、俺は少し安心した。いつもの明るいジェイクがそこにいたから。



 俺は気づいていたんだ。

 ジェイクはずっとソフィアが好きだったんだって。だから、ずっと結婚する相手も見つからずにいた。本人は自分の気持ちに蓋をしていたけれどね。


 俺はジェイクの幸せを願っている。

 本当に幸せになって欲しい。

 俺が苦労をかけた未来から戻ってきたのだから、俺の事よりも自分の幸せを探して欲しいと思っている。

 心からそう願っている。

 

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