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王太子の結婚 〜飲んだくれの俺が幸せを見つけるまで〜  作者: 雪女のため息
〜陽の差す方へ〜
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1

新しい章 〜陽の差す方へ〜 が始まります。



これからもセオドラとソフィア、仲間達を応援していただけたら幸いです。


本日は2話投稿です。よろしくお願い致します。





 ふと気づくと、俺はソフィアとともに、雪の積もる庭の四阿にいた。

 木々には風船の花が咲き、風船が順番に割れて紙吹雪が舞い散っていた。

 集まっている皆は幸せな顔で笑っていた。


 ルークとマリアンヌがくっついて立っている。

 ローリーとベラが仲良く並んでいる。

 ハンナ妃とエリの顔も見える。

 トルディオン王子とフィルもいる。


 ジェイクは親衛隊員を引き連れて、警護をしてくれている。ジュエルの姿も見える。


 アリスとアラン達、側仕えの者達、パティシエやシェフ達、その弟子たち。ナハド親方達…。

 馴染みの皆がいる。


 皆、笑っている。


 俺は…ここに戻って来た。

 まだ、皆が楽しく笑っていた…この日に。




 

 俺に何が起きたのかは、すぐに思い出した。


 赤いチューリップを手にした悲しげなソフィアを見て、俺は心の中で叫んだんだ。

  

 俺が欲しかった未来は、こんな未来じゃない。

 違う!違う!違う!

 誰か、だれか!

 違う!こんな未来じゃない。

 俺を元に戻してくれ!

 時間を巻き戻してくれ!


 だれか…

 誰か!だれか…!!

 

 そして、俺の頭にある名前が浮かんだ。


 ゼノン


 その時、暗闇の向こうに微かに光が現れて、俺はまた、意識がなくなった。

 …そして今、目覚めた。




 ふと見ると、ジェイクが珍しくもキョロキョロとあたりを見ている。

 もしかして、ジェイクも?


 俺はジェイクを見て、大丈夫だという様に頷いた。


 



 その夜、俺とジェイクは俺達に何が起きたのかを2人で確認した。



 俺はソフィアの命が尽きると言われ、夢の中でソフィアを助けるためならなんでもする、と言った。すると、ヒューイットがその言葉で俺に幻術をかけた。


 ソフィアの命は助かり、俺は '惨めな最後' を迎える事になった。


 俺の片割れは酒場で飲んだくれていた。もう片方の俺は何も知らずアルコールの中毒症状が現れて、幻覚を見るようになった。


 全てにタマラ国の第三王女だったカーラが関わっていた。


 ローリーが殺され、俺の弟のウィリアムは捉えられ戻らない。

 パール国に戻ったフィルとトルディオン王子は罠にはまった。フィルはパール国の兵に襲撃され、トルディオン王子はヒューイットに消された。

 ダニエル コペルはコペル男爵家の異変を知り、屋敷に戻ったまま消えた。

 ジュエルはソフィアを守ろうとしてヒューイットに消された。

 ヒューイットを攻撃して消し去ったルークはカーラに撃たれた。


 多くの人が消されて行った。


 情けない俺は、何も知らないず、その間も、その後も…暗闇の中でもがき、走っていた。


 飲んだくれていた方の俺の記憶はある。情けない俺はどこかの酒場に住み込んで酒を飲み、女を侍らせていた。


 金はどこから出ているのか、考えたこともなかった。


 俺は酒を飲み、女と過ごしていただけだ。




 

 タマラ国はスカーレット国を攻撃し、父上も自衛軍も消えた。なす術もなく、あっという間だったという。


 ジェイクは俺の知らないヒューイットの事、カーラの事、タマラ国、パール国の事などを淡々と俺に話した。


 自分の事はあまり話さなかったが、ジェイクの魔力はカーラに封じられてしまったとだけ言った。


 そして、カーラが弟に打たれてこの世から消えた。


 タマラ国の襲撃のどさくさに紛れて、ジェイクは俺を背負い、ソフィアの手を引き、書物庫の秘密の通路から逃げた。


 その後は場末の酒場の屋根裏に辛うじて住み込み、どうにか食い繋いでいたと言う。


 そう語るジェイクの眼には何も映っていなかった。

 それだけ辛い思いをしていたのだろう。





 俺はジェイクの手を取った。


「俺に言えない事がたくさんあったのだろう?

 俺が不甲斐ないばかりに…。ジェイクに苦労をかけてしまった。

 本当に、すまなかった。

 ジェイクのおかげで、俺はここに戻って来た。

 心から感謝する。感謝してもしきれない。

 ありがとう。本当に、ありがとう。」


 俺がそう言うと、ジェイクはぽろりと涙を落とした。


「もったいないお言葉です。

 私は殿下に誠心誠意お仕えすると誓った殿下の騎士です。当然の事をしたまで。

 お礼の言葉など必要ございません。」


「大丈夫かい?無理はするなよ。頼むから。

 ジェイクにはずっと俺の側にいてもらいたいんだ。」


 すると、ジェイクは泣き出した。


「涙は涸れ果てたと思っていました。でも、こんな嬉しい涙が私には残っていたのですね。」


 ジェイクは号泣し続けた。

 俺はジェイクの苦労や、受けたであろう心の傷を思って、その背中をさすり続けた。

 




次話から本格的に物語が進んで行きます。


いつも応援してくださっている皆様、本当にありがとうございます。

これからもセオドラとソフィア、仲間達をよろしくお願い致します。


もう1話投稿いたします。





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