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王太子の結婚 〜飲んだくれの俺が幸せを見つけるまで〜  作者: 雪女のため息
〜りんごの花びらが舞う夜〜
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1

第3章が始まります。物語は第2章、9話から続きます。


本日は2話投稿いたします。

お楽しみください。



****** ****** ******


拙い物語りを読んでいただき、いいねとポイントを入れてくださった皆様。ありがとうございます。心から感謝いたします。

「ソフィア…、ソフィア…。」


 俺の呼びかけにソフィアは何の反応もせず、ぐっすりと眠っている。白銀の長い髪は少し乱れてはいるが、怪我もなく、呼吸も落ち着いている様だ。


 寒くはないか、とソフィアの手を握ると指先まで暖かくて少しほっとした。


 何時間も閉じ込められて辛かっただろう。

 1人きりにされて怖かっただろう。

 すまない…。

 お前をくだらない権力争いに巻き込んでしまった。


 俺はソフィアの頭を軽く撫でて、額にキスを1つ落とすと、部屋の隅で控えている侍女のアリスに後を任せて部屋を出た。


 父上に執務室に急いで来い、と呼び立てられているからだ。





 月祭りの昨夜、数時間前の出来事なんだが、ソフィアに姿を変えたゾーイが、クリムドール伯爵が手にしていた毒針で刺される、という事件が起きたんだ。


 ゾーイはそのまま意識を失い、急いで医務官の元に送ったが、その後死んだ、と聞いている。


 月祭りの会場は、大騒ぎにならない様にローリーが取り仕切ってくれた。何か揉め事があったらしい…と皆が思う程度で、比較的穏やかに祭りが続いていると報告を受けている。


 暴れるクリムドールは俺の手で魔力を封じた上で拘束し、城の中にある牢に放り込んだ。クリムドールは、パール国の軍勢が自分の事を助けに来る、その時に吠え面をかくなよ、と喚いていたが、バカな奴!パール国がお前なんぞを助けに来るものか、と鼻でせせら笑ってやった。


 そして、ついさっき、俺はやっとソフィアの顔を見に行く事ができたんだ。ソフィアの無事な姿を見て俺は安堵すると同時に、ものすごく腹が立った。


 なんて事だ!

 なんでこうなるんだ! 


 靴音を荒くたてながら父上の執務室へと急ぐ俺の脳裏には、あの時の事がよぎっていた。




 2ヶ月前のあの時、父上の執務室は味方と敵の流した血で真っ赤になっていた…。俺は父上を守ろうとして…。


 くそっ!

 …あの男の顔が浮かんでしまった。


 あの時、俺を庇ったあの男は言った。


「私の死を以て、罪のつぐないに。

 ゾーイには…お慈悲を…」

 

 そして今から数時間前、ゾーイは俺にこう言った。


「この命を私の罪のつぐないに…。」

 

 なんだって言うんだよ。

 そんなつぐないなんて、いらねぇよ!

 俺はお前達に、幸せになれって言ったんだよ。

 



 俺は自分のしかめ面にも気づかないまま、父上の執務室に着いた。そこには父上とロッシュ宰相、そしてゾーイの兄であるルーク ルベール伯爵がいた。


 俺が言葉を発する前に父上がやんわりと遮ぎった。


「先ずはルークの話を聞け。いいな?」



 そうしてルークの話は始まった。


 ゾーイの未来予知の力の話、逃亡してからのゾーイとアレックスの話、2人の子の話、クリムドールとパール国の話。

 

 聞き終わった俺は、しばらく何も言えなかった。

 何も言えるわけないだろう、そんな話を聞かされて。


 光を放つ、人ではない子を授かっていただと…?

 そんなこと、信じろっていうのかよ!バカバカしい。


 予知した未来を変えるために、あの2人は俺とソフィアを助けに来た…だと?

 そのために2人とも死んだって言うのかよ!冗談じゃない。




 黙っている俺に父上は声をかけた。


「私とロッシュはゾーイの未来予知の魔力を知っていたんだ。」


 それは太古の昔に交わされたルベール家と王家との契約だった。未来予知の力を利用する事でこの国の王は国を守り、ルベール家はこの国での地位を揺るぎない物にして来た。

 

「ゾーイは未来予知の力を持っていたからお前の妻となり、未来を "見る" 事が仕事になるはずだったんだ。」


 俺は唇を噛み締め、父上から顔を背けた。


「実は、数年前からクリムドールがこの国を乗っ取る事を画策していると気づき密かに調べていたんだが、どうしても証拠が見つからなかった。


 そんな時に伯爵家にゾーイが現れた。

 ゾーイが見た未来では、クリムドールはソフィアを毒殺し、その後お前も殺害される。それを防ぎたいとゾーイは言ったのだよ。

 その上、死んだアレックスがあいつとパール国の密約の証拠も見つけていた、と言うんだ。


 それを使わない手はないだろう?

 ルークの報告を聞いて、お前が最も信頼するジェイクとローリーをゾーイの周りに付けた。予知した通りソフィアの身代わりとなったゾーイは毒針を刺され、クリムドールを断罪する証拠を明らかにしたんだ。


 これでクリムドールの件は落着するだろう。」


 それで?


「ゾーイを助けるためにありとあらゆる解毒剤を用意し、医務官のところにすぐに運んだんだが…」


 父上は言葉に詰まった。


 ゾーイは医務官の眼の前で、キラキラとした光に包まれて消えてしまった。まさかと思いアレックスを葬った墓所を開けると、アレックスの遺体も消えていた…。

 

 父上はそう言うと眉根を寄せた。


 なんだよ。それ!

 

 俺は笑いを堪えてゆっくりと立ち上がった。


「馬鹿げたお話しは以上ですか?

 でしたら、事件の経緯は分かりましたのでそろそろ失礼します。ソフィアも眼を覚ます頃でしょうから。

 クリムドールの取り調べとパール国との交渉は私が行います。王太子である私の仕事ですのでね。

 国王陛下と宰相殿には逐次報告は致します。」


 それから…と俺はルークを見た。


「ゾーイとアレックスの件も私が調べる。

 手を貸せ。いいな、ルーク?」



 父上の執務室を後にした俺は、怒りで肩を振るわせていた。

 

 誰に?

 ゾーイ、アレックスの2人ときちんと向き合い、けじめをつけなかった俺自身にだ。


 あの時、きちんと "許す" と言うか、何がなんでも捕まえて罰を与えていれば、2人はつぐないのために命を差し出す事もなかったんだ。


 それなのに、中途半端な伝言をルークに頼んでしまった。


 でもなぁ…。

 俺は…お前達にも幸せになって欲しかったんだよ。

 たとえ、腰抜けヘタレと言われても。

物語を読んでいただき、ありがとうございます。

本日は、この後もう1話投稿致します。

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