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王太子の結婚 〜飲んだくれの俺が幸せを見つけるまで〜  作者: 雪女のため息
〜私達の罪のつぐない方〜
18/73

8

本日は3話投稿致します。

よろしくお願いいたします。

 この修道院に来て2ヶ月が過ぎ、穏やかな日々が私に安らぎを与えてくれた。


 出来るなら、このままここで静かに暮らしたい。

 穏やかなマーガレット様やジリアン様、アマンダ様のお世話をしていたい。


 でも私には、まだやる事が残されている。


 王城を襲った刺客団の事件は終わったように見えているが、そうではないから。


 クリムドール伯爵は諦めていない。


 私がこの修道院に来てから見た未来では、ソフィア様があいつに襲われて命を落とす。そしてあいつは自分の娘をセオドラ様の妃にして、子供が生まれたらセオドラ様を…。


 それを防ぐのは私だけに出来る、私の使命だと思う。


 だから、私はその日が来るのを待っていた。




 

 空気がしっとりとして、暖かさを感じる夜明け前。

 

 外はまだ暗いけれど、私は自分だけの朝の祈りのために自分の小さな部屋をそっと出て礼拝堂へと歩いていく。


 音を立てないように静かにドアを開け礼拝堂の中に入ると、小さな蝋燭に火を灯して祭壇の前に跪き、夫と息子のために祈りを捧げた。


 立ち上がった私は2人に心の中で願った。


 アレックス、ゼノン。

 私を見守っていてね。やり遂げて見せるから。


 キラキラと輝く光がほんの少し見えた気がして、私は微笑んだ。




 マーガレット様のお部屋を訪ねると、マーガレット様は私が去ることを察して、悲しそうに顔を歪めた。


「ゾーイさん、行くのね。

 寂しくなるけど、仕方のない事なのね…。」


 マーガレット様は私の手を握った。


「私ね、貴女に隠し事をしていたの。

 アレックスがね、貴女がここを離れる時がきたら、本当の事を話して欲しいって言ったのよ。

 だから、私の話を聞いてくださる?」


 眼を大きく見開く私の手を、マーガレット様はぎゅっと握りしめた。


「大丈夫よ、怖い話ではないわ。

 私とアレックスの話なの。」


 マーガレット様は私に椅子を勧めて、暖かなお茶を入れてくださった。


 そして、柔らかな微笑みを浮かべながら私を見た。


「ゾーイさん、聞いてね。私とアレックスの話。


 私は夫と息子のアレックスの3人でこの村に住んでいたの。


 私の夫はね、大きな力ではなかったんだけど魔力を持っていて、それを使って皆を助けていたのよ。でも、貧乏だった。それでお金を稼ごうなんて思いもしない人だったの。


 アレックスはかなり強い魔力を持っていたから、それを使って自分で人生を切り開こうとしていたのでしょうね。この村から飛び出して行ったきり、ずっと帰って来なかった。


 どこで何をしてるんだか、便りもないし…。

 そのうち、夫は死んでしまって、私はこの修道院に入った。夫のために祈りたかったの。


 それが、2〜3ヶ月前に、母さん、元気かい、ってひょっこりアレックスがここに現れた。驚いたけど、不思議とすんなり受け入れられたの。親子だから…かしらね。


 アレックスは今までなにをしていたのかを話してくれたわ。貴女との出会いも、ゼノンの事もね。貴女の不思議な力の事も、これから起こるかもしれない事も、全部話してくれた。


 あぁ、大丈夫よ。貴女の秘密は守るわ。

 口が硬くなければ、修道女は務まらないのよ。」


 マーガレット様は私の手を取って、アレックスの言葉を話してくれた。


「母さん、俺はゾーイと一緒にいて幸せだった。

 ゼノンが生まれて、親になって、本当に幸せだったんだ。


 でも、俺は…。


 正義の味方、なんてマントを翻して人助けしてたら、気が付いたんだ。俺は騎士だって。セオドラ殿下からゾーイを奪って逃げていても、俺は騎士なんだ。胸の紋章はまだ消えていない。俺がこの国と王家に尽くすと誓った証が残ってるんだよ。


 何を今さら、って言われるかもしれないけど、俺は戦わなくてはならないんだ。敵は強い。俺が戦わなくてはこの国は乗っ取られてしまう。それが分かっていて、そのままには出来ないよ。


 自己満足な、自分勝手な言い分だってわかってる。

 でも…。


 もしかしたら、たいした事もなく終わるかもしれない。

 でも、もし、そうでない時は…。


 母さん。ゾーイがここに来た時は、助けてやって欲しい。その時は、俺はもうゾーイの側にはいてやれない時だから。

 

 そして、未来が見えるゾーイがここを出る時は、何か危険な未来を見た時だよ。その時には俺と母さんの話をしてやってくれ。そして、父上と兄上に会ってこい、と俺が言っていたと伝えて欲しい。ゾーイがここを出る時には覚悟を決めているはずだから。


 でも、ここにずっといたいと言ったなら、俺と母さんの事は言わずにいて欲しい。何も知らずにここでのんびり暮らすのも、いいと思うから。」


 マーガレット様の手が私の手を強く握った。


「母さん、親不孝者でごめんよ、って帰る間際アレックスが言ったわ。なんだか…あまりにも普通でね。私も、本当に親不孝者だわ、って言っちゃったの。もう会えないかもしれなかったのにね。


 でも、最後にちゃんとアレックスと話ができて、私も覚悟ができた。


 ゾーイさん。アレックスを愛してくれて、一緒にいてくれて、ありがとう。貴女のような優しい奥さんを持って、あの子は幸せだったわね。


 貴女の仕事が終わったら、ここにいつでも戻っていらっしゃいね。2人でアレックスの話をしましょう。


 貴女もご家族に会って、ちゃんとお話をするのよ。きっと貴女のご家族は貴女が会いに来るのを待っているはずだから。」


 さあ、これでお話は終わりよ、とマーガレット様は微笑んで私を見た。

 


 マーガレット様…。

 私のお義母さま…。


 アレックスは1番信頼する人に、私を預けてくれた。

 私を最後まで守ろうとしてくれた。


 アレックス…会いたい。


 私は何も言えなくなって泣き続けた。

 そんな私の背中をとんとんとして下さるマーガレット様の手のひらの暖かさがアレックスと同じで…涙が止まらなかった。

 




 それから、姿を消した私は伯爵家へと飛んだ。


 私がいた頃より少し寂しい感じがしたのは、お屋敷で働く人の数が減ってしまったからだとすぐに気がついた。


 私のせいね…。


 辛い気持ちを抑えて、お父様の執務室だった部屋に行くと、お兄様とお父様が何やら話し込んでいた。


 私は部屋にシールドを張り、2人に軽い拘束魔力をかけてから姿を見せた。


「お父様、お兄様。お久しぶりです。

 騒がれると困るので拘束をかけました。騒がずにお話を聞いてくださる?

 お約束してくださるなら、拘束は解きます。

 大事なお話があるの。」


 拘束を解かれた2人はそれぞれ違った反応をした。

 お兄様は私を睨みつけて、何をしに来た!と小さな声ではあったけれど怒りを露わにした。

 お父様は少し涙目になって私を見たけれど、何も仰らなかった。


「何から話せばいいのかしら…?

 話す事がたくさんありすぎて…。」


 困り顔の私にお父様が、あれからどうしていたのだ、とお聞きになった。


「そうですね、そこからですね。

 長いお話になります。聞いてくださいますか?」


 私は執務室にあるソファに腰掛け話し始めた。


 アレックスとの事、ゼノンの事、夜の巡回の事、未来予知の力を使った事、王城で起きた事。


 本当の事を全て話した。

 そして、これから起きる、私の見た未来の事も。


 2人は驚きながらも静かに聞いて下さった。


 ごめんなさい、私のせいで…。

 でも、その言葉は飲み込んで話を続ける。今は謝罪よりもっと大事な事があるから。


「月祭りの今夜、王城の庭で皆が楽しんでいるその薄闇に紛れて、クリムドールがソフィア様に毒針を刺します。あいつがソフィア様を刺すのは、3つ目の花火が夜空に花開いた時。


 セオドラ殿下と殿下の信頼する人にその場面を見てもらいたいのです。あいつが刺したその場面を、確実に、です。刺す前ではなんとでも言い訳ができますから。言い逃れできない様にしなければなりません。


 それと、アレックスが見たパール国とあいつの契約書を手に入れてください。あいつが今までしてきた事をはっきりとさせて、こんな事は終わりにしましょう。


 お兄様。

 その手配はお任せします。


 ソフィア様は大丈夫です。

 私がソフィア様に姿を変えて、そこにいますから。」



 お兄様は、お前は大丈夫なのか?と聞いた。でも、すぐに頭を振って私を見た。


「手配は任せろ。」


 お兄様は私の肩をポンとして、姿を消した。


 お兄様は私の未来予知の力を疑わなかった。

 ありがとう、お兄様。

 本人には言えなかったけど。



 執務室に残っているお父様に、私はペンダントをお返しした。


「ごめんなさい。私は勝手に未来予知の封印を解きました。

 お父様、私のこの力の使い方は正しかったのでしょうか。

 今の私にはよくわかりません。」


 お父様は私の手を握って微笑んだ。


「アレックスもお前も、正義の味方なんだろう?

 信じた道を進みなさい。

 過去は変えられないんだから、それしかないじゃないか。」


「今までの親不孝をお許しください。」


 私がそう言うと、お父様は笑った。


「不出来な娘を持って苦労した。

 でもそうなる運命だったのだろうよ。

 もう、時間だ。

 止めても行くのだろう?強くなったんだな。

 最後に何か言っておきたい事はあるかい?」


 私は、お世話になった修道院に援助を、とお願いした。


 お父様は、アレックスの、義理の息子の母親のいる修道院だ、援助するさ、と言ってくださった。


 私は立ち上がり、お父様に伯爵令嬢らしくお辞儀をした。


 お父様、いつまでもお元気で。

 その言葉は飲み込んだ。もう会えないかもしれないとお互いに分かっているのに、それを言葉にするのは悲しかった。

この後、2話投稿いたします。

ゾーイとアレックスのお話はラストに向けて進みます。

お楽しみ下さい。

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