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王太子の結婚 〜飲んだくれの俺が幸せを見つけるまで〜  作者: 雪女のため息
〜私達の罪のつぐない方〜
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2

本日、2話目の投稿です。

先に1話をお読みください。

よろしくお願いいたします。

 私はスカーレット国で建国以前からの長い歴史を誇るルベール伯爵家に生まれた。


 伯爵家の血筋なのだろうか。私は魔力を持って生まれた。そして、その中に1つ、他の人は持っていない不思議な魔力があった。


 お父様はその魔力を私が小さい頃に封じ、繰り返し繰り返しこう話した。


「お前がこの魔力を持っていると悪用されるかも知れない。誰にも知られない様に隠しておくんだ。そしてこの力はいざという時のためにあるのだと思いなさい。いいね、絶対人には知られてはいけないよ。」


 私はその言いつけを守り、その事を誰にも話さなかった。




 そんな魔力を持つ私は、子供頃にセオドラ王太子殿下の許嫁となった。


 子供の私には分からなかったけど、大人達の色々な思惑が絡んだ婚約だった事は確かな事。


 でも、子供だった私には、そんな事は関係なかった。時々お会いできる許婚のセオドラ様はとても優しくて、笑顔の素敵な方で…その笑顔を見るだけで、私はいつも幸せな気持ちになっていた。純粋にセオドラ様が好きだった。


 私が16歳になってすぐ、セオドラ様はおっしゃった。


「結婚の日まで俺は待てないよ。少し早いけど、俺のところに来てくれるかい?」


 そして、私達はその後すぐに一緒に城で暮らし始めた。

 私が16歳で、セオドラ様は18歳だった。


 大好きなセオドラ様と初めて一緒に夜を過ごした時、私は本当に幸せだった。それからはいつもセオドラ様の側にいたいと願った。手を繋いだり、キスをしたり…。セオドラ様を感じていたかった。

 だってすぐ近くにセオドラ様がいるんですもの。

 16歳の女の子なら、初めてのお相手とそうしたいと思うものでしょう?誰だってきっとあの頃の私と同じように、いつもそばにいたいと思うはず…。


 でもセオドラ様は公務で忙しく、私の相手だけをするわけにはいかなかった。頭ではわかっていたの。だけど、私は寂しくてたまらなかった。


 寂しそうな顔をしている私を見てセオドラ様は、友達を呼んだり、城の中を探検することを許可してくださった。


 そして、この国で最強の魔力を持つ騎士のアレックスを私の護衛に付けてくれた。

 私の安全のために。

 私を愛してくださっているからこそ…。




 …そこから先の言い訳はしない。


 アレックスが私の護衛となって何ヶ月か経った頃、私は優しいアレックスの胸に自分から飛び込んだ。そして、若かったアレックスも自分を押さえきれなかった。


 そして、私は子を孕った。父親がセオドラ様なのか、アレックスなのか、私にはわからなかった。


 私は結婚するまでは子を作らない様にとお父様から言われて、避妊の薬を使っていた。

 アレックスは避妊の魔力を使っていた。

 セオドラ様だってそうしていた。


 それなのに…私は子を授かった。


 アレックスがそうなるように魔力を使っんだろう?

 そう思わなかったのか?…ですって?

 アレックスが伯爵家に入り込もうと考えた…とか?

 私を脅迫して、お金を要求しようと考えた…とか?


 そんな事をアレックスはしなかった。


 そんな事をしたってアレックスに何の得もありはしない。アレックスにはあちらこちらの貴族から結婚の話が来ていたんだもの。地位だって、お金だって、私との事がなくても人が羨むほどに手にできたはずなのだから。


 孕った私はどうすればいいのか、考えられなかった。伯爵令嬢として生まれ、王太子殿下の許嫁として大切にされ、周りの皆に護られ続けてきた16歳の私に、悪知恵は働かなかった。


 せめて伯爵家にいたら乳母が気づいたかもしれない。でも、私のそばにはアレックスとの事など知るはずもない世話係しかいなかった。



 困った私がアレックスに、子ができたと言った時、アレックスはしばらく私の顔を見つめて、ありがとうと微笑んだ。


「俺にも家族が出来たんですね。

 俺は、お父さんになったんだ。」


 それを聞いて、私のお腹が、子がいるその場所が、ピクンとなった。


 アレックスは私にありがとうと言いながら、優しく口付けをしてくれた。その口付けはどんどんと激しくなっていき、私は意識が薄れ始めた。


 薄れていく意識の中で、アレックスが小さな小さな声で、さようなら、と言ったのを私は聞いたような気がした。


 私は気がついてしまった。

 アレックスのこの口付けが、別れの口付けだって…。


 アレックスが私の身体に魔力をかけようとしている。私の中のアレックスとの記憶を消し、何も無かった事にして…。そして…。


「私の大切な記憶を消さないで!

 お願い。何も無かったことにしないで。

 アレックス、お願いだから。」


 唇を離してそう言う私の背中を、アレックスは優しく撫で続けていた。


「ゾーイ殿…

 俺の事は忘れるんだ…」


 そう言いながら優しく背中を撫でるアレックスの手から、ゆっくりと魔力が私の身体に流れ込んでくるのがわかった。それなのに、柔らかな拘束が私に掛けられていて、私は抗うことができなくなっていた。


「セオドラ殿と…幸せになって欲しい。」


 だめ!お願いだから…!


「愛している。心から…。

 本当に、愛している。」


 私も…愛してるの。

 あなたを!


「ゾーイ…愛してる。

 でも…俺の事は忘れろ。

 俺なんかとでは、幸せにはなれない。

 そして、セオドラ殿と…

 幸せになってくれ…。」


 気がつくと、私の身体が暖かくなり、光に包まれていた。

 

 それは、ピクンとなった私のお腹の中から湧き出た光だった。優しく暖かな光は私を包み、ゆっくりとアレックスも包み込んだ。


 光の中でアレックスは私を見つめていた。私もアレックスを見つめた。


 どれくらい2人でそうしていたのだろう。


 アレックスが私を強く抱きしめた。


「俺達が光に包まれているのは…子が俺達の元に生まれて来たいと願っているから…なんだ。


 俺は大きな間違いをしてしまうところだった。

 俺は愛しているから身を引こうと思ったけど、それは違った。


 ゾーイ殿、俺と逃げる覚悟はありますか?

 貧乏な暮らしになります。耐えられますか?」


「アレックスがそばにいてくれるなら…。」


 私はそう言って頷いた。


 私はアレックスを選んだ。

 アレックスも私といる事を選んだ。



 バカな伯爵令嬢。

 親不孝者。

 地獄を見るぞ。


 アレックス、お前最低だな。

 クズなゲス野郎!

 恥を知れ!

 

 そんな周りの眼も非難の言葉も、その時の私は想像すらできなかった。


 でもあの時、アレックスは私にこう言ったの。

 そしてその言葉が私に力を与えてくれた。


「俺はゾーイ殿と地獄の果てまで一緒に居る。

 ゾーイ殿を手放したくない。手放さない。

 俺はゾーイ殿と生まれたくる子と共に生きていきたい。」


 私達2人は、孕るはずのない子が私のお腹に宿っている理由など、考えもしなかった。


 若いって、ほんとにバカで、まっすぐなんだ…。


 大人になった今は、少しくすぐったい気持ちでそう思う。

もう1話投稿させていただきます。

 

ゾーイとアレックスの話、続きをお楽しみください。

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