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王太子の結婚 〜飲んだくれの俺が幸せを見つけるまで〜  作者: 雪女のため息
〜私達の罪のつぐない方〜
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 第二章はアレックスとゾーイの物語です。


 本日は3話投稿させて頂きます。

 よろしくお願いいたします



 まもなく夜が明ける。


 静かに窓を開けると空には大きな赤い月と青い月が輝き、その月明かりで辺りの景色が浮かび上がって見える。


 小高い丘の上にあるこの修道院の周りにはには大きな建物もなく、ポツリポツリと民家が点在しているだけだ。その民家にはまだ灯りが見えず、しんと静まり返っている。

 

 少しづつ東の空がうっすらと明るくなり始め、鳥のさえずりも大きくなってきた。


 私は自分だけの朝の祈りのために、自分の小さな部屋をそっと出て礼拝堂へと歩いていく。


 ピンと張り詰めたような冷たい空気は私の心の隅にある熱い想いを少しだけ落ち着かせてくれる。吐く息が白く、指先がかじかんでいく。


 音を立てないように静かにドアを開けて暗い礼拝堂の中に入ると、小さな蝋燭に火を灯して祭壇の前にひざまづき、私は夫と息子のために祈りを捧げる。


 私は泣かない。

 だって2人は私を待っているのだから。



 

 外から私を呼ぶ声が聞こえた。今参りますと答え、もう一度だけ短い祈りの言葉を捧げてから礼拝堂を後にし、私は急いで宿舎に戻った。




 宿舎の台所では修道女の長であるマーガレット様が、少し困った顔で私を待っておられた。


「ああ、ゾーイさん。ごめんなさいね。

 薪が足りないみたいなの。取ってきてもらっていい?重いから少しでいいの。今日は男衆が来る日だから、後で男衆にたくさん運んでもらいましょう。」


 微笑みながら、はい、わかりましたと答えた私は納屋までゴロゴロと台車を引き、薪の束を10個ほど運び出す。


 この修道院には私の他に年老いた修道女が3人いるばかり。長のマーガレット様は穏やかなお優しい方で、いつも私の体を案じてくださる。薪の担当であるジリアン様は最近物忘れがはげしくなっているから、きっと薪の補充も忘れてしまったに違いない。もうお一方のアマンダ様は腰が痛いと寝込んでいる。


 これからも私に出来る事はなんでもして差し上げたい。これぐらいの力仕事なら、今の私にはどうと言う事もないのだから。


 この修道院には週に2回ほど、村の男衆が力仕事のために来てくれるが、なるべく自分達で出来ることはやっておきたいと思う。そうすれば、もっと大事な事を男衆にやってもらえるから。雨漏りのする屋根の修繕やボロボロの壁の塗り直しなど、手伝って欲しい事は山のようにあった。


 マーガレット様達はそんな事は考えもしていない様子で、雨が降れば、まぁ!雨漏りが…と言い、風が吹けば、隙間風に身を震わせている。


 今まで私に優しく接してくださった修道女の皆様に、少しでも快適な暮らしをしていただきたいと私は願っている…。


 でも、残念な事に、私にその時間は多くは残されてはいない。




「まあ、ゾーイさん…。そんなに沢山!

 大変だったでしょう?無理はしないでね。

 あなたの体の方が大切なのよ。」


 マーガレット様はそう言いながら、私に微笑んでくださった。その微笑みはいつも私を優しく包んでくれる。




 私がここに住み始めてから、2週間ほど経った。


 突然、空から降ってきたかの様に現れた私を、修道女の皆様は暖かく受け入れてくださった。


 何も聞かず、何も求めない…。

 ただただ、私の身体を心配してくださる…。

 そんな方達との暮らしの中で、心と身体は少しずつ癒えていった。

 

 申し訳ありません。ごめんなさい。

 全てをお話しすることはできません。


 そんなわがままを言う私に、マーガレット様は微笑んでくださった。


「大丈夫よ。

 お名前が分かってるんですもの。それで充分だわ。

 ゾーイさん、お好きなだけここで暮らしなさい。

 私達は、貴女に神のご加護がありますようにと祈る事しかできませんけど、貴女の幸せを祈りたいのです。

 あなたの幸せは、私達の幸せなのですから。」


 私は流れる涙を拭う事も出来なかった。


 それでも、何も言ってはいけない。


 あの方をお守りするために。

 それが私の…

本日は後2話、投稿させていただきます。


引き続き、ゾーイとアレックスの物語をお楽しみください。

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