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王太子の結婚 〜飲んだくれの俺が幸せを見つけるまで〜  作者: 雪女のため息
〜飲んだくれの俺が幸せを見つけるまで〜
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 第一章 最終話、飲んだくれていたセオドラ王太子が前を向いて歩いて行きます。




 評価、ブックマーク、いいね、をつけて下さった皆様、有難うございます。

 たくさんの方に読んでいただき、心から感謝いたします。






 この2年で、ソフィアは病院を出て屋敷で過ごせる時間がとても増えていた。


 コペル男爵に許可を貰い、王立医学研究所から新薬を取り寄せてソフィアの治療に使ってもらったのだけど、それがとてもよく効いたようだった。


 調子がいいと本人も言っていて、俺から見ても顔色が良くなっている。



 ソフィアが屋敷に戻っている間、俺達は3日毎に四阿で会った。そして、幸せを感じるやりたい事について、あれこれと話しをした。


 それ以外の事も、もちろん話したさ。ソフィアに俺の事をよく知ってもらいたいからね。


 

 ノートに書かれた事の内、いくつかは本当に実現することが出来た。


 まだ体が心配なので大掛かりな事はできないけど、小さな事ならできる事も沢山あった。


 

 冬の間に、植木鉢とチューリップの球根をソフィアにプレゼントしたところ、春には赤い花が1つ咲いた。ソフィアは植木鉢を四阿に持って来て、うれしそうに赤い花を俺に見せてくれた。


 それからしばらくして、花が枯れたと俺に報告した。


「球根から芽が出て大きくなり、花が咲いて枯れるところまで、わたくし、ちゃんと見ました。そしてまた1つ、幸せを感じるやりたい事が出来ました!


 来年もあの球根の花を咲かせる、です。


 庭の手入れをしている者達にチューリップの事を聞いてみたのです。そうしたら、球根が勝手に増えて来年もまた花を咲かせるのだそうです。

 とりあえずは球根を取り出して、涼しい所に置いて休憩させると良いと言われ、アリスに手伝ってもらってやってみました。

 来年はたくさん花が咲くかもしれません。楽しみです。」


 俺はソフィアが可愛くて抱きしめたくなった。





 暖かな日々の続くある日、俺はソフィアにピクニックに行こうと誘った。


 俺は前もって、離宮でピクニックの準備をしていた。


 離宮の庭にテントを張り、大きなテーブルにクリームパフ、アイスクリーム、冷えたスイカ、生チョコレート、タバスコのいっぱい掛かったピザ、バナナ、クリームブリュレ…を準備した。


 テントには寛いで座れるようにマットを敷き、長椅子とローテーブルをおいた。



 ソフィアが馬車に乗って離宮に着くと、俺は人払いをして2人きりになり、腕を組んで離宮の中をゆっくりと歩いた。そして、青空の下、2人でほんの少しではあったが走った。


 ソフィアは少し息を荒くしながら、わたくし、初めて走りました!と嬉しそうに言った。頬を薔薇色に染めるソフィアは、本当にかわいく、愛おしかった。


 テントが見えるところに着くと、ソフィアは眼を丸くした。


「セオドラ様、これは…!」


「ソフィアが食べたいと言っていたものをできる限り集めてきた。ほら、これがシュー ア ラ クレーム、クリームパフだよ。」


 ソフィアは眼を爛々と輝かせている。


「セオドラ様、わたくしのために…。ありがとうございます。とても、とてもうれしいです。」


 長椅子に座り、俺はソフィアの様子を見ていた。


 ソフィアは顔を輝かせて色々なものを皿に取っている。


「おいおい、無理して全部食べるなよ!一口づつだ。」


「セオドラ様。わたくしも17歳になりました!

 充分大人でございますので、食べられる分量ぐらいわかると思います。多分…ですけれど。」


 ソフィアはそう言うと、ニコッと笑って俺の隣に腰掛け、クリームパフをナイフで切って、いただきますね、と食べ始めた。


「そうか…大人になったんだ。…だったら、これぐらいはいいだろうか…」 

 

 そう言って、俺はソフィアの顎を少し上に上げ唇を重ねた。クリームパフの味のする、甘い甘いキスだった。


 するとソフィアはしばらく黙った後で、眼に涙を溜めた。


「…セオドラ様、ひどいです。」


「は、早すぎたか!すまなかった。」


「…いいえ…。

 わたくしの '幸せを感じるやりたい事' に、いつの日にか書こうと思っていた事が…書く前に叶ってしまいました…。」


 俺は微笑みながらソフィアの肩を抱き、頬にキスした。




 しばらくして、少し疲れた様子のソフィアを長椅子に寝かせて、寒くないようにブランケットを掛け、膝枕をした。少し寝るように、という俺の言葉に頷いたソフィアは、しばらくすると静かな寝息をたてた。


 白銀の髪を三つ編みで一つに纏めて、瞳の色と同じすみれ色の小さなリボンをつけているソフィアは可憐な少女の様であり、しっかりとした自分の意思を持つ大人の女性のようでもあった。


 その寝顔は俺を信じて安心し、穏やかな幸せに満ちている様に思えた。




 目覚めたソフィアに、俺は温かい薬草茶を淹れて勧めた。それぐらいなら、自分で出来るようになったんだ。

 ビクターとアランに特訓してもらったんだけど、お上手でございますなどと言われ、ちょっと嬉しかった。



 座ってお茶を飲むソフィアに俺は聞いた。初めて会った時、俺に幻滅しなかったのか、って。


 するとソフィアはこう答えた。


「あの時、わたくしは幻滅などしませんでした。

 ただ、セオドラ様がとても辛いお顔をしていて、悲しい方に見えました。何かあったのだな、それで自暴自棄になっているのだな…。それなら、わたくしと楽しい事をたくさん見つければいい、そう思ったのです。


 辛く悲しい思い出は忘れようと思っても、忘れられません。忘れようとすればするほど思い出し、辛くなるのです。


 わたくしが子供の頃がそうでしたから…。


 辛い事が多いなら、楽しい事で頭を一杯にしよう。そうしたら、辛く悲しい事は頭の中でどんどん小さくなる。わたくしはそう思って楽しい事をたくさん考え、今まで過ごしてきました。


 だから、セオドラ様にも幸せを感じるやりたい事を1つでも見つけて欲しかったのです。」


 ソフィアは俺の手を取り、微笑んだ。


「あの頃よりちょっと大人になった今、わたくしはセオドラ様とゾーイ様の間に何があったのか、少しだけ知っています。


 セオドラ様。

 ゾーイ様の事、無理に忘れようとなさらないでください。ゾーイ様との楽しい思い出を大事になさってください。ゾーイ様と過ごした時間はセオドラ様の宝物のはずです。


 そして、わたくしと一緒に楽しい事をたくさん、たくさん見つけてください。ゾーイ様との楽しい思い出より、わたくしとする楽しい事で頭がいっぱいになるように…。」



 しばらくして、あ!とソフィアは言った。


「わ、わ、わたくし、何と言う事をセオドラ様に言ってしまったのでしょう。ど、どうぞ、お許しください。今の言葉はどうぞ忘れてくださいませ。子供の言った、たわいもない戯言でございます。」


「…あれっ?ソフィアってさ、17歳で充分大人…なんだよね?

 …だから…許さないよ。」


 そう言うと俺はソフィアを抱きしめた。


「ソフィア、俺と結婚して欲しい。2人で '幸せを感じるやりたい事' をたくさん叶えたい。

 こんな男ではダメだろうか?」


 わたくしで…よろしいのでしょうか?とソフィアは小さな声で言った。


「わたくしは…こんな体です。セオドラ様の子がなせるか、わかりません…。わたくしは、セオドラ様のそばにいるだけで幸せなのです。結婚しなくても。」


「いや、ソフィアじゃなきゃだめなんだ。子供なんて、できなくったっていいんだよ。ソフィア、お前とこれからの人生を共に歩いていきたい。幸せにする。俺の事も幸せにしてくれ。」


 ソフィアは体を震わせた。


「セオドラ様…ありがとうございます。もし、許されるなら、セオドラ様の…妻になりたいです。ずっとおそばにいたいです。」


 ソフィアはそう小さな声で言った。




 俺とソフィア、2人の '幸せを感じるやりたい事' には二つの事が書き加えられた。


 結婚する事

 いつまでも一緒にいる事




 それから程なく、俺とソフィアの婚約が発表された。国中が喜びに溢れた。



 

  

 最後に…。


 心に残っている事に、どうしてもケジメをつけたかった俺は、ゾーイの兄、ルークを密かに城に呼び寄せ、ゾーイとアレックスに伝言を頼んだ。


 あの2人の居場所をご存知だったのですか?と驚くルークに、俺は軽く頷いた。


「すまなかったな。なかなか言えなかったんだ。」



 頼んだ伝言は紙には書いて渡したりせずに、口頭で1回だけ言うように、とルークには頼んだんだ。まあ、何回も噛み締めて聞くような事でもないからね。


 伝言はこんな感じにした。



「私は妻を娶る事にした。


 ゾーイ、アレックスそして私の間の出来事を知っていて、その上で私を信頼し愛してくれる女性だ。私もその女性といると幸せな気持ちになる。

 これからは2人で、ゆっくりと前を向いて進んでいこうと思っている。


 自分が幸せになれば、ゾーイとアレックスの事も、ああ、そんな事もあったなと、笑える様になるだろう。2人に対する愛も憎しみも、きっと心の片隅に押しやられるに違いない。


 アレックスの指名手配は解除した。

 お前達2人も幸せな人生を送れ。

 

 ゾーイ、アレックス。

 2人に神のご加護が在らん事を願っている。」


 

 その時の2人の反応なんかは俺に言うなよ、とルークには厳命した。




 

 そして、今日。


 俺はソフィアと結婚する。


 純白のドレスを着て、白いベールを被った17歳のソフィアは美しかった。瞳の色と同じすみれ色の花をあしらったブーケを手に、白銀の髪を肩に垂らして薄く化粧をしていた。


 俺の王太子の正装姿を見て、ソフィアは頬を薄く染めて小さな声で俺に言った。


「セオドラ様。今日のお姿、とても素敵です。」


 俺もソフィアに言った。


「綺麗だよ、ソフィア。」


 城のバルコニーに2人並んで立つと、皆の歓声が上がった。俺はソフィアの唇に自分の唇を重ねた。


 2人で幸せになろう。


 これから俺は、振り返らずにまっすぐ前を見て進んでいく。そして、小さな幸せを積み重ねて行くんだ。


 俺はそう心に誓い、ソフィアを抱きしめた。


            完

 

 セオドラ王太子とソフィア嬢。

 いつまでもしあわせに!



 そして、読んでくださった皆様。

 ありがとうございました。


 Merry Christmas!


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― 新着の感想 ―
[一言] 一度引っ捕らえてぶん殴る位は許されると思うけどなぁ
[一言] >ゾーイとアレックス  まぁセオドラは何もしないとしても、国としては要注意扱いだろうな・・・少なくともこいつらの血統(魔力高そう)は城や国家運営に関わるとこに入れることはないだろう。(前科が…
[一言] 面白かった。 一人の男が最終的に前に進めるようになったのは素直に良かった。 ただゾーイとアレックスになんのお咎めもないのは納得いかない。主人公の心を壊してるし、国にも損害を与えてるから罪に問…
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