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33・【ロゼ視点】今一番会いたい人

おはようございます。

本当に、ばらつきが…読みづらかったら、申し訳ありません。

本日は約3000字、明日は約7000字になる予定です。

楽しんでいただけますように! 


 土砂に流され滑り落ちた先には、大きな空洞があった。


 思いの外打ち付けていたようで、痛みに軋む体を何とか持ち上げる。

 髪は乱れ、顔も身体もすべてから砂の香りがして、ゴホゴホと乾いた咳が出る。座ったまま、辺りを見回すけれど、暗くて何も見えない。どうしよう。何が起きたんだろう……。地面に触れるとひんやりと冷たい。雨が降った後に乾いた土みたい。ふと、腰に付けた鞄の存在を思い出す。中には、光の魔晶石が装填された筒を持ってきた。魔力を込めれば、明かりが灯り視界が開ける。



「……なに、これ…………」



 呟きが、木霊する。仄かな明かりで見る中は、まるで鍾乳洞のようにも見える。自分が来たであろう方向に目を向けると、壁にも近い急な坂があり、転がって来たであろう真上の方に真新しい土に埋もれた空間を見つけた。薄くなり、緩んだ地面が崩れ、生き埋めになるところ、この空洞に体が滑り込み助かったようだ。


 ひとまず立ち上がると、風が吹き、ブォオオオオオオオ……と不気味な音が立つ。この空間そのものが息づいているような、何かとてつもなく大きな生き物に食べられてしまったような、そんな気持ち。


「……出口を…………」


 探さなきゃ。勇気を出す為に声を出してみたけれど、恐怖で、声も指先も小刻みに震えてしまっていた。辺りを見回すと、まずは放り投げられた弓を見つけた。自分の物を見つけると、それだけで少しほっとする。拾い上げ肩に掛け、灯りを掲げて土砂の近くを探せば、弓の入った筒も見つけた。けれど、壁の上の方にで埋まっていて、とても届きそうもない。諦めて進もうかと見回せば、また暗がりに一本だけ土にまみれた矢を見つけ、拾いに行く。しゃがんでそれを拾っていると、チキチキチキチキと不可解な音が聞こえてくる。


「誰っ?」


 思わず声を出し音の方を見るが、姿は見えない。何だったんだろう。そう思った時、足に痛みを感じた。


「……っ!」


 ジュッと音が聞こえ、近くの土が溶けた気がした。何者かの攻撃を受けたことはわかり、目を凝らすと、暗闇の先に黒く動く無数の生き物の存在を感じた。ゾワッと鳥肌が立つと同時に、反対方向へ走り出す。暗闇に目が慣れてきたと言っても、暗がりは暗がりだ。手に握るわずかな光だけを頼りに足を運ぶ。後ろから迫るチキチキチキチキという不気味な音から逃れる事だけを考えて足を動かす。


 曲がり角にぶつかるたびに手探りで方向を変え走る。先程の攻撃は毒だったのかもしれない。足が燃えるように熱く、そしてズキズキと痛む気がする。弓矢を構える暇もない。


 どうすれば。どうしたら。普段から走り込んでいたお陰で、呼吸の運び方は心得ていた。それでも、数分そんな状況を続ければ、限界が近いのが分かる。息が苦しい。心臓が、肺が破けてしまいそう!


「きゃっ……!」


 少し足が弱まったところで、今度はばっと視界が明るくなり熱を感じた。暗がりの中の魔獣が、火球を放ってきたんだ。また、ボッと炎が灯るのを感じ、それを避ける様に体を屈め、また速度をあげて全力で走る。私の花の魔法では、イリーナ様みたいな防護壁は作れない。植物の根も見当たらない。どこもかしこも、同じ景色に見える。すると、目の前の地面が急になくなった。「きゃあ……!」と声を出すと、坂道だったようで、転がるように落ちていく。


 

 痛みに耐えながらも起き上がり、這うようにして後ろに下がる。ふと、自分の下に何か冷たいものがあるのに気が付き、漸く状況がわかった。


 ()()に、誘導されたのだと。


 

 手の下には、土に埋もれて白骨化した魔獣の躯があった。ここは、きっと餌を処理するための場所。そう思い至ると、ゾッと鳥肌が立つ。

 

 その間にも、ワサワサワサと追いかけてきた魔獣が少しずつ距離を詰めて来る。

 苦し紛れに、手に持っていた明かりを腰のベルトに差し、弓矢を構えて一番近くの魔獣に向けて放った。すると、矢は風の魔晶石の力を受けて空を切る音を鳴らしながら敵を襲い、2、3体、ピギェという声をあげてひっくり返る。敵も生きるために真剣なのだろう。それを受けて、動きが少し慎重になった気がする。

 

 ジリジリと後退するごとに、敵も近寄ってくる。目を凝らすと、どうやら蟻のような姿の魔獣――マグマアントだとわかった。だとしたら、最初に放たれた毒の効果は、麻痺や麻酔に似た性質を持つ筈だ。

 毒を持つ個体は、一集団に一匹から二匹と多くない上、一度放つと装填まで時間が掛かると学んだ。つまり、後は肉弾戦。

 

 手元に残っているのは、弓の部分だけ。キッと敵を睨みつけ、弓を剣のように構える。いくら肩で荒く息をしても、一向に整わない。体中が痛い。でも、こんな所で、儚くなるなんて信じたくない。諦めたくない。


 ぼおっと、何体かのアントの口元に火が灯った。そうか、火もあったんだ。それを放って焼いてしまおうと言うのね。避けられるかしら……。


 頭がくらくらしてきた。掠った毒の成分が、全身に回り始めたのかもしれない。

 弓を持つ手の感覚も、遠のいていく。残されたのは、身体の内に巡る魔力だけ。


 こんなものが、何になるんだろう。ここにきて、じわっと瞳に涙が滲む。


 レオ様……。


『……花を出す能力は本当に()()なのか? 俺はそうは思わない』


 

 何でもいい。お願い、何か起こって……!


 数体のアントがボッっと炎の球を放ったのとほぼ同時。わたくしは、弓を落とし手を組み、まるで祈るように跪いて魔力を放つ。腕のソーサリーワンドが呼応して光り――そして、声が耳に届いた。



「ロゼっ!!!」



 逞しい低い声に反応して目を開くと、ぶわっと、肉厚の大きな無数の花びらが自分にぶつかり散らばった。何が……起きたんだろう。放たれた筈の炎の熱は、一向に届く気配がない。それどころか、目の前に迫っていた数多のマグマアントが、瞬きの間に次々と殲滅されていく。もう、彼らの意識がわたくしに向いていない事だけはわかった。視覚が追い付かないまま、空気を切る斬撃とピギィァという力ない声、地面に叩きつけるような音が数秒間鳴り響き、後に静寂が訪れた。


 ザッザッという土を踏み歩く音が近づいてきて、誰かが隣にしゃがみ込む。ボワッと光の魔晶石が目の前で灯され、明かりに浮かび上がってきたのは……今一番会いたい人だった。



「……大丈夫か!?」


 わたくしは、数秒間固まり、じわじわと無事を実感すると共にポロポロと涙を零し、こわばっていた表情をふにゃっと緩め、最後は目の前の大きな体に腕を伸ばした。泣き顔を見られたくないという気持ちもあったし、本当に怖かったという事を知って欲しい気持ちもあった。とにかく、安心したかった。しがみ付き、言葉もなくしゃくり泣いていると、レオ様は、わたくしの体をしっかりと抱き留め、ほっとしたように息を吐き、大きな手で背中をさすってくれた。


「……ああ、よく頑張ったな。もう大丈夫だ。もう、大丈夫だからな」


 

 わたくしは、暫くそのまま泣き続けた。

貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。

読んでくださった皆様に、素敵な事が沢山ありますように(。>ㅅ<)✩⡱


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