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『青春はゲームじゃない』  作者: いろは菓子
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50話 「恵まれた才能」

「鍛えるってどういう事?」


 はてな先輩が、そう尋ねる。


「そのままの意味です。俺は、今のままじゃどうしようもなく弱い。それが嫌というほどわかったんです。でも――はてな先輩の言う通り、才能があるって信じたい、期待に応えたい‥‥!」


 言っていて、胸が熱くなる。

 情け無いことを言っている自覚はある。自分の力でどうにかするんじゃなく頼って強くなろうだなんて。

 だが、それがどうした。

 そんな事を気にしていられるほど俺に才能はない。

 泥臭く、出来ること全部やる。


「もう穴だなんて言わせない。そのために――力を貸してくれませんか‥‥!」


 言い切ったと同時に静寂が流れる。

 自分の鼓動だけがうるさく早鐘を鳴らしている。

 言いたい事は言った。

 これでどうなってもいい。


「次は――負けないで。私ももっと強くなる。」


 深く息を吸い込み、そう力強く、はてな先輩は言う。

 負けないで。その言葉の重みに、胸にずっしりと重りをつけられたような感覚になる。

 もう一度信頼してくれたって事だ。


「勿論!なんたって、はてな先輩の相棒ですから!」


 そうだ。俺はこの人の相棒。

 こんな凄い人に認められているのに、ただの凡で終わっていいはずがない。やれる事全部やって必ず追いついて見返してやる。


 と、はてな先輩の手が顔を隠しているフードにかかる。


 パサッ。


 フードが取られ、中からあの綺麗な黒髪ロングと端正な顔立ちが露わになる。

 突然の事で思わず動揺する。確かに今ここには二人しかいないがどうして急にフードを取ったんだ?


 心臓に悪い。あんなにまじめに話した後だっていうのに、俺はなんでこんなに不純なんだ。

 こんな完璧美少女、何度見ても慣れない。


 その顔には、見慣れた笑顔が浮かんでいる。

 この人の笑顔は見た人も思わず笑顔にさせるような華がある。安心させられるし、ずっと見ていられる。


「変な事言ってごめんね、もう大丈夫。元気になったよ。」


「それは、良かったです。」


 あんな暗いはてな先輩見てられなかったしな。元気になってくれて本当によかった。


「でも、具体的にどうするの?出来る事ならいくらでも協力するけど、何をしたらいい?」


 確かに。あまり具体的なところは考えていなかった。

 今までも一応、アドバイスを貰ったりといった事はたまにしてもらってたりはしたんだよな。

 何を変えたらいいんだろうか。


「えっと‥‥タイマンしたりもっと二人での連携を鍛えるような練習をする、とか?」


 はてな先輩が苦笑する。


「決めてるわけじゃなかったんだね。でも分かった!二人での連携を増やすのは私も必要だと思う!」


 よし!同意を得れた。


「それじゃあ早速ですけど、今日の試合の反省をしたいです。俺のどこがダメでしたか。」


 その質問を聞き、はてな先輩は難しそうな顔を浮かべる。

 そんなに言いづらい事なんだろうか。

 確かに、人に欠点を伝えるというのはあまり気持ちのいい仕事では無いが。


「そうだね、反省はしないと。どこから行こうかな。」


 どこから行こうって、そんな沢山あるのか。覚悟はしているが凹むな。


「クロ君の、他の人より優れている所はどこ?」


 質問、か?俺の他の人より優れている部分。

 自分で言うのは自惚れているようであまり気持ちのいいものではないが‥‥。


「俺は‥‥反射神経と動体視力ならかなり自信があります。」


 実際はてな先輩から誘われた時もこの武器が理由だったしな。

 これを買われたと言っても過言じゃない。


「そうだね、私もそう思う。クロ君の目は特別性でそれは私よりもいいものを持ってると思う。でも、だからこそ――その目に頼りすぎで上手く使えてない気がするな。」


「どう言う、意味ですか?」


 目に頼りすぎ?確かに、使いこなしているとは思わないがそんなにダメだろうか。

 はてな先輩以上のものを持ってるのにも関わらずその程度?みたいな話だろうか。


「言ったとおりかな。クロ君は目に頼りすぎてる。思い出してみて、今日の戦いを。」


 頭の中にリョーマとエトの二人を思い出す。

 早すぎるエトの動きは目で追いかけるのがやっとで凌ぐのがギリギリだった。

 その影から飛んでくる、急所を狙い澄ましたリョーマの一撃。どうするのが正解だったと言うんだろう。


「クロ君は、目が良すぎるから全部見てから避けてるんだよ。気づいてる?」


 頭にはてなが浮かぶ。

 見てから避ける。当たり前じゃないのか?


「えっと、そういうものじゃないですか?」


 見ないと避けれないだろ?どこにどんな攻撃が飛んでくるか分かっていなければ対策のしようもない。

 何か間違っているだろうか。


「普通の人はあのスピードでとんでくる剣を正確には見れないよ。目が良すぎるあまり、クロ君は反応が遅れてる。そうじゃない?」


 確かに、そう、なのか?

 あまりピンとこない。


「私の話だけど、私はきっと、クロ君ほど正確に攻撃が見えてる訳じゃないの。でもクロ君以上に上手く攻撃を捌ける。それは、相手の動きをしっかりと予想して、次にどう動くか体の動きに注目してるから。クロ君はなまじ見えすぎるばっかりにそれを当てにして、動き出しが遅れてる。心当たりない?」


「言われてみれば‥。」


 確かに俺は読み合いの一切を放棄して相手の動きに対して後出しで対応するといった動きをよくしている。

 それをはっきりと言い当てられたのだ。


「悪いとは言わないよ。凄い才能だしね。でもそれで通用するのは普通の相手。普通じゃない強敵には‥‥その無駄が大きなハンデになってる。」


「‥‥‥」


 説得力が凄い。確かに言っている意味はわかるのだ。

 見てから動き出すのと予想して動くのどちらが早いかなんて考えるまでもない。

 でも、そんな簡単に出来たら苦労ない。


「だから、クロ君にはもっと戦闘経験を積んで欲しいかな。その目は正しく使えば、もっと化ける事が出来ると思う。」


 強くなれって事か。はてな先輩には敵わないなほんと。


「分かりました。」


「うんっ!」


 はてな先輩は満面の笑みで微笑む。















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