47話 「表彰台」
「優勝おめでとうございます!!圧巻のプレイでした!!」
ステージ上に置かれた表彰台の上でリョーマが代表して前に進み、フロップから金に輝くトロフィーを受け取る。
その様子に、観客から盛大な拍手が送られる。
下を向くことなく堂々と前を向き、歓声を受ける様は、正に優勝者に相応しいものだ。
そんな様子を、俺たちは表彰台の一段下。2位の段で唇を噛み締めながら見守っていた。
誰も何も言わない。ただ、フランダルに向けられた歓声に黙って身を委ねるのみだ。
皆が何を考えているかは分からない。だが、その内心は深夜と大きく違わないだろう。悔しさに満ちている。
一歩違えば、あそこにいたのは俺達だったはずなのに。
そんな気持ちをぐっと堪えていると表彰式はいつの間にか終了していた。どんな会話があったのかはあまり記憶がない。
俺達は、人もまばらになって来た広場で解散する事もなくただ突っ立っていた。
「‥‥初出場で、準優勝まで来たんです。まずは喜びましょう、ね?」
ついに沈黙に耐えかねたかのようにツキノが口を開く。
「‥‥‥」
だが、それに言葉を返すものはいない。そんな状態に気まずそうにツキノが目を背ける。
俺達は負けた。全滅による敗北ではなく、防衛物の奪取による敗北。俺が死んではてな先輩が動けなくなった時にはもう既に決着はついていた。
時間を稼がれてしまっているから、もっと早くこちらを片付けるしかなかったという訳だ。
だが、そんなに上手く立ち回れる自信がない。俺にはどうしようも出来ない。
負けるべくして負けたと言えるだろう。
冷静になった今なら分かる。俺は挑発されてまんまとそれに引っかかった間抜けだ。勿論、あの挑発が本心でないという訳ではないだろうがそれでもあれはあからさますぎる。
「すまん。俺達が拠点をちゃんと守れれば‥‥。」
信彦が申し訳ないというように頭を深々と下げる。
「私も、ごめん。もっと上手く立ち回れていれば良かったんだけど。」
それに続くように伽耶も頭を下ろす。
後ろの状況は、深夜とはてなには伝わっていなかったが、直接の決め手となった防衛物の奪取に至る過程で、信彦と伽耶は殺されていたのだ。
「二人がそんな謝ることない。作戦を出したのは私だし、仕留めきれなかった。やれる事はやってた。」
そんな二人を庇うようにツキノがフォローに入る。
後ろは後ろで壮絶な戦いがあったのだろう。そのメンツで押し切られるなんてよっぽどだ。
「俺だって、死んでそっちのカバーに行けなかった。悪い。頭を上げてくれ。」
このお通夜のような空気。試合前とは天と地ほどの落差。
ここまで短時間で人は変わるものなのか。騒ぐ気分になれない。
ようやく二人が頭を上げる。だが、その顔には未だ申し訳なさが浮かんでいる。納得出来ないのは俺も同じだ。
あんな無様に敗北して、よくも恥ずかしげもなくはてな先輩の前に立てた物だ。神経だけは図太いらしい。
「――ごめん、私一旦落ちる。」
今まで無言を貫き通していたはてな先輩がようやく口を開いた第一声。だというのに、いい終わった直後、その姿が消える。
呼び止める暇すらなかった。最速のログアウト。
いつも明るいはてな先輩が、何も説明せずに、お疲れ様とも言わず消えていく。それだけで、どれだけショックを受けたかを図るには充分だ。
息が詰まる感覚を覚える。俺達の。いや、俺のせいだろうか。
もしそうでも何もおかしくない。はてな先輩は充分すぎる活躍をしていた。あれが俺でなく、はてな先輩が二人で戦っていたのならきっとあの戦闘も余裕だったのだろう。
それがこんな足枷だったばかりに敗北して優勝を逃して。悔しいに決まってる。
恨みたくもなるだろう。そうされてもおかしくないだけの理由がある。
だってはてな先輩は完璧だったのだから。
暗くどんよりとした空気感。それを、ツキノはただ気まずい気持ちで見守っていた。
真剣勝負であるからこその本気の反省会は、これが初めてではない。本気でやっているからこそ熱くなるしそれで負けた時の落差に苦しむ。
まさに今、その状態なのだ。ただ、今回は全員が全員自責の念に苛まれている。
矛先を人に向けないのはえらい事だがその空気感は最悪。とても元気に喋れたものじゃない。
私だって悔しい。今まで自分が上位チームで戦ってきた事についてのプライドがある。それが今回は目立った活躍をしてあげる事が出来なかった。
せめて、もう少し粘れていれば。なんて後悔が湧いてくる。
「でも、本当に凄い。いきなり準優勝なんて普通は取れるもんじゃない。もっと自信を持っていい結果だよ。」
そう励ますが、皆の顔は暗いままだ。これは相当来てるな。どうしたものか。




