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『青春はゲームじゃない』  作者: いろは菓子
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43話 「鉄壁」

 向かい合う8人。バチバチと火花が散っているのが見えてくるかのような緊張感がその場を支配している。


 そんな沈黙を破るのは魔法の詠唱。


 最初に仕掛けるのはこの場で唯一の範囲攻撃であり遠距離攻撃手段を持った伽耶。

 スピードよりは威力に寄せた魔法。余裕を持った詠唱に合わせ、巨大な炎球が頭上に出現する。

 それを敵が回避するように広がることで本格的に戦いがスタートした。


 爆発が終わり、別れた所でリョーマとエトの二人VSはてな先輩と俺のコンビ。信彦と伽耶VS大盾タンクとクール女性剣士という構図が出来上がる。


「さっきも言ったろ?お前らの相手は俺達だよ。」


 そう言って、俺に向け勢いよく飛び込んできたリョーマの一撃をはてな先輩が横から受け止める。ナイスカバーだ。


 どうやら俺達を行かせる気はなく、とことん相手してくれるらしい。でも、2対2ならこちらも臨むところだ。受けて立とうじゃないか。

 はてな先輩も同じような考えなのだろう。戦いたくてうずうずしてるようにも見える。この組み合わせなら負ける気がしない。

 あちらは信彦達に任せておけばいいだろう。

 俺達はリョーマとエトに集中できる。


 燃えるような赤髪と深い青髪の双極の組み合わせ。向こうも随分と様になっている。

 俺たちよりも経験豊富なのは間違いないし、こんな状況もきっと初めてじゃないんだろうな。落ち着いてると言った印象が強い。


 さっき見た映像で、この二人の戦闘能力もある程度はわかっている。

 性格無比で隙を見せないような綺麗な剣筋。加えて、まだ余力を残しているように見えたリョーマ。

 そして、流れるような動きで敵を翻弄し、スピードでヒットアンドアウェイを繰り返すエト。その戦闘スタイルはどちらかと言われれば俺に近い戦い方だ。通じ合うものがある。


 こちらは短剣二人組に対し、相手は長剣2本。リーチ差は向こうの有利だ。

 二人とも只者じゃないのは分かっている。最初から真剣にやらないと。


『はてな先輩、どっちとやりますか?』


 どちらの相手をしたいのかと、目と思念で問いかける。


『じゃあ私が、リョーマを貰おうかな。こっちは私がやった方が良さそう。』


『了解です。』


 リョーマの本気は確かに不安要素だった。俺が相手するよりもはてな先輩の方が安心だろう。はてな先輩であれば、何か起きたとしても絶対何とかしてくれるという安心感がある。


 話し合いも済んだ所で、勢いよく先手を仕掛ける。

 体重を乗せ突き出した剣はエトにしっかりと受け流されるが、体勢は崩されていない。すぐに立て直し、追撃を仕掛ける。

 その横でもほぼ同時に、はてな先輩とリョーマの剣を打ち合う音が響き始めていた。



 ◆◯◆◯◆


「はっ!ほんとにかてぇ!よくやりますね!」


 その信彦の言葉に、伽耶も全く同じ感想を抱いて居た。


 2対2に分散してから、あれやこれやと攻撃を試みているのだが、その全てを大盾に吸われているのだ。

 まるで巨大な壁のごとく、その守りはまさに鉄壁。


「そう言ってもらえると、タンクとしてはありがたい限りだよ。」


 ここで初めて、タンクの男が口を開く。その声はとても優しげで人を和ませるようなそんな雰囲気を感じさせる。


「うちのタンクは優秀だからね。君達も今日が初めてのチーム戦なんだって?末恐ろしいね。」


 そう言うのは、大盾の横に立つ長身でクールな印象を覚える白髪の女性。凛とした声色は聞いた者を思わずビクッとさせるものがある。


「それはどうも。でも、このまま負けるわけにはいかないので、突破させてもらいます!」


 と、口では自信たっぷりに言うものの、その伽耶の内心は焦って居た。


 どうやったらあの大盾の防御を抜けられるの?

 女性の方を狙ったとしてもすぐに逃げられて結局届かないし、かと言って正面からじゃ全部受けられる。

 武田くんも頑張ってるけど、それだけじゃ相手の厚みを超えられない。攻め手に欠ける。

 このままじゃまずい。


 一方、信彦は冷静にこの状況をどう切り抜けるかを思案していた。


 ただ闇雲に突っ込んでも効果がないのはもう充分にわかった。だとするなら、ちゃんと作戦を立てるしかない。

 考えろ。同じタンクとして嫌な事はなんだ?そこにヒントはあるはずなんだ。


 今までの経験をもとに思考を巡らせるが、あの盾を突破できるほどの名案などすぐには浮かばない。

 俺にもっと頭があれば、と後悔するがないものをねだっても仕方ない。


『サヤ、何かいい手はある?』


『今、考えてるけどダメ。まだ何も浮かばない。』


 木南さんも案なしか。だったら、とりあえず時間を稼ぐしかない。


 構えて居た盾と剣を下ろし、話しかける。


「二人のお名前、聞いていいですか?俺の名前は彦丸。こっちがサヤです。」


 相手は何も答えてやる義理はない。だが、これを無視して戦おうとするようなタイプでもないように信彦には思えた。


 男は、一瞬眉をひそめるがちゃんと返事を返してくれる。


「俺の名前はトオル。彦丸にサヤか。覚えておくよ。」


 それを聞き、面倒臭そうに銀髪の女性も返してくれる。


「私の名前はシオン。戦いの最中に自己紹介だなんて随分と余裕だね、彦丸くん。いい作戦は決まった?」


 ああ、くそ。やっぱり時間稼ぎはバレてるか。まだ何も浮かんでねーよ。

 だが、それでもきちんと返してくれた。それだけで充分だ。


「あはは、分かってたのに優しいですね。良かったらもっとお喋りしません?」


「悪いわね。私達もそんなに悠長にしてる暇はないの。」


「ですよねー。」


 これ以上軽口を続けるのは無理そうだ。

 ふう、と息を吐き出す。策がなくてもやるしかない。

 地力でなんとかする。


 気合を入れ直し、装備を力いっぱいに構え直した。


















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