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『青春はゲームじゃない』  作者: いろは菓子
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39話 「各個撃破」

『それでは、長らくお待たせ致しました!準決勝!ただいまスタートです!!』


 より一層熱のこもった実況になっている。フロップのテンションも急上昇。準決勝ともなれば注目度もそれなりのものだろう。俺達の実力のお披露目と行こうじゃないか。


 吹き抜ける風が頬を撫でる。

 いざ始まるとなると緊張してきた。でも、俺達ならやれるはずだ。気合を入れろ。


「それじゃあ作戦を伝えます。敵の編成は、アタッカー3、マジシャン1、スナイパー1の組み合わせでこちらと似たような編成です。基本は今までと同じですが、今回はスナイパーがいるので射線には気をつけてください。私が何とかするのでみんなは他を頼みます。」


 そのツキノの指示にみんなが頷く。

 スナイパーが相手にいるのか。迂闊に直進出来ないな。

 俺の反応速度なら見てから避けれない事もないだろうけど、用心するに越したことはない。


「じゃあ、とりあえずいつも通り私とクロ君で前に行ってくる。ツキノちゃんは敵の人数把握任せたよ。」


「分かりました。」


 各々の初動の動きが決まった。

 俺達は今まで通りの動きで、状況次第で信彦達がカバーに入れるような形だ。


「じゃ、行ってくる!」


 迷うことなく一直線にはてな先輩と共に、森を駆ける。

 高速で左から右へと景色が流れていく。一瞬で目まぐるしく変化する風景に気を配るような余裕はなく、まっすぐ前だけに集中する。

 どこから奇襲が来るか分からない。注意しておく必要がある。


『気をつけてください、敵拠点に誰の姿も見えません。恐らく全員で前に出てきてます。今、サヤ達がカバーに向かってるので、交戦したら引き気味で耐えて合流を待って。スナイパーはもう補足してるので私が何とかします。』


 スナイパーについては。、じゃあもう心配いらないって事だな。近距離だけに集中出来る。

 マップを見れば、後ろから信彦達が追いついてきているのもわかる。まだ時間はかかる。合流するまで本格的に戦うのはよした方がいいだろう。


 一足先に俺達は、中央のバフ拠点へと到着する。

 まだ、相手チームは来ていない、か。でも拠点の確保は出来ない。

 拠点を確保するには一定距離以内に敵がいない状態でクリスタルに触れることが条件なのだ。

 ただ、流石にその範囲内にはもう入っているだろう。こんなふうに――。


 森の影から姿を現したのは敵プレイヤー四人組。立花さんの情報通りだな。スナイパーは今、立花さんが正面からぶつかり合っている最中なのだろう。遠くで戦闘音が聞こえる。


 四人組のリーダー格らしき眼鏡をかけた剣士が話しかけてくる。


「君達の試合は僕達も見させてもらったよ。中々やるみたいだね。だから少々、作戦を立てさせてもらった。悪く思わないでくれよ!」


 そう言うと同時に、栗毛の杖を持った女性が何か魔法陣を展開し呪文を唱え始める。マジシャンか!


「やっばい!」


 俺達は森の中へと逃げ込むことによって押し寄せる津波のような水を回避する。そんな俺達を追撃するように、俺に一人、はてな先輩には二人が斬りかかり足を止めさせられる。


 くそっ、捕まっちまった。


 斬りかかってきた剣を受け流し防御することだけに意識を向ける。すぐ魔法の援護も飛んで来るだろうし、今は攻めていられる余裕がない。


 はてな先輩も二人に捕まっているが何とか耐えている様子だ。ただ、流石に反撃までは手が回らず同じく防戦一方となっている。


 受けに徹すればジリ貧ではあるがもう少し持ちそうな雰囲気はある。

 相手としてもこれで仕留められなかったのは誤算らしい。


 はてな先輩と向かい合っていた大柄な男がちっ、と舌打ちをする。

 焦ったように突っ込むがぬるっとかわされ、剣を当てるところまではいかない。


 とは言え、少し剣を合わせてみて分かった。この人達、さっきまでの敵より明らかに強い。作戦に基づいて動いているようだしちゃんと連携が取れている。気を抜いてたら最初で足元掬われてたな。流石準決勝まで勝ち進んできただけの事はある。

 ただそれでもきちんと集中してればどうにか出来るレベルだ。ちゃんと受けよう。


「ファイアーボール!」


 後ろから火球が飛来し、敵が飛びずさる。その敵のいた地面に火球が突き刺さり、プスプスと焦げたような音と匂いが立ち上る。

 伽耶の魔法だ。


 ようやく、信彦達が合流したのだ。これで4対4。状況はイーブンに戻った。


「こうなる前にどちらかは削っておきたかったんですけどね。仕方ないです。次の作戦で行きます!」


 眼鏡の男がそう言うと、ばっと二人ずつに左右に分かれる。


次の作戦?何をする気だ。


 はてな先輩の前に、マジシャンの女性と大柄な剣士が立ち塞がる。


「あんたは二人で相手したほうがいいみたいだな。」


「ありがとう。でも二人じゃちょっと役不足かもね。」


「ハッ。言ってろ。」


 はてな先輩が大柄な男を挑発し、それに応えたのを合図に戦闘が始まる。

 振り下ろされる大剣と水の矢を紙一重とも言えるタイミングで回避する。


 いくらはてな先輩でも、二人相手は何があるか分からない。すぐにカバーに入らないと――。


 俺に信彦、伽耶がはてな先輩を助けようと前に出ようとする。

 だが、そんな俺達の前に、眼鏡のリーダー的な男と、細身で長身な美男子が立ち塞がる。


「君達は行かせない。」


「くっそ!」


 やられた、これが作戦か。こいつらをどうにかしないとはてな先輩のカバーに行けない。

先にはてな先輩を潰すって事だ。


 はてな先輩がいつまで耐えれるかは正直分からないが悠長にしていられる時間がない事は確かだろう。

 だが、その作戦をするって事はこちらの状況は3対2。舐められてるな。人数有利だし負けるわけに行かない。なるべく早く片付けなくては。


 この相手はそこそこ強いが、はてな先輩抜きでも俺達だけでやれるんだって事を証明しなきゃいけない。改めて気合を入れろ。止まってる暇はない。


「さっさと終わらせるぞ。」


「おう!」

「うんっ!」


 信彦と伽耶の返事が返ってきた瞬間、眼鏡の男へと斬りかかる。そんな俺の動きを分かっていたのか信彦も同タイミングで長身へと突っ込んでいる。


 そんな俺達の一撃は綺麗に受け止められ凌がれる。隙がない。やっぱりそんな簡単にはいかないな。


 どうにかして突破してやる。









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