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『青春はゲームじゃない』  作者: いろは菓子
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第3話 「ユートピアエデン」

 真っ暗な世界に浮かんでいる。

 立っているのか落ちているのかもはっきりしないふわふわとした感覚。


 そんなあやふやな感覚がふいにはっきりとした感覚に変わる。

 瞼の下からでも、周りが明るくなったことがわかる。太陽の光だろう。


 それと同時に、周囲の音が聞こえ始める。

 沢山の人の気配。足音、話し声、何かを引くような台車の音。それに風。


 とてもゲームの中とは思えないリアルすぎる感覚。でも、リアルなはずなのにどこかこれが現実ではないとわかってしまう。

 でも、この空気感が好きなんだよな。思わず、笑みがこぼれる。


 目を閉じたままにやにやしている深夜を周りの人は奇妙なものでも見るような目で見て避けて通る。


 ここは、ユートピアエデンの世界。

 このゲーム内での俺のプレイヤーネームは『クロ』。レベルは14。


 この街の名前はユラの街。

 初めて二ヶ月でようやく二つ目の街。初心者に毛が生えた程度の人が集う場所だ。


 中世風とでもいうのだろうか。石畳にレンガ造りの家。

 通りには、赤黒黄色。様々な髪色の人がいる。武器を身につけた剣士に魔術師風のローブに身を包む女性プレイヤー。

 中には耳の長いエルフのような人や、毛がふさふさな獣人までいる。


 かく言う俺の姿も、顔は現実の顔になるべく近づけてあるが髪色は綺麗な真っ白だ。


 腰には短剣が挿してあり服装も動きやすい冒険者服。

 この世界観に何の違和感もなく溶け込めていると言っていいだろう。


 この街に来てからそろそろ一ヶ月。

 もうこの風景にも慣れてきた頃だ。


 俺がユートピアエデンを始めたのは二ヶ月前。このゲームはいわゆるファンタジー世界だ。

 剣に弓、様々な種類の武器がある。おまけに魔法まで。


 このゲームの楽しみ方は無限大だ。

 広大なオープンワールドを歩き回ったり、魚を釣ったり料理をしたり。


 フィールドにいるモンスターを狩ってそのドロップした素材で新しい装備を作ったり。


 家を建てることだって出来てしまう。出来ない事の方が考えつかないくらい自由度が高いのだ。


 ただ、そんな自由度の高いゲームでもやっぱり1番の花形といえば。

 そう、PvP(player VS player) である。


 目の前にそびえる闘技場こそ、そのPvPが楽しめる場所なのだ。

 俺がこのゲームをやっている理由はやっぱりこれに限る。

 フィールドを駆け回って集めた素材で武器、防具を作りその特性に合わせた戦術をかんがえる。


 これが決まった時ほど気持ちのいいものはない。


 闘技場の外壁に貼り付けられた巨大なモニターには、今闘技場内にアクセスしているユーザー達の試合が流れている。

 今試合しているのは、いかにもパワータイプの戦士二人。力比べといった所だろうか。


 お互いの剣をギリギリと噛み合わせながら一歩も譲らぬ様子が映し出されている。


 そして、この映像もただ配信されているだけじゃない。この闘技場の大事なシステムがもう一つ。


 観客は試合前にどちらが勝つのかを予想できるのだ。勝てば賭けたお金に倍率が掛かって戻ってくる。負ければ0。

 このギャンブル性ゆえに一試合一試合の温度も相当高いものになっている。


 勝ち続けて、有名プレイヤーにでもなればその人気は計り知れない。


 今も、闘技場の周りには沢山のプレイヤー達がモニターを眺めている。

 いつかは俺もこのモニターで配信されたいな。


 配信されるにはそこそこの知名度かレベルが必要になってくる。

 まずはもっとレベルと腕を磨かないといけない。


 まだまだ初心者の域を出ない俺は、配信なんてされない普通ルームでの試合だ。

 闘技場にアクセスし、レベル15以下の部門を選択し、対戦待ちに設定する。


 これで、相手が見つかれば自動的に転送されて1対1の勝負が始まる。


 さぁ、相手はまだかな。













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