38話 「間休」
それからも俺たちの戦闘は至って順調で隙なんて何もないように思えた。
続く第三、第四試合も相手がどうにか対策を取ろうとしてきているのは感じたが焦るような場面もなく安定して勝ちまで運ぶことが出来た。
それもこれも、はてな先輩の圧倒的な個人技と立花さんの正確な狙撃と指示が大きな要因を占めている。
経験者は違うとはまさにこの事だな。獅子奮迅と言わんばかりの活躍だ。
俺達のチームに対して作戦を立てるとするなら、俺ならどうするだろう。
まず、前提として立花さんの狙撃には神経を注いでおかないとそれだけでチームが終わりかねない。あの正確無比な射撃で要所を援護されながら戦うなど考えたくない。
その次は、やはりはてな先輩と俺に対する対策だろう。突っ込んで来る俺達は1番実害が出るだろうし、はてな先輩一人で戦況に影響が出かねない。相手するなら最低限同じ程度の実力で、同数以上。それぐらい準備して相手しておきたい所だ。
それが難しいって話なんだけどな。
俺だってお飾りじゃない。そこら辺のやつに負けるほど弱くはないつもりだ。
そんな俺達を無視して先に拠点を攻め落とそうとした場合。
その場合は、待機している信彦と伽耶のペアを突破しなければいけない事になる。
あの二人の連携は中々厄介だ。信彦の厚い防御の向こうから、伽耶の攻撃魔法が息つく間もなく襲いかかる。
俺達でも待ちに徹している信彦を崩すのは難しい。時間を稼いでくれているうちに俺達がカバーでも、相手拠点を攻め落とすのでも出来るだろう。
実際、これまで戦ってきたチームも似たような戦法をいくつか取ってきたがその悉くが失敗している。
自分でも自分達の崩し方が分からない。結構強いんじゃないのか?
思わず頬が綻ぶ。
それに釣られるように、完全にチームの雰囲気は緩くなってきていた。初めての大会で、まともに合わせるのもこれが初めて。にも関わらず、ここまで好成績を収めているのだ。気が緩むのも仕方ない。
深夜も例に漏れず調子に乗っていた。
「あっという間に準決勝!めちゃくちゃ余裕だったな!こりゃ優勝待ったなしだわ。」
活躍した信彦もすっかり上機嫌でもう勝ちを確信している。
「だな、ツキノさんの言う通りだったよ。緊張することなかった。俺達こんなにやれるんだな。」
「こんなに勝てると楽しいよね!流石私が集めただけある!!みんな強すぎだよ〜」
はてな先輩も楽しそうだ。本当に、よくこのメンバーが集まったものだ。順調すぎて怖いぐらいだ。
「次は、一筋縄じゃいかないかもしれない。気を引き締めてください。」
そんな中でもいつも通り、厳しい言葉なのは立花さんだ。
一番の現実主義者っていう面もあるのか。
「一筋縄じゃいかないって?次の相手そんなに強いの?」
「ここまで勝ち残ってきた訳だしね。今までと同じ感覚でやってたら足元を救われるかもよ。」
そういう意味か。確かにあっという間とは言え、もう既に準決勝。ここまで接戦らしい接戦もなく上がって来れてきているが、この先もそうである保証なんてない。
レベルだってきっと上がる事だろう。
「でもつまり勝てばいいって事だよな?それなら何の心配もいらないよ。」
信彦が相変わらずの自信満々な様子で言う。
「だから、そのために集中しろって事じゃ――」
ダメだ、こいつ何もわかってない。勝てば全部解決。
確かにその通りではあるのだが、それは酷く強引な理論だ。
にかっと歯を見せ笑うイケメン。やる気があるのならそれに越した事はないか。
そんな様子を見て、場の雰囲気も緩いものになる。けらけらとした笑い声が響く。
「そういえば、あのフランダルってチームもまだ勝ち残ってるんですね。」
トーナメント表を眺めていた伽耶が気付いたというように呟く。
それを聞き、みんなトーナメント表へと目をやる。
確かに。
俺達とは反対側のルートだが、勝ち進んでいるチームにフランダルの名前がある。
本戦出場って言ってたが、嘘じゃなかったみたいだな。流石と言うべきか。
俺達もフランダルも勝ち進めば、決勝で当たる事になる。
見た目からも強そうな雰囲気は漂っていた。
あの人達と戦う事になる未来ももうすぐそこだ。覚悟はしておいた方がいいかもな。
「本当だ。ただ冷やかしに来ただけかと思ってたけどちゃんと強いんだ。楽しみだね。」
はてな先輩はあくまで余裕の態度を崩さない。本戦出場チームって聞いてもびびってないんだな。でも、俺たちは優勝を目指してるんだ。
それぐらいじゃないと困る。それにこっちには立花さんもいる。勝負にならない事はないだろう。
「さて、そろそろみたいだよ。行こうか。」
俺達の番がついにやってきたらしい。よし、やるか!




