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『青春はゲームじゃない』  作者: いろは菓子
35/52

34話 「仕込み?」

「それで、話なんだけど―――


 そう切り出して言葉に詰まる。どんな風に伝えよう。そもそも何の確証もないのに。

 いや、でも言うのなら単刀直入。

 ズバッといくのが後腐れもなく1番!きっとそのはずだ。


 ごくっと唾を飲み込み、改めて口を開く。


「話なんだけど、立花月乃って知ってる?」


 立花月乃。この名前は、この間知り合いになった1年生。

 天才少女の名前だ。何故、今ここでと思うかもしれないが最初にツキノと会った時から、ん?とは思っていたのだ。


 ここからは、現実の方を立花さんと呼ばせてもらうが、立花さんは俯きがちで顔をまともに見たことがないとは言え、ゲーム内のツキノと同じ、こんな雰囲気だったような気がするのだ。

 もちろんツキノみたく緑の髪じゃなく茶髪で印象も大分違うが、何となくそんな気がする。

 こればっかりははどこと言われてもわからない。勘ってやつだ。


 ユートピアエデンをやってるって言うのを聞いたからっていうただのこじつけかもしれないが、一度意識し始めるともう全てが立花さんに見えて仕方ない。

 俺と立花さんにそんな深い関係はないし、なんならスッカスカ。

 すぐに底が見えるようなあっさい関係だが確認ぐらいしておきたい。


 ツキノさんの反応はどうだ?


「なんで、その名前を‥‥!?」


 目を見開き、口をパクパクとさせ焦点が合わないように目が泳いでいる。どうやら相当動揺しているらしい。

 これはビンゴか?


 しかし、そんな慌てた様子を見せていることにはっと何か気づいた様子のツキノ。

 すぐにポーカーフェイスを用意し、無表情を装うとする。


「し、し、知りません。」


 それで誤魔化せてるつもりなのか?声がぶるっぶるだしさっきまでの堂々とした態度はどこにいってしまったんだ。

 動揺を下手くそなポーカーフェイスで全く隠せていない。


「別に隠さなくていいよ。ほら、俺のことわかる?」


 その問いに、本気で意味が分からないと言ったように言葉が出ないツキノ。


 まぁ、当然と言えば当然か。向こうからは俺たちの印象なんてその辺にいるだけのただの先輩だっただろうからな。


 反応からして、立花さん=ツキノさんだと仮定してるけどあってるよな、多分。


「えーと、あれだ。プリントを拾った先輩とかいなかったか?ほら、丁度テスト期間とかあったと思うんだけど。」


 その言葉にツキノは考え込むような仕草を取るが、やがて一つの結論に行き着いたのか顔を上げる。


「まさか―――」


「そう、そのまさかだ。俺も髪色変えてるし分かんなくても仕方ないよな。」


「―――!!」


 完全に理解したらしく、その小さな体をさらに小さく丸め頭を抱え込む。


 そんなにショックだった、のか?まぁ、確かに知り合いとゲーム内で意図してもいないのに会うなんて普通に気まずいか。

 ましてや、立花さんはかなりキャラも違っていた。

 現実では引っ込み思案で、いかにも暗そうな勉強の虫って感じだったのに、ゲーム内では強気な司令塔だもんな。

 そりゃ、頭を抱えたくなるよな。


 というか、配慮が足りなかったかもしれない。何も馬鹿正直に聞かなくてももっと外堀から遠回しに確認していく事だって出来ただろ?やらかしてんな俺。


「えっと‥大丈夫?」


 頭を抱えて動かなくなってしまった立花さんに流石に申し訳ないという気持ちが芽生える。

 せめて、少し謝らないと。


「大丈夫‥‥です。確か‥‥黒川先輩‥でしたよね。」


「お、よかった。ちゃんと覚えてはくれているんだな。」


「はい‥‥」


 力なさげに頷く。


「‥‥‥運悪すぎるでしょ、なんでよりによってそんなピンポイントで?私本当についてない‥‥もうイヤだどんな顔して話せば――」


 何か言っているようだがあいにく声が小さすぎて俺には何も聞こえない。

 愚痴か恨み言の類いだろうか。纏っている負のオーラが一段と濃くなった気がする。


「いや、まさかこんな偶然あるなんてな。ユートピアエデンやってるっていうのは聞いてたけどこんなことになるとは。ほんとビックリだよ。」


「‥私も‥まさかバレるとは思ってませんでした‥。完全に油断してました。」


「ツキノって名前であれ?とは思ってたんだよ。まさか本当に同一人物だとは思わなかったけどな。」


本当に、同一人物だとは確信がなかった。自分でもこんな事があるのか?って感じだったし信じられない気持ちで一杯だ。


「誰かに、言ったりしましたか?」


 ツキノはモジモジと気まずそうにそう言う。もうすっかり強気でなくなって現実の立花さんだ。


「いや、誰にも言ってないよ。」


 それを聞き、安心したようにほっと胸を撫で下ろす。


「良かった‥。こんな姿がバレたら恥ずかしすぎます。」


 やっぱりバレたくはないよな。


 あ、でも――


「俺と一緒にいた奴覚えてる?あれ、彦丸だからひょっとしたら気づくかも――。というか、そもそも‥‥このパーティーの人達全員同じ学校なんだよな‥‥」


「!?!?!?」


 ツキノは驚きと混乱が入り混じった顔を見せる。

 そりゃそんな顔にもなるか。俺だって信じられない。

 パーティーメンバー全員同じ学校だなんて、そんな事あるんだな。どんな確率だよ、マジで。


「彦丸さんは何となく分かってたけど‥全員!?そんなバカなことって‥」


 ツキノは未だに理解が追いついていないといった感じでうわ言のように繰り返す。


 こればっかりは仕方ない。説明してもいいが嘘みたいな偶然の連続なんだ。


「とにかく、まだ誰も知らないとは思うから、秘密にはしておくよ。」


「そうしてもらえると‥‥助かります。」


 ちゃんと分かっているかどうかは曖昧だがとりあえず返事はしてくれた。大丈夫だろうか。


 詳しいことはまた今度機会がある時に説明しよう。


「じゃあ、また。」


 呆然としている立花さんを置いて、俺もログアウトしたのだった。








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