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『青春はゲームじゃない』  作者: いろは菓子
33/52

32話 「最後のピース」

「合格です。」


 そう言い放ち、フェンリルにとどめを刺したツキノの背中はとても大きく見えた。


 倒れているフェンリルの頭部が綺麗に削り取られているのを見て戦慄する。


 空を切るような鋭い音がしたと思ったら、次の瞬間にはもう頭が吹き飛んでいた。

 まるで大砲でもぶっ放したかのような威力。これが上位陣の火力なのか?俺たちの攻撃が1とするなら軽く10はいっているだろう。


「合格?」


 獲物を横取りされたはてな先輩はちょっと不満そうだ。結果的に勝てたからそれでいいじゃないかとも思うが、そう言うわけでもないんだろう。


「私もこのパーティーに入れて欲しいという意味です。まだまだ荒削りな所はあるけど、それよりもこのパーティーのポテンシャルに可能性を感じました。時間さえかければきっと――」


 きっとの後に続く言葉は分からなかったが、願ってもない申し出だ。どうなる事かと思ったが結果オーライってとこかな。

 それに、俺達も練度が相当上がって来ている。正直もう少し苦戦する事を想定していたのだが、想像以上に戦えていた。

 とどめはさしてもらったといえ、パワーアップしていることは間違いない。


 信彦と伽耶の連携。はてな先輩は言わずもがなだが、個人技も光るようになって来ている。

 そこを評価してくれたからこそのポテンシャルがある、という総評なのだろう。

 俺はさっきの戦いでは目立つ活躍は出来なかったが、可もなく不可もなくの立ち回りが出来たと自負している。飛んでくる雷球の捌き方などは中々良かったのではないか。


「入ってくれる気になってくれたなら嬉しいよ!ツキノちゃんの実力も今みんなに見て貰えた訳だし‥。私達のいつもの戦い方も分かって貰えたよね。何か言うことはあったかな。」


 はてな先輩もツキノが入ることに肯定的らしい。それならば俺が断る理由など何もない。もちろん、伽耶も信彦も同じだ。

 伝え忘れていることはないかと美雨は手を顎にあて考え込む。


「そうだ!条件ってほどじゃないんだけど、私達と仲良くすること。仲間内でギクシャクしたくはないからね。それが守れるのなら大歓迎!」


「そんな事でいいのなら、喜んで。と言いたいんですが、私は人付き合いがあまり得意じゃないから自信はないですけど‥。」


 美雨の提示した条件に不安そうな表情を浮かべるツキノ。


「その気持ちがあるなら大丈夫!私だっているしすぐに仲良くなれるよ。ね、はてなさん!」


 それを優しくカバーするのは伽耶だ。意外と面倒見がいい一面もあるんだな。


「うん!普通にしてくれてればいいってだけの事だから!実際、他のみんなにも条件らしい条件は何も出してないから!目的は一緒だと思っていいんだよね?私達は1周年イベントを目指してるんだけど。」


「はい、それは私も同じです。このメンバーなら、今から始めれば全然優勝も狙えると思います。」


 こくりと頷く。

 堂々とした態度だ。それを裏付ける実力から来る態度なんだろうな。慣れない環境だろうに物怖じする様子がない。


 何はともあれこれで5人目が決まった。その事実に俺たちは歓喜する。

 来た時点から、ツキノに対してはみんな悪い印象は抱いてはいなかった。

 強い人だと言うのは分かったし、性格も少し強気な所はあるが、それが自分の腕への自信から来ていると分かれば頼れこそすれ、蔑むものじゃない。


 遠距離火力という面もさっきのを見ればもはや説明はいらない。どうやったらそんな綺麗に消し飛ぶんだと言うような綺麗な断面。これが弓によって為されたとは見ていなければ到底信じられない。


「何はともあれついに!私達のパーティーが5人揃ったね!!ここから本当にスタートだよ!」


 美雨が、いつにも増してテンション高く飛び跳ねる。それを微笑ましいものでも見守るようにみんなで囲んでいる。


 ついにここまで来たのだ。最初は俺とはてな先輩の2人だけ。

 どうなる事かと心配したが、すぐに信彦が入ってくれることになり、なんと伽耶までゲームを初めてくれる事になった。

 大会にも乗り気で協力してくれるらしいし、最後は上位勢の大型加入。言うことなしの満点だ。


 それもこれも―――


「はてな先輩がいなかったら、俺たちは集まってません。1周年大会、絶対勝ちましょ!!」


「そうだな。こんな楽しい事やらないなんてもったいねぇ。誘ってくれたクロにも先輩にも凄い感謝してる。絶対勝とう!!」


「私も、出来る限り協力する。このゲームの仕組みもようやく分かって来たし少しは力になれると思うから。」


「私も、今入ったばかりだけど、教えられることは何でも教える。今度こそ、前と同じ失敗は繰り返さない。」



「みんな‥‥!」


 恐らく目を潤ませているんだろう。声が少し震えている。


「私が絶対勝たせてみせる!大船に乗った気でいて!何たって私は最強なんだから!」


 いつも通りの自信に満ち溢れた宣言。これより頼れる人と言葉を俺は知らない。

 みんなで顔を見合わせて笑い合う。


「ね、あれやろうよあれ!」


「「あれ?」」


 みんな頭に?を浮かべるが美雨の仕草で何を言わんとしているかをすぐに察する。


 5人で円を作るように丸く囲み、真ん中で手を合わせる。


「新しく入ったツキノちゃんも合わせて!私達5人で絶対勝つよ!!せーのっ!」


「「「「「オオーーッッ!!」」」」」


 手を空高く突き上げる。各々のあらん限りの大声が、山奥に響き渡った。
















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