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『青春はゲームじゃない』  作者: いろは菓子
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第2話 「冷たい反応」

 学校は午前中だけということもあり、あっという間に終わった。


 帰り支度を整えていると信彦が近付いてくる。


「俺は陸上部の方に顔出してこなきゃいけないけど深夜はどうするんだ?帰ってまたあのゲームするん?」


「そうだな、さっさと帰ってやろうかなと思ってるよ。」


「オッケー、俺も夕方には帰るからそしたら遊ぼうぜ!」


 信彦が言っているあのゲーム。

 それは発売半年にして社会現象とも呼べるほどの大ブームを巻き起こしている超人気フルダイブMMO「ユートピアエデン」。

 5人まで組めるパーティーで広大に広がるオープンワールドを冒険できる。控えめに言って神ゲーだ。


 俺が誘ったのをきっかけに信彦も始め今ではすっかり、2人ともどハマりしている。


 またな、と手を振りながら出て行く信彦を見送る。

 俺もそろそろ帰ろうかと、鞄に手を伸ばそうとしたが何となく視線を感じ目を上げる。


 その先には伽耶が俺の席の前でじっとこちらを見つめていた。


「ねぇ。」


 唐突に話しかけてきた。


「な、なに?」


 突然すぎて声が少し震えてしまった。

 高校に入ってからはクラスが違うとはいえ、会話がなかったのだ。

 何か言いたいことでもあるんだろうか。でも、何もしてないしな‥。


 伽耶はじっと見つめるばかりで何も言わない。

 そんなに見ないでくれ。何もなくても何だか照れ臭いし気まずい。

 そのまま10秒ほど経過しただろうか。

 すると、いきなりつんと顔を背け


「別に。」


 と、そっけない返事で教室から出ていってしまった。

 咄嗟の事で、何が起きたのか分からずぼけっとしてしまった。

 伽耶のやつ何が言いたかったんだ?


 小学生の頃は、伽耶との仲も良かった。帰り道を一緒に帰ったり、お互いの家に遊びに行くこともあった。


 そんな関係が変わり始めたのは中学生からだったろうか。

 思春期に入り、周りからの目が気になるようになってきた。そのせいだろうか、今までの距離感で接しているのが気恥ずかしくなってきたのだ。


 きっとお互いにそんな思いがあったのだろう。普通に会話する事はあったが高校生になってからは、もう話す事はほぼ無くなっていた。


 そんな関係だったから、また声をかけてくるなんて、と身構えたのが何だったというような肩透かし。

 もしかして何か怒らせたのか?


 いや、でも何もしてないし‥不機嫌にさせるような事は何もなかったと思うんだけどな。


 出て行ってしまったものは仕方ない。俺も帰るか。


 窓の外をちらりと見てみれば下校中の新入生達なのだろう。

 部活動勧誘ルートが形成された中庭を人がひしめき合っているのが見える。気弱そうな茶髪眼鏡の女の子が、女子バレー部の部員から両隣をがっちりと固められている様子に、気の毒にと同情を送る。


 家に帰宅し、ぱぱっと着替えやご飯まで済ませた。

 ちなみにご飯は一人でも簡単に作れるカップ麺である。俺は料理が得意じゃない。


 まともに作れるのはカップ麺ぐらいなもので、自炊なんてもってのほか。

 もっとも、ただお湯を沸かすだけのカップ麺を、作れると言っていいのかどうかは疑問の残る所ではあるが。


 さて、そろそろ始めますか。


 ベットの脇に置いてあるイヤホンを装着し、ベットに寝転がる。

 スマホを操作し、鳥籠に蛇が巻き付いているロゴのアプリをタップする。

 そのゲームの名前はユートピアエデン。


【フルダイブを開始しますか?】


【はい/いいえ】


 はいをタップし目を閉じる。イヤホンからキーンと高い音が流れ始め意識が遠のいていくのを感じる。


 あぁ、この感覚はいつまで経っても慣れないな。

 そんな事を考えているうちに俺の意識は闇に消えた。








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