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『青春はゲームじゃない』  作者: いろは菓子
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第28話 「隠された素顔」

 オフ会からの帰宅後、深夜はいつも通りユートピアエデンを開こうとしていた。


 今日のオフ会はかなり楽しかった。ユートピアエデンについてみんなで話すことが出来たし、休日にこうして友達と出かけるなんていうのも珍しい出来事だったのだ。


 まさかのはてな先輩があんなに可愛い人で、俺達と同じ緑仙高校の生徒だった。なんていうふざけてるとしか思えない新事実も発覚した事だしな。情報量が多すぎるってもんだ。お昼までご馳走になっちゃったし、改めてお礼を言わないとな。


 イヤホンをつけ、ゲームを起動する。耳障りのする高い機械音が流れはじめ眠気に襲われる。


 気持ち悪い。いつものこの感覚に悪態をついているうちに意識を持っていかれる。


 気づけばいつものユートピアエデンの世界だ。前回みんなと別れ、ログアウトした森の外に立っている。


 空気が美味しい。ゲーム内でも森の近くならこんな感覚にもなるんだな。本当によく出来ている。


 特に何かする用事もなかったけど今日は何しようかな。


 そんなことを考えていると背後に突然人の気配を感じた。


 誰もいないと思っていたんだが、誰だ?


 振り返ると、そこには真っ黒のローブを被ったはてな先輩が立ち尽くしていた。


「あ。」


 俺の声に反応し、はてな先輩もこちらに気づく。


「あ!」


 前回同じ場所でログアウトしたからたまたまログイン時間が被ったのか。帰ってすぐ俺はゲームを開いたから恐らくはてな先輩も同じなんだろう。はてな先輩、ほんとにゲームが好きなんだな。負けたくない理由も今日聞いたし、取り柄だっていうのも本当なんだろう。と、そうだ。お礼を言うんだった。


「はてな先輩、今日は奢ってもらってありがとうございました。」


 その言葉にはてな先輩はぱたぱたと手を振る。


「いいのいいの。気にしないで。クロ君ももう家に帰ったんだね。びっくりしたよ。」


 相変わらずの全身真っ黒な姿。この人と今日本当に会ったんだな。何だか信じられない気分だ。


ふと、そのフードの下が気になった。


「はてな先輩、フード。取ってみて貰えませんか?」


「うぇ!?何急に。どうしたの?」


 素っ頓狂な声を上げるはてな先輩。そんなに驚くとは思わなかった。


「いや、今日会ったのって本当にはてな先輩だったんだなって思ったら、なんだか確かめたくなって。ダメ、ですか?」


「んんん。いいはず、なんだけどいつもこの格好をしてたから何だか照れ臭いな。でもどうしてもっていうのなら‥いいよ。」


 気は進まない様子だが、はてな先輩がフードに手をかける。見せてくれはするんだな。


 緊張する。さっきまで一緒にいたっていうのに2人っきりで、改めて顔を見せてもらうのがこんなに緊張するなんて。良く考えれば俺はなんでこんな事を頼んだんだ。変に思われてはいないだろうか。


 ゆっくりとフードが脱がされていき、隠されていた顔に光が当たる。


 フードの下から現れた顔はやはり紛れもなく今日見たあの超可愛い女の子だ。改めて見ても、くりくりとした目。ちょこんとついた口。幼さの残る人形のような顔立ちでもはや美しさすら感じる。少しの誇張もなく素のままだ。


「‥やっぱりちょっと恥ずかしいね‥‥。えへへ‥。」


 はてな先輩は気まずそうに斜め下を見ながらはにかむ。そんな仕草すら絵になる。立ち尽くしていると、どうしたのと声をかけられる。


「どうして、何も言ってくれないの?おーい!」


 ぴょんぴょんと飛び跳ね存在をアピールしている。


「‥ごめんなさい。ちょっと見惚れてました。」


 !?

 俺の口は何を言ってるんだ!?つい気を抜いてしまって本音が出てしまった。そんな事言うつもりなかったのに。


「見惚れ‥‥!?言うねークロ君。お姉さんびっくりしちゃったよ。そっかそっか。見惚れてたのか。」


 顔に手を当てる。やっぱり。熱くなってる。恐らく鏡でも見れば真っ赤なんだろう。


「まさかクロ君がそんな事言うなんてね。これからはフード取った状態で話してあげようか?」


 はてな先輩はすっかりからかいモードだ。完全に面白がっている。


「忘れてください!!」


「えーいいじゃん。そういう素直な気持ちは大切にしなよ!」


「どうかしてました!!みすです!!!」


「ホントかなぁ?」


 弁解しようとすればするほど沼にハマってる気がする。もう何も言わないほうがいいな。


 俺がもう何も言わないのを察したのだろう。はてな先輩もからかいモードをやめ、普通に戻る。


「これぐらいで許してあげるよ。」


「ありがとうございます‥。」


 完全に失言だった。心の声が漏れすぎなんだよな。気が抜けてる。


「でも、私は嬉しかったけどね。」


 はてな先輩はさっきと違いふざけているような雰囲気はない。なんだこの雰囲気。迂闊にも胸がドキッと反応してしまう。


「またそうやってからかって‥。」


 絞り出すようにそう返す事しか出来ない。


「ふふ、そうだね。」


 はてな先輩は思わせぶりに笑う。本当によく笑う人だ。この人の笑顔は憎めない。なんでもいいかとどうでも良くなってしまう。


「私も今日は凄い楽しかったな。サヤちゃんは凄くいい子だったし凄い可愛いかった!彦丸くんはちゃらちゃらしてるイメージだけど頼りになりそうな感じだったし。クロ君は、イメージ通りかな。凄い楽しかった!!」


 イメージ通りってなんなんだ。どんなイメージなんですか?と聞いてみたいが、何かマイナスのイメージだったらと思うと聞くのも憚られる。きっとそんなことはないと分かってはいるのだがその少しの勇気すら出せない。俺は弱いな。


「そういえば今日話しておけば良かったと思ったことがあったんだった。」


 何だ?あの場で話すって事は何かパーティーに関係あることなのか?


「5人目の候補の子が見つかったから今度みんなで一緒に、どうするか決めたいなって!」


「めちゃくちゃ大事な話じゃないですか。」


 ついに最後の1人が見つかったのか。まだ候補みたいだけど、これでようやく5人揃ってスタートラインに立てる所まで来たって事だ。やっとって感じだな。


「分かりました。俺は全然大丈夫です。」


「うん!良かった!今度連れてくるね。」


 はてな先輩が見つけてきた人だ。実力に関して俺が何か言うことはないだろう。後は、性格が合うかどうか。どんな人が来るんだろう。優しい人だと嬉しいな。











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― 新着の感想 ―
[一言] お!これは立花ちゃんが来るのかな? ワクワク
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