陰キャでチー牛な俺が学校一の美少女に付きまとわれてる件
雨宮悠は焦っていた。生まれてこの方、女子と会話すらしたことのない自分が、今女子に告白されようとしている。
━━日下部唯それが彼女の名前だった。
恐らくこの高校に通う男子生徒なら全員聞いたことがあるのではないだろうか。成績優秀・スポーツ万能。絵に書いたような優等生で、所謂マドンナ的な存在である。
日下部「ンにマック」
「いや、その、えっと....」
日下部「ンにマック」
「ごめんなさァァァァい!!」
悠は逃げ出した。
返事どころかまともに会話すら出来ていない。
だが、あれが限界だった。女子と会話したことすらない自分が、学校一の美少女を相手取るなど、不可能に近い。というか不可能だ。
放課後の教室で2人きりという理想的なシチュエーションから、一切振り返らずに家まで駆け抜けた。
一息ついて、ようやく自分の状況を理解した。
(俺、告白されたのか....?)
顔が一気に熱くなる。高校2年の新学期早々まさか人生初告白とは。未だに現実味がない。
しかも、あの日下部さんときた。これは自分にもモテ期が来たのかと思いかけたその時、とんでもないミスを犯したことに気がついた。
「返事してない....」
あまりにも腑抜けが過ぎる。悠は自分の経験不足を呪った。
告白されて逃げ出す男がどこに居ようか。そんな男に彼女ができるわけが無い。ついさっきまで火照っていた顔がどんどん青ざめて行く。
「終わったぁ〜」
そう呟くと背負っていたカバンを雑に放り投げてゲーム機の電源を入れた。お得意の現実逃避である。それなのに全く気が紛れない。17年間やってきた方法が通用しないのだ。
気が付くと朝になっていた。しかも時刻は8時10分
遅刻寸前だ。急いで朝の支度を済ませて外に出ると。
家の前に誰かいる。
「おはよう 雨宮くん」
まさかの日下部さんだった。