【マレーシア密林戦のその後】
ご覧頂き、ありがとうございます♪
大変お待たせ致しました。久々の投稿です。
特別遊撃分隊の為に割り振られたロッカールーム兼ミーティング室。十畳程の部屋に簡素なテーブルとロッカー。わかりやすくいうと高校の運動部の部室の様な部屋。
やっと一息付くタイミングが出来た俺たち。
こうしてゆっくりと話をするのもずいぶんと久しぶりな気がする。
マレーシアの作戦から一週間。
ソメイヨシノに帰還した俺たちを待っていたのは、帝国軍各部隊からの救援要請の対応だった。
補給を終えた後に再び輸送ヘリに乗り込み、援護へ急行。
ドラゴンと戦闘し、殲滅。ソメイヨシノへ戻り、補給。再び出撃……。
天災ともいえる大量のドラゴンの出現に可能な限り対応してきて今に至る。
そこでちょっと信じられない事を上原少佐から聞いた。
「……ルゴール王国の仕業じゃないんですか?」
「らしいわね。世界中に現れた魔獣の動向を集計すると帝国軍への攻撃と同じくらいルゴール軍にも攻撃してる」
『らしい』と言ったのは上原少佐自身も聞き及んだ話だからだろう。
というか魔獣であるドラゴンを使役して攻撃してくるのはルゴール軍の十八番だったはずだよな?
それがルゴール軍の仕業じゃ無さそうって事はどういう事なんだ?
「帝国で確認出来ているだけで、ですわよね? という事はユーラシア大陸やアフリカ大陸に展開しているルゴールの占領地ではもっと被害が出ている可能性がありますわね」
椅子に座る俺の後ろに控えていたシュヴァリエがシャープな顎に手を当てて思考しながら言った。
ルゴール人であるシュヴァリエもこの状況は把握しかねている様子だった。
それはそうか。あくまでもシュヴァリエはルゴール軍の一士官でしかなかった訳だし、よほどの作戦じゃ無い限り末端の兵士にまでは伝わらない作戦の可能性がある。
「敵の混乱ぶり、魔獣の動向を見る限りルゴール軍が意図して召喚した魔獣が暴走したか。もしくは……」
佐倉はそこで自身の考えを整理するように一旦話を切り、再び口を開いた。
「……魔獣が自ら現れたか」
「自ら現れる? そんな事あるのかよ?」
「少なくとも私たちの世界ではあり得ない事ね。……だけどマリオン、ルゴール王国では珍しい事では無いんでしょ?」
三人の視線がシュヴァリエに集まる。
俺と佐倉は振り返り、上原少佐は椅子に座ったままシュヴァリエを見つめる。
そして彼女はゆっくり頷いた。
「……ええ、そうらしいですわ」
らしい、というのはシュヴァリエも地球生まれで、ルゴール王国本土がある世界には行ったことがないからだろう。
しかし話だけは聞いて居るんだろう。俺と佐倉はシュヴァリエからその話を聞いた事があった。
ルゴール王国本土では魔獣による人的被害が毎日と言っていいほどに出ていたそうだ。
「ルゴール軍が召喚した訳じゃないとしたら魔獣はどうやって現れたのかしらね」
「……」
肩を竦めてみせる上原少佐に対して、シュヴァリエは黙り込んでしまった。
状況を考えたら何となく全貌が見えて来た。見えてきてしまった。
ルゴール人は魔獣のいない安息の地を求めてこの地球にやって来た。
そして地球を植民地化しようとして侵攻を開始した経緯がかる。
今まで地球に魔獣なんて当然居なかった。けれど異世界からルゴール軍がやってきて魔獣を使役して攻撃をしてきた。
異世界から魔獣を召喚して。
それは当然、意図的に呼んだわけだがどうやら今回は状況が違うみたいだ。
天災的に魔獣が地球に現れた。現れてしまったという考えに至るのは自然な事だろう。
もちろん真相は俺たちなんかには分からない。それが分かるのはずっと先になるかも知れない。
けれど事実として、世界中に魔獣が出現している。
それによってルゴール王国との戦争は各地で混乱している。
「シュヴァリエ、お前が落ち込んでどうするんだよ? お前は何も悪くないじゃないか」
「……ご主人様。ですが……」
「優介の言う通りよマリオン。悪いのはルゴール王国。ルゴール人じゃない」
「そうだよ。それに原因は分からないんだし」
「そうよマリオン。原因はどうであれ私たちのやる事は変わらないわ。トウヤからあんたのパトリオットも来る予定なんだから」
そう、シュヴァリエの“ジャンヌ・ダルク”はトウヤ基地で修理を受けて、太平洋を航海中のソメイヨシノに輸送されて居る最中だ。
俺と佐倉がサッポロで倒した“ジャンヌ・ダルク”だけど、目立った損失は貫いた【魔導力変換装置】と左腕だけだったので、比較的短期間で修理が完了したみたいだ。
最もオヤジさんたち整備クルーの努力の成果なんだろうけど。機体が到着したらお礼を言わなくちゃ。
もちろん乗り込むのはシュヴァリエだ。
高い出力を誇る“ジャンヌ・ダルク”を自在に操れるパイロットは帝国側の兵士には多くない。
「……はいっ」
力強く頷くシュヴァリエのエメラルドの瞳は確かに力強い意志が湛えられているようだった。
間もなくしてソメイヨシノに到着した“ジャンヌ・ダルク”を新たな特別遊撃分隊のメンバーに迎え、世界中の魔獣討伐に出向く事になった。
ソメイヨシノの機動力はやはり帝国軍最強ということもあり、目を見張るものがあった。
世界各地で戦っていくうちに集まってきた情報、そして目で見た情報を踏まえて推測するうちに分かってきたことがある。
そのうちの一つに、やはり今回の魔獣出現は意図したものではなさそうだ、という事だ。
帝国も確かに混乱し被害も出ているんだけど、どうやら今回の事件ではルゴール軍の方が大きな被害が出ているらしいという事だ。
世界各地のルゴール軍の士気がどうも低いらしく、どこの戦闘区域でも押し返せているという事らしい。
次々に撤退していくヤツらを見ているとどうやら補給などもままならないような状態であるらしい。
そんな中、俺たち特別遊撃分隊は世界各地を飛び回り味方を支援、援護し続けた。
そんな日々が数週間続き、とうとう士気が最悪になったルゴール軍は帝国軍に対し【停戦協定案】を示してきたのであった。
これがルゴールから帝国への初めての外交だという事らしく、歴史的な出来事であるという事だった。
ご覧頂き、ありがとうございました。
マレーシア密林戦のその後、世界各地で現れた魔獣達。
奇しくもソイツらのおかげでルゴール王国との停戦協定が結ばれる事になりそうです。
世界情勢が安定すれば、優介たちの願いである和平に一歩前進するはずなのですが……。
これから世界がどうなっていくか。
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次回もお楽しみに♪




