【初陣】④
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俺は【ワルキューレ】が身を隠せるほど背の高いビルに背中を預けて身を潜めた。
あまり選択の余地は無かったが、奴らをアスファルトで舗装された片側三車線の広い道路に誘導する事ができた。
本来なら遮蔽物に身を隠しながら戦いたい所だけど……。
それをする為には脚を使って動き回らなければならない。今の【ワルキューレ】のダメージでは無理だ。
「……」
俺は正面モニターのレーダーマップを凝視していた。
敵機との距離は一〇〇メートル程。格闘戦を始めるのには絶好の距離だな。……ゲームだったら、だけど。
壁から少し顔を出して敵機を確認する。
長い直線道路の向こうに二機の【ヴォルガー】が見えた。
一機はSVSを、もう一機はアサルトライフルを携えている。
当然だけど、それぞれ役割を分担してるんだろうな……。
というか、俺は一体何と戦ってるんだ?
ゲリラ? テロリスト? ま、まさか何処ぞのお国の軍隊なんて事は……。
いや、考えてても仕方ない。
訳のわからないこの状態で、ひとつだけ間違い無い事がある。
それは〝アイツら〟がこの機体をぶち壊して、俺たちをどうにかしようとしているという事。
それは今までの行動を見ていればわかる。
この佐倉莉子と名乗る女の子が敵なのか味方なのか、それは後から考えるしかない。
俺はモニターを見ながら頃合いを計り、佐倉に問うた。
「佐倉、準備はいいか?」
「いつでもどうぞ」
佐倉は俺に背を向けながらコクリと頷いた。
声はやや緊張しているように感じる。
そりゃそうか、こんなボロボロの機体(原因は置いといて)で【ヴォルガー】二機同時に相手にしなければならない。
もちろん俺も緊張で手汗がヤバい。
「行くぞっ」
「了解ぃ!」
状況開始。
俺は壁に張り付いた状態から機体を反転させ飛び出すと、装備していたアサルトライフルを発砲した。
タタタンと三連射した後、直ぐにビルに身を隠す。
こちらの位置には気付いていたはずなのに、二機はやや驚いた動きを見せた後、急いでビルの間に身を隠した。
「ポイントAは、こっちか?」
「ええ、そうよ」
俺は佐倉にそう確認すると、【ワルキューレ】の頭を低く下げつつ、ビルの間を移動して予め決めていたポイントに向かった。
戦場はあの大きな道路ではなく、この細い路地だ。
二対一であんな広い道路ではやり合うなんて無謀だからな。
【パトリオット】一機がギリギリ通れる程の狭い路地、そこへ誘導するための射撃だ。
当然、横並びにはなれないので、一機ずつ戦う事が出来る。
すごくベタな戦い方だけど、それだけにハマった時はものすごく有効だ。
レーダーマップを確認しながら、敵機との距離を測る。
赤い光点が縦に並んで、ゆっくりとこちらに向かって来ている。
距離も近い……いけるっ!
「喰らえッッッ!」
再び俺はビルから飛び出すや否や、アサルトライフルを発砲した。
今度はフルオート発射、次々に銃口から弾丸が射出され、空になった薬莢がどんどん排出されていく。
前列にいた【ヴォルガー】は弾丸を防ごうと、剣の側面を盾にしたが、剣は弾丸を数発受けるとポキリと折れた。
「残弾二〇パーセント切ったッ!」
「わかってるっ!」
あっという間に粉々になった剣の柄を投げ捨て、両腕で防御体勢に入るがもう遅い。
頭部に集中砲火を浴びせて、【ヴォルガー】の顔面をズタズタにする。
目を奪われた【ヴォルガー】のパイロットは混乱したのか、ホルスターから拳銃を引き抜き、デタラメに乱射した。
俺はアサルトライフルを即座に放り投げ、腰に帯びていたSVSを引き抜き、そのまま【ヴォルガー】の両腕を叩き斬った。
「……っ!? はやっ!?」
「うおおおおお!!」
両腕を失った【ヴォルガー】の腹部を思い切り蹴り飛ばし、狭い路地のせいで後ろでなす術がなかった【ヴォルガー】にぶつけた。
その衝撃で後ろの【ヴォルガー】も尻もちをついた。
……いけるっ!
SVSを両手で逆手持ち、【ワルキューレ】を不恰好ながら跳躍させた。
「これで、終わりだああああッッッ!!」
俺は【ワルキューレ】の全体重を刃に乗せて、両腕を失った【ヴォルガー】の腹部に突き刺した。
もちろん尻もちをついた後ろの【ヴォルガー】諸共。
「おおおおおお!」
夥しい量の火花が散り、【ワルキューレ】を包んでいく。
鉄を焼く匂いがコクピットの中にまで流れて来て鼻をつく。
後ろの【ヴォルガー】は命を乞うかのように右腕を力無く伸ばした。
しかしかける慈悲は無い。
やがてそのモノアイがゆっくりと消えていき、二機とも活動を停止した。
「……や、やったか?」
自分で言ってて、フラグっぽくなってしまって後悔した。
「や、やったわね、間違い無く」
けれど佐倉がキーボードを操作して何かを確かめると、俺の言葉に同意した。
佐倉も肩の力を抜いて脱力したようだ。
確かに彼女が言う通り、目の前の【ヴォルガー】はピクリとも動かない。
どうやら本当に倒したみたいだ。
「ふぅー……」
俺は長い息を吐くと、全身をパイロットシートの背もたれに預けた。
つ、疲れた……。
当然だけど、ゲームの疲労感とは全然違う。
何倍じゃ済まない、何十倍とも言える疲労感が俺を襲った。
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続きは今日の夜更新。
少しだけストックが有りますので、しばらくは毎日複数話更新の予定です。




