【同族】
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艦長への着任報告が終わり、シュヴァリエと上原少佐を迎えに留置室へ向かいます。
「シュヴァリエ、待たせたな。すまん」
俺と佐倉は水兵さんに案内された留置室でシュヴァリエと無事に再会できた。
シュヴァリエがいたのは簡素な部屋で、牢屋とは程遠い作りだった。当の本人ももちろん元気そうで、手錠などもされていない様子を見て安心した。
「いいえ、この艦の方々も丁重に扱って下さいましたので何の不自由もありませんでしたわ」
シュヴァリエの表情を見ると、無理をして笑顔を作っている様には見えなかった。とりあえずは安心だな。
けど、これから俺が出撃するたびにこの処遇なのか?
それは少しばかりシュヴァリエが可哀想な気もする。その辺りをもっと話し合うべきかも知れないな。
「……ところで、少佐は反省したんすか?」
「したした。めっちゃした」
シュヴァリエと廊下を挟んだ対面の部屋に留置されていた上原少佐が、扉に取り付けられた鉄格子を両手で掴み、廊下にいる俺たちを恨めしそうに眺めていた。
なんか言い方が軽いんだよな。まあ出してはあげるけどさ。
「本当っすか? もう止めてくださいよ」
「……? 一体どうしたのです?」
ジト目で少佐を睨む俺を不思議に思ったシュヴァリエが首を傾げる。
状況が分かっていないシュヴァリエに佐倉が少し赤くなりながら説明をしてやると、シュヴァリエのエメラルドの瞳がキュッと細くなった。
「……ほう? ご主人様のご主人様を……」
「いやよく分からん」
「ご主人様のおち――」言い直さなくて良い」
わざわざ言い直さなくて良いから、水兵さん含めて男は俺だけなんだよ。恥ずかしいからやめてくれ。
しかしシュヴァリエは少佐を蔑んだ目で見る……いや、これはもう睨んでいると言ってもいいな。
俺を凌辱(大袈裟)した少佐に嫌悪感を抱いているのかな、さすが俺の事を主人だと慕ってくれているだけのことはある。
「……そうですか、わかりました。しかし……」
俺に制されて一度は言葉を飲み込んだシュヴァリエだけど、やはり一言モンクくらいは言いたかったのか、上原少佐に向き合う。
「大きさはいかほど……?」
「いらん事言わなくていいから!」
「ええっとね、割とこう……」
「少佐も言わなくていいから!」
「…………」
「佐倉はなんで止めてくれないんだっ!」
ああ、純粋な佐倉の心が汚されていく気がする……。
◇
シュヴァリエと上原少佐と合流した俺たちは、水兵さんとは別れて川島大佐に指示された場所へと向かっていた。
鋼鉄製の狭い廊下を四人縦一列になって歩く。
大型戦艦とは言え、廊下の広さは大人三人が並んで歩ける程度。基本的に船内は左側通行らしく、廊下の中央には白線が引かれている。
片側に大人が並んで歩いていると対面の通行人とすれ違うことが出来ない。廊下を歩く時は縦に並んで歩くのがこの艦のルールみたいだ。まぁメインの廊下はここよりは広いらしいけどな。
道中、俺たちは雑談しながら向かっていたんだけど、すったもんだあったとは言え、上原少佐は本当に気さくな方だった。
俺が転移してきた経緯は知っていたし、ルゴール人であるシュヴァリエの事もさほど気にもしていない様だった。
ちょっと変わった人ではあるけど、少なくとも悪い人ではなさそうかな。
「……っと、ここね」
上原少佐の案内でたどり着いた場所。木製と思われるドアに看板が引っ掛けてあった。
「……『研究室』?」
プラスチック製の看板に黒文字でそう書かれていた。
上原少佐以外の俺たちはその看板を見て首を傾げる。そんな俺たちの様子を見て少佐が敢えてであろうけど、軽い口調で言った。
「そうそう、研究室ね。ここでは主にパトリオットの総合的な研究がなされてるわ。私たち……とは言っても今は私一人だけだったけど、特別遊撃分隊の戦闘データを使ったりしてね。今は……っと、コレは私から話す事じゃないわね、とりあえず中に入りましょう」
そう言って上原少佐は研究室のドアを三回ノックしてから開け放った。確かに狭い廊下で説明を受けても他のクルーの往来の邪魔になりそうだしな。
少佐が中途半端なところまで説明しかけるもんだから、余計に気になってしまった。
「……ここが研究室、なの?」
「医務室の様な作りですわね」
中に入ると佐倉とシュヴァリエがそんな感想を漏らしたが、俺も全く同じ事を思った。
「まぁー確かにそうねぇ」
上原少佐はそう相槌を打つと、誰かを探す様にキョロキョロと室内を見回した。
様々な薬品類を取り扱うのか、壁面に沿って立ち並ぶ棚には薬品がズラリと収納されている。恐らく波の揺れに耐えうる工夫がされているんだろうな。
部屋の中心にはデータ処理用のデスクトップパソコンがあり、ステンレス製のキャスター付き作業台には医療的な器具が置かれている。
よく映画なんかで目にする、大きめな如何にもと言った雰囲気の試験管もある。
室内では白衣姿の研究員が数名作業していた。……が、そのうちの一名が俺たちに気が付き、こちらに歩いてきた。
腰まであるややウェーブかかった黒髪。前髪も長く、右目を隠す様に流してあり、正面からは左目しか見えない。やや切長のヴァイオレット色の瞳。仕事柄あまり室外には出ないのか、肌は白くて透明感がある。瞳の色からも感じる様に北欧系なのか、非常に身長が高い。足首まである白衣を羽織っているので身体のラインは分からないけど、スタイルは良いみたいだ。
タブレット端末を小脇に抱えたその女性は、俺たちの前で立ち止まる。
「やぁ、待っていたよ。我が研究室へようこそ」
やや芝居じみた声色でそういう彼女の頭部に、俺は目を奪われてしまった。
彼女の頭にはツンと上を向いたぴょこぴょこと動く物体が着いていたからだ。
間違いなく、動物の耳。
それはシュヴァリエと同じくルゴール人の特徴の一つであった。
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