【旅立ち】
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今回より新章が始まります。
トウヤから旅立った優介達は転属先に向かいます。
夕陽を受けて赤く輝く海。
風はほぼ無し。波は立たず、まるで湖の様に水面は静かだった。
遠くに見える赤色の雲は、絨毯の様に広がり夕陽を隠した。しかし、雲の切れ間から刺す光が空気中の埃に反射して光線の様に海面に降り注いでいる。
上空から見るその景色はそれは絶景だった。
どこまでも続く水平線。……日本海なんだから比較的近くに大陸があるけど、そこは突っ込まないでほしい。
俺が転移してきたこの世界は、どうやら俺の住んでいた地球とすごく似ている……というか歩んだ歴史が違う、パラレルワールドといった方が良いのかもしれないな。それは基地の資料室で比較的簡単に調べる事ができた。
俺がいたトウヤは確かに日本の北海道だったみたいだ。
ただ正確には『ホッカイドウ』とカタカナで表記されるみたいで、国名も日本ではなく『ニホン』らしい。さらに言えば今は国という認識ではないみたいだ。
ルゴール軍が異世界から攻めて来る前、世界中を巻き込む大戦争が起きたらしい。それに敗北した日本は、その大戦を制した帝国により統治された。今となってはその帝国という国の統治下にある地。そういう歴史を持つ。
俺の住んでいた日本も第二次世界大戦で大敗したみたいだけど、他国に統治されるまではいかなかったんだから、よほど悪い条件で負けたのか……細かい所まではわからないけど。
だからこの世界は、俺のいた地球とは違う歴史を歩んだ地球っていう解釈でいいみたいだ。
【帝国】により統治された世界。そこへ現れたのがシュヴァリエの祖先、【ルゴール王国】
魔法と魔獣を駆使して攻め込んできたルゴール王国に帝国もパトリオットを中心とした近代兵器で応戦。
しかし慣れない魔法への対応に苦戦。パトリオットを鹵獲され、再開発されて実戦投入してきた頃から帝国に敗色の色が広がった。
というのがこの世界の歴史と大まかな情勢らしい。
佐倉に資料室で教えてもらった話。
今まではその辺全く分からなかったから、これで状況が掴めた。
俺のいた日本とほぼ同じなんだと思うとなんだか安心できた。まぁ薄々わかってはいたけど、事実として理解できるとさ。前世での俺に愛国心なんて無かったけど、やっぱりここが日本だと分かると何となく落ち着く。
それが例え異世界だとしても。いや、異世界だからこそ共通点があるのが安心できるのかも知れない。
「…………」
俺はターボプロップエンジンを複数基搭載した大型輸送機から日本海を見下ろしながら、そんな事を考えていた。
俺がいた世界と同じに見える、だけど全然違う世界で俺は生きていく決心をした。
残念ながらこの世界は戦争中だ。
まずはこの大きな戦争を終わらせたい。トウヤ市で過ごした平穏な日々。ものの数日だったけど、確かに楽しかったその日常を本当の日常にしたいと俺は思うようになった。
「有馬くん?」
俺の隣で寝息を立てていたはずの佐倉が目を覚ましたのか、俺の顔を心配そうに覗き込み。
「起きたのか?」
「あ、うん。あははっ、我ながら寝つきが良くて……ヨダレとか垂れてないよねっ」
「大丈夫だ」
少し照れ臭そうに頭をかいた。
ヨダレも何も、佐倉の整った顔には頬杖の跡すらついていない。
トウヤ基地を離陸してから一時間近く。確かに佐倉は離陸してしばらくすると、すうすうと寝息を立て始めた。
確かに寝付きはいいなとは思ったけど、不規則な仕事だ。休める時に休む事が出来ると言うことは兵士にとっては重要なことの様な気がする。
「そっか、良かったぁ。……あ、夕焼け。すごく綺麗だね」
通路側に座っていた佐倉が身を乗り出し、窓を覗く。
必然的に窓側の席に座っていた俺に佐倉が近づく形になった。ふわっとシャンプーの匂いが香ってきて、甘い気分になる。
けど佐倉は俺の気など知らず、夕焼けを見て無邪気にはしゃいでいる。
そんな純心な彼女を見ていると少しでも邪な事を考えてしまった自分が恥ずかしくなった。
俺の顔が無意識に熱くなる。それを隠す様に口に手を当てて表情を隠した。あくまで自然に冷静を装ったつもりなんだけど、果たして隠せているのか。少なくとも佐倉は気づいていなさそうだったけど。
「…………佐倉さん、少々あざとくありませんか?」
「っ!?」
急に耳元で囁かれて俺は肩を震わせた。
声の主はシュヴァリエだ。俺と佐倉の後ろの席から身を乗り出して何故か半目になって佐倉を睨む。
「わざわざシャンプーまで変えて……」
「え、あざといって何が?」
スンスンと漂う匂いを嗅ぐシュヴァリエはオオカミ族の獣人。俺たちの何倍も嗅覚がいいらしく、そんな些細な変化にも気がつくらしい。けど佐倉はシュヴァリエのその言葉に首を傾げた。
「……天然だと言うのですか……尚のこと恐ろしいですわね」
「……んー? よく分からないけど、綺麗だね。有馬くん」
「お、おお……」
佐倉の宝石の様に美しい黒目に夕焼けが写り込み、さらに輝かせる。
俺たちはトウヤ基地を離れ、違う部隊に転属となった。
トウヤ市周辺にまで侵攻してきていたルゴール軍を退けた事によって、当面の間の脅威は去った。
トウヤが比較的安全になった事と、俺と佐倉の戦闘データに目をつけた上層部が転属を指示したんだとか。
都合の良いように使われるのはイヤだけど、傭兵。文字通り傭われの身だから文句は言えない。
それにトウヤから離れて視野を広げられるのは少なからずワクワクしていた。
「あっ。ほら、有馬くん。見えたよ、私たちの転属先」
佐倉に促されて窓の外に目をやると、夕焼けに照らされた真っ赤な海に浮かぶ船が見えた。
距離が離れている筈なのに感じる存在感。白黒写真で見た昔の大戦で活躍した戦艦を思わせるフォルム。
「……あれが、帝国軍最強という戦艦ですの?」
最強。シュヴァリエはそう言った。
軍艦なんて初めてみたけど、確かにそう言われているのも頷ける。未だ水平線に近い位置にあるのにも関わらず、威厳すら感じる。
「うん、そうだよ。あれが……」
佐倉がそれを見つめながら言った。
「“戦艦ソメイヨシノ”だよ」
お読みいただき、ありがとうございました。
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今回から新章が始まります。転属までの経緯をまとめた様な作りだったかと思いますが、いかがでしたか?
少々説明くさくなってしまいましたでしょうか(汗
もし、こんな所が分かりにくい。言うほど分かりにくくなかったなどのご意見ございましたら是非作者にお聞かせください。
続きは近日中に投稿予定です。
楽しみにしていただけると嬉しいです。




