【莉子の記憶】① ※佐倉莉子視点
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今回と次回は、幕間として佐倉視点をお送りします。
私は小さい頃からすごくお転婆だった。
小学生の頃からクラスの友達が上級生にいじめられているのを知ると、居ても立っても居られなくなって。
相手が上級生の男子でも関係なく立ち向かっていった。
もちろん、今みたいに格闘術なんて身に付けていないからボコボコにやられて。けどタダじゃ帰さなかった。噛み付いたり、引っ掻いたり。
その頃の私の事をお父さんやお母さんは『正義感が強い子だった』というけど、どうなんだろ。自分では今でもわからない。
……そんな事をして私は、誰かを守ったつもりになっていたのかも知れない。
中学生に上がる頃には私には明確な夢が出来ていた。
帝国軍自衛隊に入隊して、トウヤの街を守りたいと思っていた。
街を守る手段はたくさんあるけど、私の一番の夢はなんだと言われたら即答出来た。
魔導人型機動兵器【パトリオット】の操縦者になる事。
小さい頃からパトリオットに憧れていた私はその人型兵器に乗りたくて仕方がなかった。
けれどパトリオットは搭乗者の魔力で動く機動兵器。通称〝魔女〟と呼ばれる魔力を持つ女性しか駆ることが出来ない。
女性にしか宿らないとされる魔力の有無を調べる検査が十六歳の誕生日に受けることが出来るので、私は十六歳になるのが待ち遠しかったのを覚えている。
そして待ちに待った十六歳の誕生日。
見事、私に魔力適性が出た。でも結果は【D】判定。パトリオットを動かせはするが、強力な魔力は持っていないという結果だった。
けどそんな事は、全く関係なかった。
魔力適性がある。それだけで十分嬉しかった。
私は高校を中退し、帝国軍自衛隊に入隊し、トウヤ基地に配属された。
丁度その頃、ロシア方面からホッカイドウにルゴール軍の小隊が攻め込んできたという情報が入っていた。
まだ上陸は許していないらしかったけど、いつでも出撃出来る様に、私は訓練に訓練を重ねた。
『魔力適性があるだけで』そう言われるのが悔しくて、士官試験に向けて座学も頑張った。
どうやら私には格闘術や射撃などの体術系の適性があるらしく、そっちの方は自分でも分かるほどメキメキと力を付けて行った。
けど、どうしてもパトリオットの操縦だけは上手くならない。何処をどうするかは分かるけど、乗り込むとパニックになるのか、頭が混乱する。
……一応言っておくと、パトリオットの操縦はすごく難しい。人間と同じ形のロボットを歩かせるだけでどれだけ難しいか。
……まぁ、他のパイロットはそれでも操縦してるんだけどね。……はぁ。
だけど帝国軍に〝魔女〟はすごく少ない。
ルゴール人は基本的に魔力を持っている個体が多いらしく、その辺は苦労していないらしいけど。
現に最前線になろうかというトウヤに〝魔女〟は私しかいない。
適性が低かろうが、操縦が下手だろうが、私がやるしかないんだ。
私がみんなを守る。その一心で私は、それこそ血の滲む努力を怠らなかった。
入隊から二年。
その頃には、ホッカイドウに上陸したルゴール軍は各都市を占拠し、防衛戦はどんどん押し下げられ、トウヤ基地が防衛線最後の基地になってしまった。
敵国の指揮官はマリオン・シュヴァリエ。
喋り方が鼻につくイヤなヤツだけど、一騎討ちを基本とした戦法で敵ながら正々堂々とした印象を受けるヤツだった。
私は彼女に何度も一騎打ちを申し込まれ、何度も負けた。その度に私は逃がされ、何度も何度も立ち向かった。
どうして殺さなかったのかって、すごく考えだけど……よく分からない。私を捕らえようとしていた気もするけど。
敗北を引きずらなかったわけじゃない。
けど私が殺されては誰がこの街を守るのか。そう自分に言い聞かせて、私は何度も立ち上がった。
何回目かの敗北の後。もう後がないと、そう思った時。
アンナ様が異世界からの勇者を召喚する準備が整ったという事だった。……アンナ様と言うのは、このトウヤ基地を任されている総責任者で、半神半人の召喚師様のこと。
聞けば、勇者とは『異世界からパトリオットの操縦技術に長けた人物を召喚する』との事だった。
私は複雑な気分だった。
今まで頑張って基地を守ってきたつもりだったし、勇者を召喚する事によって、もしかして私は不要になってしまうんじゃないかと。
アンナ様が魔法陣を描き、長い詠唱に入る。
長い杖の石突きで床を叩くと、魔法陣が輝く。思わず目を瞑ってしまった。
再び目を開けた時に、『勇者』はそこにいた。横向きで眠る様に倒れる〝彼女〟に私は駆け寄る。
私と同じ黒髪の、肌色の白い子だった。
手足は細く、とても前世でパトリオットを戦場で駆るような兵士には見えなかった。
私は〝彼女〟を抱き起こす。少し痩せすぎなのか、男の子みたいにゴツゴツとした身体付きだなと思った。
長いまつ毛と、薄い唇。綺麗な肌の子だなと思った。
すうすうと寝息をたてているのを確認して安心した。
良かった。ちゃんと生きてる。
そう安心した私は、あることに気付く。
この子〝男の子〟だと。
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次回も引き続き幕間として莉子視点をお送りします。
明日の朝投稿予定ですので、楽しみにして頂けると嬉しいです。
今回のお話は新生活編の前に編入させていただきます。
今更ながら、優介が転移してきたこの世界は、私たちが住む世界とは異なる世界にあるもう一つの地球が舞台です。
同じ歴史を歩んできたわけでは無いのですが、様々な事が酷似しています。




