【シュヴァリエまっしぐら?】
ご覧頂き、ありがとうございます♪
そろそろ日常回も終わりに近づいてまいりました。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
コメディ要素が強いお話は、タイトルに【?】が付いております。どうか最後まで読んで頂きたく思います(^^)
俺が投げたディスクはシュヴァリエが咥えていた。
「…………何してんだシュヴァリエ?」
「……………………はっ!? わ、私は何をっ!?」
今我に返ったと言わんばかりに、目を見開いて頬に両手を添えて驚いている。
俺は投げたままの体勢で固まってしまった。
近くにいた佐倉が芝生に落ちたディスクを拾い上げる。
「え、無意識なの?」
「き、記憶がありませんわ……私は一体何をしていたのでしょう……」
自分のした事が理解できない様子。
シュヴァリエは自分の震える両手を見つめて、未だに信じられないと言った風に目を見開いている。
けれど俺は見た。
流れるように浮かび上がったディスク目掛けて走り出したシュヴァリエの姿を。
体勢を低くし、弾かれたように走り出し、ディスクへの最短距離を一瞬で駆け抜けて佐倉より高く跳躍した。
そして見事、口でディスクをキャッチしたのだ。
「もしかして、やりたかったの? コレ」
「そ、そんな訳はありませんわ! 淑女たる私がその様な子供じみた遊びをしたいはずは……」
パタパタパタパタパタパタ……。
白のワンピースに隠してあるシュヴァリエの尻尾がすごい勢いで振られている。
ワンピースの内側で振っているもんだから、まるで服の中に生き物がいるかのようで。その、シュヴァリエには悪いがすごく滑稽に見えてしまった。
「はっ!」
「っ!?」 ビク!
佐倉がディスクを投げるフリをする。
それに反応するシュヴァリエ。ビクってなってるぞ。
「ちょっと、何をするんです!? 止めてくださいまし!」
パタパタパタパタパタパタ!
止めろという言葉に反してシュヴァリエの尻尾が更に勢いよく振られる。
「ほっ!」
「っ!?」 ビク!
またも佐倉のフェイント。
「さ、佐倉さん! 焦らさないで下さいまし、投げるなら投げて下さい!」
尻尾を千切れんばかりにブンブンと振ってる。終いには我慢出来ないのか、バタバタと足踏みまで始めた。騎士のプライドはどうした……。
「あ、有馬くんにお願いするよ……なんだか私、頭痛が……」
「お、おう……」
佐倉はディスクを俺に渡すと顳顬を押さえてかぶりを振った。
これが命懸けで出撃して何度も撃墜された敵国のエースパイロットなのか。多分そんな事を考えているに違いない。
俺はオーバーなアクションで投げるフェイントを二回ほど繰り返した。その度にシュヴァリエはビクっとなって悶えた。
「はぁ、はぁ……ご、ご主人さまぁ……」
「あ。すまん、つい」
犬とボールとかで遊ぶ時についフェイントを入れちゃう飼い主の気持ちが分かった。めちゃくちゃリアクションがいいから楽しくなっちまう。これは沼だな。
「お、お願い、致します……私、もう……我慢出来ません、わ……」
「うっ……」
見るとシュヴァリエの頬は紅く高揚し、エメラルドの瞳はキラキラと潤んでいる。均整の取れた肢体を艶かしくくねらせ……その、片腕を何故か太腿に挟んで悩ましげな吐息が漏れる。
「……お、お願い、致します……ご主人様……」
「いいのか? シュヴァリエ」
エメラルドの瞳を見つめる俺。
シュヴァリエは俺の視線をまっすぐ受け止める。時間が止まったかのよう。
「……(投げて)ください……」
「行くぞ、シュヴァリエ……」
「……(コクン)」
「……………ジー……………」
「はっ!?」
そんなやり取りをジト目で眺めていた佐倉に気がつく。
大きな瞳は今や半月のよう。てか、ジーって言ってたぞ。
俺と目が合った佐倉は目線を逸らして、はぁとため息を吐いた。
気を取り直して。
その後俺とシュヴァリエはフライングディスクで遊びまくった。途中で投げるのを佐倉と交代しながら。
サンダルだったシュヴァリエは、途中からそれを脱いで裸足で芝生の公園を走り回った。
金色の髪を靡かせ、全身のバネを使って走り出し、加速をつけてジャンプ。キャッチしたら全力で戻ってくる。途中からはちゃんと手で取っていた。
いつもの涼しげなシュヴァリエの姿は無く、ディスクをキャッチして戻ってくる姿は本当に子犬見たいですごく楽しそうだった。
コレがほんとのシュヴァリエの本質なのかな。
楽しそうなシュヴァリエの姿に当てられた俺と佐倉も心の底から楽しめた気がする。佐倉の笑顔もすごく印象的だった。
休憩しながら、俺たちは色々話した。
俺の世界の事、佐倉の家族の事。そして、シュヴァリエの事。
聞けば騎士のシュヴァリエは平民出身らしかった。子供の頃はよく草原を走り回っていたらしく、今日の事もコレで納得だ。
話し方や所作が綺麗だから貴族出身かと思ったけどそうではないらしく、騎士団に入団してルゴール女王から騎士の位を与えられたのだとか。
シュヴァリエという苗字もその時に貰ったもので、生まれつきの名字ではないらしい。
そして捕虜としてトウヤ基地に軟禁されているシュヴァリエの部下たち〝シュヴァリエ隊〟の隊員たち。
彼女らは志願兵で、シュヴァリエと同じく平民出身の者ばかりらしい。
シュヴァリエは「基地でどんな生活をしているのか気になりますわ」と部下たちの身を案じた。
そろそろ彼女達の処遇も決まってくる事だろう。
不思議な三人暮らしが始まって数日。
よく羽は伸ばせた様な気がする。けれど今は戦争中なんだ、いつまでもこの楽しい時間は続かない。
かけがえないこの様な時間を〝当たり前〟にする為には戦争を終わらせなければ。
芝生で談笑する佐倉とシュヴァリエを眺めながら俺はそんな事を考えていた。
お読みいただき、ありがとうございました。
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続きは近日中に投稿予定ですので、楽しみにして頂けるとありがたいです。
シュヴァリエの『騎士』の爵位についてですが、優介の『特尉』の階級と同じく作者なりの解釈をしております。
なので爵位そのものはやんわりと認識していただけるとありがたいです(o^^o)




