【ありがた迷惑な飼い主?】
ご覧頂き、ありがとうございます♪
今回も前回に引き続き、日常回をお送りします。
楽しんでいただけたら幸いです(^^)
コメディ要素が強いお話は、タイトルに【?】が付いております。どうか最後まで読んで頂きたく思います(^^)
「ご主人様、ちょっとよろしいでしょうか?」
食卓に並べられた昼食を前にシュヴァリエが口を開いた。
俺の家の食卓は丸いローテーブル。大きめのいわゆる〝ちゃぶ台〟だ。座布団を三つ敷いてそこに座って食べるスタイル。ちゃぶ台にはレトルト食品がズラリ。
俺はアグラ。佐倉は姿勢正しく正座。そしてシュヴァリエも佐倉にならって正座をしている。
ルゴール王国では正座などの文化は無いらしいけど、他国ではそういう文化があるらしく、意外とすんなりしたものだった。
「ん、どうした?」
俺はパックに入ったご飯を手に持ったまま顔を上げた。
シュヴァリエは正座をしたまま両膝に拳を置き、やや前傾姿勢で目の前に置かれた自分用の食事を凝視している。
持ち前のもふもふなケモミミはピンと立っている
佐倉も箸を止めてシュヴァリエの言葉を待っていた。
「私の食事の事なのですが」
皿に置かれた自身の食事に目線を落としてシュヴァリエは言う。それは俺が用意した彼女用の食事だった。
俺は首を傾げてシュヴァリエの言葉を待つ。
「所有物の私が食事に疑問を持つなど恐れ多いのですが、どうしても気になってしまったので」
「……」
シュヴァリエのその言葉を聞いて、佐倉は「ほら、やっぱり」などとため息を吐き、小さく呟いた。
え、なんだよ。なにが?
シュヴァリエはやや遠慮気味に聞いた。もふもふの耳も心なしか元気がないようにへたっている。
「あのですね、何故私の食事だけお二人と違うのかなと思ったのです。あ、もちろん不満があるわけでは無いのですが。これはなんの料理なのでしょう?」
シュヴァリエが指すそれは、白い平皿に乗った肉をミンチにしたような食べ物。よくあるコンビーフ的なやつだ。
缶詰を開けて皿に盛って、軽く解しただけのレトルト食品なんだけど……?
佐倉は相変わらず箸を止めて、少し不安そうに俺たちのやりとりを見ている。
確かにシュヴァリエだけ違うメニューなんだけど決して差別したわけじゃなく、シュヴァリエが好きそうな食材を選んだつもりだ。
なんの料理って、何が入ってるかって事だよな?
俺は自信満々に答えようとして……言葉が出てこなかった。
「……あれ、何が入っているんだろうな」
「わ、分からず出されていたのですか?」
提供者である俺も何が入っているか分からない事に不安を覚えたシュヴァリエが珍しく狼狽えた。
だってもう出来上がっている物を缶詰にしているわけだし、肉なのは間違いないけど添加物まではわからない。
「うう、すまん。けど食べても大丈夫なものだぞ? 栄養バランスもいいはずだし。もしかして美味くなかったか? 俺も食べた事はなかったんだけど……」
「いえ、味は申し分ありません。むしろ気に入っています。まるで私の心の奥底の野生を引き出す……とでも言いましょうか。食べていると、こう、夢中になってしまって、気がつくと皿が空になっている程に美味しいのです。だから何なのか気になりましたの」
昨日今日と同じ物を出したんだけど、確かにシュヴァリエのいう通りにその食べっぷりは凄かった。
あっという間に食べ終わってしまったシュヴァリエは、最後に皿を舐める勢いだった。皿を持ち上げ、顔の前まで持って行く途中ではっとして我に返っていたが。
もうその食べっぷりは、まっしぐらだった。
いや食べても良い物しか入ってないんだけど、異国に来て訳の分からないものを食べさせても悪いしな。その気持ちはこっちに転移してきたから良く分かる。
そうだ、パッケージに細かい成分表が載っていたはずだ。缶の中を洗って水を切っているから、流しにまだあったはずだ。
「ちょっと待ってろよ、缶を持ってきてやるよ」
「お手数をおかけします」
俺はキッチンに戻り、シュヴァリエに食べさせた食事の空になった缶詰を持って戻ってきた。
「ほら、これだよ」
「………………」
俺の手にした空き缶を見てシュヴァリエは言葉を失った。
十五cm程の高さの黄色いパッケージ。
美味しそうに皿に盛られたミンチ状の肉の写真。
そしてその横に、コミカルな犬のイラストが描かれている。
アメコミ風に描かれた犬は、快活そうにウインクをして親指を立てている。
「これは〝ドッグフード〟という食べ物だ」
ピンと立った犬っぽいケモミミを持つシュヴァリエは聞けば〝オオカミ〟の獣人族らしい。
オオカミはイヌ科の動物。ならばドッグフードが好きだろうと思っていくつか買ってきておいたのだ。
案の定、気に入ったみたいで良かった。実際美味いって言ってたしな。良かった良かった。
あくまで俺は善意でやった事なんだけど……。
「な、なんて物を食べさせていたのです……か……」
ばたっ。
今まで何を食べていたのか悟ったシュヴァリエは
顔面蒼白になり、ちゃぶ台に力なく突っ伏した。
つづく。
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