【前途多難の新生活?】
ご覧頂き、ありがとうございます♪
前回からの続きとなります。
コメディ要素が強いお話は、タイトルに【?】が付いております。
ですが物語には大切なお話ですので、どうか最後まで読んで頂きたく思います(^^)
「……で、これからどうするんだよ」
アンナが消えた後、しばらく口喧嘩をしていた佐倉とシュヴァリエを連れて俺は家に入った。
北の大地とは言え季節は夏。直射日光が当たる屋外で不毛な言い争いをするのはつらい。
とりあえず紙コップにペットボトルのお茶を注ぎ、それを飲みながら今後について話し合う。
俺たちは簡素な丸いローテーブルを囲んでいた。
「どうするもなにも、私はこの家に住まわせて頂きますわ」
「ぶー!!」
佐倉が啜っていたお茶を盛大に吹き出し、見事な虹が現れた。おお、すげぇ。って言ってる場合か!
「おま、シュヴァリエ、なに言って……」
「あん、ご主人様。そんな他人行儀な呼び方はおやめ下さいまし。私の事はどうぞマリオンとお呼びください」
「え、ええ……?」
俺と話す時だけ声のトーンが妙に甘くなるのはなんなんだ。なんかこう、ガツガツこられた事が今までに無いから、気圧されてしまう。
……まあ、それは一旦置いておいて。シュヴァリエがこの家に住むと言ったんだけど。
麦茶を吹き出した佐倉は、むせながらもその申し出に反論する。
「げほっ、げほっ! な、なに言ってるのアンタ!? そんなの認められる筈ないでしょう!? どこの世界に敵国の兵士を拘束も無しで住まわせる人がいるって言うの!?」
佐倉の言う事はもっともだ。しかしシュヴァリエはさも当然という態度で続ける。
「お忘れですの? 私とご主人様との間には魔力で結ばれた赤い糸。もとい契約がありますわ。もし万が一私がご主人様に危害を加えようとしたら、行動するより早く私の心臓が弾けますのよ」
心臓が弾ける契約を赤い糸と表現するのはどうなんだ。
「これは持ち物である私が主人に逆らわないようにするための安全装置。もちろん私はそんな事をするはずはありませんが」
「“ジャンヌ・ダルク”で掃討するとか言ってたヤツがよく言うよ!」
佐倉の言うことも最もな気もする。
少なくとも佐倉はこのシュヴァリエからトウヤ市を守るために、それこそ死に物狂いで戦ってきた。
その相手が目の前にいる。
例え勝利し、脅威を排除したとしてもおいそれとこの状況は飲み込めないだろう。
「確かに私はこの街を堕とそうとしておりました。それは揺るがない事実。しかし私にも与えられた任務を全うするという信念がありました。家を背負い、国を背負い戦いました。ですが負けて、ご主人様の所有物になったと言うだけの事。……ですが」
一旦言葉を切ってシュヴァリエは続けた。
「……ですが、もし私の率いた小隊が貴女の大切な仲間や家族を傷つけていたのなら謝罪致します」
「……」
シュヴァリエのエメラルドの瞳が輝く。
その瞳には大切なものを背負い戦ってきた騎士の誇りと、それ故の行動による被害者への謝罪の気持ちが秘められているように思えた。
その言葉はタテマエなどと言うものではないと不思議と思うことが出来た。シュヴァリエが誤魔化すことなく、心からそう思っているからこそ気持ちが伝わって来ているのだと。
「……はい許します、とはいかない」
けど、と言ってから佐倉は続けた。
「アナタ達の戦い方は確かに人道的……だった気がする。死傷者がいなかった訳じゃないけど」
「……それはこちらも一緒ですわ」
戦争をして、それが両軍交わる最前線だったとしたら怪我しない方がおかしい。
それでもお互いがお互いなりの理性を保ちながら戦っていたからこそ被害は最小に抑えられていたかもしれない。
「だけど、この間の戦いで決着はついた。だからもう咎めません」
俺のいた世界には、軍事裁判なるものがあって場合によっては罰せられることもあるらしい。
この世界にそんなモノがあるか分からないけど、シュヴァリエは非人道的な事はしてこなかったみたいだ。もしそんな制度があったとしても、重罪にはならない気がする。一士官的な立場みたいだし。
「……」
佐倉のその言葉を聞いたシュヴァリエの表情に、一瞬だけ安堵の色が見えた気がした。
「じゃあ、私はご主人様とここに住みますわ」
「じゃあって何、じゃあって!」
一瞬前までの真面目な空気はどこへやら。すかさず佐倉がつっこむ。
いつの間にか俺の隣に座っていたシュヴァリエは俺の腕を抱いていた。ぷにゃんと豊満なバストが俺の肘に当たる。
いやこれは当たるなんてレベルじゃない。埋まってる埋まってる!
「いやそれは不味いだろ!」
とは言ってみたものの、心の奥底で何かを期待している俺ガイル。
いや確かにパトリオットで戦った相手。あれだけ佐倉を追い込んだ張本人ではあるけれど、捕らえられた上に魔力契約までしている。それもアンナのお墨付きで。
異世界から俺を転移させてしまうような魔力に長けた人間が言うんだ。さっき言っていた、心臓がどうこうって話も間違いないだろう。だからまぁ、その【安全装置】が作動している以上、シュヴァリエに俺が危害を加えられることはまずない。はず。
けどだからと言って、この家に住んでいいかどうかは別問題だ。
「何故ですの? 所有物を家に置くのは当然の事。購入したものは家に持ち帰るでしょう? ご主人様はその食材と私と何が違うと仰るのです?」
スーパー袋を指すシュヴァリエ。
「いやいや、食材はそんなナイスバディじゃないだろ嘘ですごめんなさい」
佐倉の方からキッと刺すような視線を感じたので俺は条件反射で謝罪してしまった。
「……いや、だけどさ」
と言って俺は思った事を話してみる。
もし俺がシュヴァリエを家から追い出したとして、そのあと彼女はどうするのだろうか。
アンナのあの様子だと基地で捕虜として扱うつもりはないらしいし、宿がない状態で追い出して良いのだろうか。
ルゴール人のシュヴァリエは少なからず住民から疎まれるのは目に見えているし、俺と違って家を借りるなんて出来るわけがない。
一文無しの彼女を家から追い出し、路頭に迷わせるのは……甘いかもしれないけど、俺にはできない。
「……はぁ。有馬くんらしいと言うか何というか」
一通り俺の話を聞いた佐倉はため息混じりで、半分諦めたようにそう言った。一方のシュヴァリエは目を輝かせ、「さすが」だのなんだのと頷きながら感心している。
「それに、俺と契約したとは言え、敵国のルゴール人を野放しにしておくわけにはいかないしな。監視という意味でもそばに置いておいた方がいいだろう」
少し考えてから佐倉が言う。
「そうだね……けどもし何かあった時はどうするの?」
佐倉の懸念を否定するように、シュヴァリエが胸に手を当てて澄まし顔で言う。
「安心して下さいまし。恥ずかしながら経験こそ有りませんが、殿方がどうすれば悦ぶかは騎士の嗜み。十分に承知していますわ」
「いや、『何かあったら』ってそっちじゃないから!!……ますます不安になって来たよ……」
ジト目でシュヴァリエを睨みつけると佐倉は、小さく「こうなったら……」と呟くとポケットから小型の通信端末を取り出した。
簡単に操作すると耳に当てる。軍支給のスマホみたいな物で、操作も俺が前の世界で使っていた物とそんなに変わらない。俺も一応、軍から渡されている。
って、いきなりどこに電話してるんだ?
「……ああ、私。……そう有馬くんの家だよ。……うん、今終わったところ」
ん、口ぶりからすると佐倉のお母さんの律さんか、オヤジさんか。俺の引っ越しの手伝いが終わった事を報告しているようだ。
何かを思い立ったように電話し始めたから何かと思ったけど。
「……で、今日から有馬くんと一緒に住むことにしたから。うん。一旦荷物まとめに帰るね。じゃ」
………………は?
「さ、佐倉、今なんて?」
「ルゴール人を野放しにはしておけないし、有馬くんのボディガードが必要でしょ? だから私もここに住むから。大丈夫、部屋数は足りてるし」
「ああ、まぁ一軒家だしなって、そうじゃなくて!」
「……え? 私が居たらお邪魔ですか?」
「い、いえ決してそのような事は!!」
佐倉の刺すような視線は、俺を確実に射抜いた。
けど佐倉の言うことももっともだな。俺はパトリオットの操縦しか出来ない軍人もどきだ。
何かあった時のために佐倉が居てくれたら、そりゃ助かるけど……。
「なんですの、つるぺたさんも一緒ですのね。まぁ私はご主人様のお子を孕めればそれで構いませんので」
「って、その思考が一番の不安要素だから! 有馬くんに指一本でも触れてみなさい!? そのもふもふの尻尾掴んでジャイアントスイングぶちかましてやるんだから!」
「ふっ、貴女のようなチンチクリンに遅れをとる私ではありませんわ!」
二人の言い争いはこの後も続いたが、俺の憧れの一人暮らしは始まったその瞬間に幕を下ろした。
それと同時に、ゲームオタクの俺と、しっかり者の佐倉、そしてルゴール人……ケモミミもふもふのシュヴァリエの不思議な共同生活が始まった。
お読みいただき、ありがとうございました。
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続きは近日中に投稿予定ですので、楽しみにして頂けるとありがたいです。
三人での共同生活が始まるようです。
数話程度、日常回を書いてみようかと思っています。
ロボット分が足りない!もっとロボ出せ!
ラブコメか?いいぞ、もっとやれ!
などのご要望や、ご意見ございましたらどうぞ作者に、お聞かせください。
今回は少し長めになってしまいましたが、お付き合い頂き、ありがとうございました(^^)




