【騎士、再び】
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彼女の再登場です。
俺を羽交い締めにしたままの女を睨みながら、佐倉は拳銃をホルスターに納めた。
しかしいつでも飛び出せるように身構えているのが何となく感じられた。銃を納めたとは言え警戒心は未だ取り払ってはいないようだ。
「ほれ、貴様も」
「……仕方ないですわね」
女はそう言うと、アンナに促されて渋々……非常に名残惜しそうに俺の拘束を解いた。
豊満な胸から解放された俺は、とりあえず胸いっぱいに酸素を取り込み、ある程度離れていた佐倉のところに駆け寄った。
「有馬くん、大丈夫?」
「あぁ、何ともない」
佐倉は俺を背中に隠すように庇ってくれた。佐倉は訓練に訓練を重ねた兵士……だけど女の子だ。俺は逆に佐倉を庇う様に背中に隠す。
けれど佐倉は「ありがとう、でも大丈夫だから」と言って結局俺を守るように匿ってくれた。
情け無いけど、これが俺と佐倉の実力が具現化したものだ。俺は戦闘に関しては素人に過ぎない。
情け無さを感じながらも、佐倉に匿われながら改めて女を見る。
縦に巻いた長髪は、まるで黄金の絹のような滑らかさ。エメラルドを思わせるやや端の下がった瞳。それは優しさすらひめているかのように美しく輝いている。
スラリとした長身で、恐らく百八十cm以上は軽くありそうだ。全体的に線は細く、しかし非常にグラマラスだ。BWHのコントラストはくっきりしているし、なにより拘束服の上からでもわかるバストにはどうしようもなく目線が行ってしまう。
それと女には俺たちには無い身体的特徴があった。
黄金色の艶やかな髪が美しい頭部に、ぴょこぴょこ動く動物の耳の様なものが付いている。
ネコ……? いや、形的に猟犬の耳に見えた。見るからにもふもふ……。
俺の視線がケモミミに釘付けになってしまっていたが、佐倉は冷静に言う。
「……貴様、ルゴール人か」
「ル、ルゴール人!?」
え、ちょっと待って。ルゴール人て、ルゴール王国の?
ルゴール人て、こういう獣人? 的な種族なのか?
突然、垣間見えた空想感を飲み込めていない俺をよそに話はどんどん進んでいく。
佐倉の問いに女はフンと鼻を鳴らすだけで答えない。代わりにアンナがその問いに応えた。
「如何にも。此奴はルゴール人。それに佐倉少尉、お主もよく知っておる人物じゃぞ? 有馬優介、お主もじゃ」
「ルゴール人に知り合いなど……」
と考えたところで佐倉はハッとし、目を丸くして言った。その時には俺も考えが至っており、同じ結論を同時に口にしていた。
「「マリオン・シュヴァリエ!?」」
「ご名答。私こそ元ルゴール王国騎士団シュヴァリエ隊隊長、マリオン・シュヴァリエですわっ!」
シュヴァリエは胸を張ると高らかにそう宣言した。
◇
驚きのあまり状況が見えていなかった俺たちに、アンナはシュヴァリエが此処に至るまでの経緯を話してくれた。
一通り話し終えたアンナは話をこう締め括る。
「……というわけじゃ」と。
俺と佐倉に敗れたシュヴァリエは、【魔導力変換装置】を貫かれた“ジャンヌ・ダルク”ごと回収され、投獄され、治療をしたのだという。
しかし怪我らしい怪我はしておらず、治療は中断。投降したシュヴァリエ隊の“ヴォルガー”たち共々、捕虜になるのが通例だ。
「しかしシュヴァリエはお主と契約したな」
「契約?」
「なんじゃ忘れたのか? “ワルキューレ・ブレイズ”の音声記録にもしかと残っておったぞ。お主ら、決闘の前に契約を交わしておったでは無いか」
……ああ、そういえば。
シュヴァリエと決闘する際に、魔力で練り上げられた契約書が出てきて負けた方が云々カンヌンという様なことを言っていた事を思い出した。
……って!
「え、まさか……」
「そうじゃ。盟約の元、見事に有馬優介は勝負に勝った故に……」
「私は貴方様の持ち物ということになりますわ。ご主人様」
ずいと一歩踏み出して、シュヴァリエはそう言い切った。冗談の様な話だったが、シュヴァリエは冗談を言っている様には見えない。
「「ご、ご主人様ぁ!?」」
俺と佐倉の声が思わずハモる。さすがバディ。
って、そういう事じゃなくて!
「いやいやいやいや、おかしいだろ!」
「何がおかしいものですか。きっちりと契約を交わしたではありませんか」
「なんで律儀に守ってんだよ!?」
「ご主人様、私を見くびって貰っては困りますわ。こう見えて約束はきっちりと守る女ですわよ?」
「約束って……」
シュヴァリエは少し眉端を下げてそう言った。
憎き敵国の一パイロットの所有物になるだなんて約束、おいそれと守る方がおかしくないか?
戦場では騙し合いとか、そういうのも戦略の内なんじゃないのか? 知らんけど。
「有馬くん、確かに決闘の前に交わした契約は〝魔力によるもの〟だった。だからもし破ろうものなら魔力による何かしらの制裁があるはずだよ」
「制裁……?」
「そうじゃな。今回の契約では、敗者が盟約を拒んだ場合、その場で心臓が弾ける」
「え、ま、マジかよ。……解除する方法とか無いのか?」
「もちろんある。双方同意の元での契約破棄じゃ。従者も主人もお互いにの」
シュヴァリエには普通に捕虜か何かになって貰った方がいいだろう。
てかそもそも俺はこんな契約は端から破棄するつもりだったし、いきなり所有物ですだなんて言われて「じゃあよろしく」とはならない。
いかに敵であれ、人権はあるはず。この世界でもしそれが当たり前だったとしても、生まれ育ってきた世界での常識がそれを拒んだ。
シュヴァリエだってこんな契約破棄したいに決まっている。俺が破棄すればそれで終わりだ。そもそもそのつもりだったし。
「じゃあ破棄だ」
俺がそう言うと、シュヴァリエは間髪入れずにニッコリ微笑んで言った。もちろん契約破棄をする為に、その口を開いた。
「お断り致しますわ」
「……は?」
微笑しそう言い切ったシュヴァリエのまさかの返答に、俺と佐倉は絶句した。
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