【新生活】②
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前回に引き続き、優介の新生活編です。
「……え、ちょ、ちょっと……これ、どういう?」
何故コンテナの中に人間が入っているのか、それが何故俺の家にあるのか、何故寝ているのか。
様々な憶測が頭の中で飛び交った結果、混乱した思考が導いた答えは……。
カギと一緒に渡された手紙だ。手紙に何か書いてあるかもしれない。
そう思った俺は慌ててポケットをまさぐった。
「手紙っ」
その声のせいなのかどうなのか。
コンテナの女性の目がパチリと開いて、すくっと立ち上がった。
「あ、有馬くんっ!!」
「……え?」
気がつくと俺はその女性に羽交い締めにされていた。
いや、正確には女性は拘束服を身につけており、両袖がガッチリと金具で繋がっている。
それを逆に利用し、俺の両腕ごと身体を拘束した。
「――貴様っ!! 放しなさい!」
そう叫ぶが早いか、佐倉が脇に隠していたホルスターから拳銃を抜き、遊底をスライドさせ両手で構えた。
すぐ様その女を敵と認識した佐倉は、女を睨みつける。非常に鋭いその眼光はまさに猛禽類のそれだった。
「ぐっ……しまった!」
本当に女なのか、ものすごい力で押さえられた俺は身じろぎ一つ出来ずにもがくばかりだ。
くそっ! なんなんだ、強盗か? さっきの兵士もグル……いや、彼らは基地で見た事がある。そんな事をする様な人たちじゃないはず。
羽交い締めにされた時は、後頭部で敵の鼻に頭突きを喰らわすといいって何かで見たけど、どうやら女の身長は相当に高いらしい。
俺の頭は女の豊満だと思われる胸に埋まってしまっている。
は? 楽しむ暇なんてないに決まってんだろ!
「今すぐ彼を放しなさいっ! さもなくば撃つ!」
鬼の形相で女を睨みつける佐倉。油断無く銃を構えて今にも襲いかかりそうだ。
「何故放す必要があるのです? というか何者ですか貴女は」
鈴の音のような声で涼しげにそう言う女。銃を向けられていると言うのに全く動じた様子は無い。
しかし俺をムギュっと抱きしめると、佐倉から隠すように肩を入れる。
「むぐっ!?」
俺の顔はその女の豊満なバストの間に難なく吸い込まれ、息が出来きなくなる。なんとか身を捩り、体内に酸素を取り込もうと大きく息を吸う。
空気と一緒にその女から漂う艶麗な香りが俺の脳髄にイナズマを走らせる。
(こ、これは……ヤバい)
こんな命の危機すらあるこの状況でそんな事を考えてしまうのはどうかと思うけど、こればかりは自分でどうすることも出来ない。
俺の頭が女の香りでいっぱいになってしまっていることなど知らない佐倉が、トリガーに指をかけたままいう。
「そ、それはこちらの台詞だ! 今すぐに彼を放せ! これは最終通告だ!」
「ふっ、やってみなさい。そんな豆鉄砲、私の魔法の前では……」
その時。
俺のポケットが輝いた。
優しく発光した封筒がふわりと浮き上がり、空中で静止した。
「!?」
「【魔法手紙】!? こんな事が出来るのって……」
宙に浮いた封筒は、ひとりでにビリビリと開封されて中から眩い光が漏れ出る。
俺はその光に思わず目を瞑る。再び目を開けた時に目の前には、身の丈ほどの長さの杖を携えた銀色の長髪の少女が佇んでいた。
(……アンナ?)
トウヤ基地の総責任者にして、半神半人の召喚士アンナだった。
どうやら実体ではないらしく、その翡翠色の瞳はぼんやり透けており、ありていに言うと幽霊みたいだ。
アンナは対峙する佐倉と俺を羽交い締めにして放さない女をなだめるように話し出した。
「はぁ、お主ら待て待て。全く、ほれ双方剣を納めよ」
「しかしっ!」
「少尉」
アンナの言葉を受けてもなお、銃を下ろそうとしない佐倉にアンナは人差し指を立てて制した。
翡翠色の瞳で射抜かれた佐倉は、渋々と言った風に銃を下ろした。
「……ほれ、貴様も下さぬか」
「はぁ……分かりましたわ」
やれやれと言う女。こいつの両腕は俺を羽交い締めにしているし、何より拘束服を着ているので何も持てないんだけど。
何のことか分からなかったが、女の胸の谷間から何とか覗くと、空中に一本の剣が浮いているのが見えた。
鋭いその剣の切先は佐倉を確実に狙っている。
しかし虹色の輝きを放つそれは女の合図で弾け、粒子になって消えた。
ええ……す、すげぇ。これ、魔法だよな?
アンナの姿といい、光の剣といい。やっぱりこの世界は異世界で魔法もこんなに身近にあるんだと実感した。
光の剣が消えたのを確認するとアンナはため息を吐き、俺に杖先を向ける。
「有馬優介。何故手紙を読もうとせなんだ。手紙とカギ。同時に受け取ったら手紙の方を先に読もうとするじゃろ」
「あ、いや、その……」
それアナタの感想ですよねと言いたかったけど、アンナのいう事も最もなので何も言い返せない俺は口をつぐんだ。
「ほれ、貴様も。其奴を放せ。さもなくば相棒が気が気でない様なのでな……ほれ少尉も早よ銃をしまえ」
佐倉を見てニヤリと笑うアンナ。その視線を受け止めた佐倉は女を睨み、それでもアンナの言葉に従った。
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