【初陣】①
「〝世界ランキング一位〟の実力、見せてやるよっ!!」
俺はそう叫ぶと、操縦桿を倒した。
まずはこの【ヴォルガー】との鍔迫り合いをなんとかしないとやられる!
敵機は完全にマウントポジション、SVSの峰を押さえて、後は体重をかけてコチラが力尽きるのを待つばかりの状態だ。
逆にコチラは完全に地に背中を押し付けられて、上向きになってしまっている。
この体勢じゃあ、圧倒的に不利だ!
なんとか両機の間に脚を入れて、蹴り返したい。
だが、このダメージで出来るのか?
一瞬で思考した俺はそれは無理だと判断し、違う行動を取った。
「ふっ!!」
「きゃっ!?」
俺はSVSの角度を変えてアッサリと【ヴォルガー】の一太刀を躱した。
操縦桿を素早く捻り、機体の肩を滑らせる様に引き抜く。
思惑通りにバランスを崩した【ヴォルガー】は驚いた様な挙動を見せ、地面を一、二度転がった後にすぐに起き上がり体勢を整えた。
もちろん俺も素早く起き上がりSVSを構え直す。
不思議な事だけど、やっぱり【パトリオット・オンライン】の操作と全く同じだ! 機体の動きとかGとかがあるからか、多少の違和感はあるけど……これなら!
「やれるっ」
「……すごいっ!」
まさかこの体勢から逃れられるとは思っていなかったのか、彼女が驚嘆の声が耳に入る。
しかし悦に浸っている場合じゃない。
俺はすぐさま操縦桿の側面にある、音声入力ボタンを押し込みAIに命令を下した。
もちろん“ヴォルガー”への牽制も忘れない。SVSを正眼に構え、いかにも斬りかかりそうな所作を見せておく。
「損害報告及び装備一覧を表示!」
『了解……完了』
「読み上げろっ」
『了解……』
“ヴォルガー”が映し出されている正面モニターの端にそれらが表示され、それをAIが無感情に読み上げる。
その表示を“ヴォルガー”の動きを牽制しつつ、機体状況を目と耳で確認していく……。
背面、左脚のスラスターが死んでいる、左腕、両脚の稼働率が著しく低下している。
なるほど、走ったり跳んだり、今は機動力がかなり奪われた状態みたいだ。
瞬間的な動作はどうやら出来そうだけど。
これはこちらから仕掛けるのは厳しそうだな、相手の出方を見つつ、反撃に徹した方が良さそうだ。
それと、一つ気になる事がある。
「あの“ヴォルガー”だけど、人が乗ってんだよな?」
相手が『有人かどうか』。
いくら向こうが俺たちを殺そうとしている状況であったとしても、逆に人殺しになるのはゴメンだ。
ゲームの設定だと【パトリオット】は魔力を動力源としているので、無人機というのはあり得ない筈。
ゲームとの共通点を確認するためにも、希望的観測を含めて俺はそう聞いたが、残念ながら俺の問いに彼女は首を縦に振った。
「あれは有人機よ、【パトリオット】は……」
「魔力が無いと動かない。やっぱりそうなのかよ」
無人機なら問答無用で叩き潰せるのに!
コクピットの位置、たしか設定では喉元だったよな。俺は彼女に確認すると、彼女は肯定した。
そこだけは避けて攻撃しなきゃ目覚めが悪い。
つまり俺は、今から機動力がかなり削られた状態のボロボロの“ワルキューレ”で、三体の“ヴォルガー”を相手にしなきゃならないって訳か。
しかもコクピットを避けながら。
「チュートリアルにしてはキツくねぇか?」
「……くるよっ!」……っ!」
距離を保ち、こちらの出方を窺っていた【ヴォルガー】がSVSを担ぎ突進してきたっ!
数歩助走してから背中のスラスターを噴射して一気に加速、短く跳躍して縦の一閃!
「くっ!……こっちの、気も知らないでぇ!」
こっちの気も知らず殺る気満々の一撃を俺はSVSで正面から受け止めた。
本当なら受けずに、剣を払って相手の小手を落としたい所だけど、下半身の稼働率が低すぎる。それは無理だ。
本来、この“ワルキューレ”の性能なら“ヴォルガー”を圧倒出来るんだけど、このダメージでは同等か。……いや、それ以下だ。
「“ヴォルガー”B、接近してきてるっ!」
「っ!?」
彼女の声に、鍔迫り合いながらもモニターを確認する。
確かに円形の中近距離用レーダーマップには、先程まで表示されていなかった新たな光点が現れた。
合流されたらマズイ!
今の“ワルキューレ”じゃあ一対一じゃなきゃ勝てない。早くコイツを何とかしないと!
「ど、どうするのっ!?」
剣を弾かれない様に気をつけながら相手の刃を滑らせ鍔まで落とし込む。
このままの体勢で次手を考えていたいけど、敵はコイツの他にあと二体いる。静止したままでは恰好の餌食になってしまう。
それを危惧した彼女が不安そうにそう叫んだ。
「んなもん、こうするんだよっ!」
俺は操縦桿のホイールポインターを操作し、武装を一つ選択。トリガーを引いた。
頭部の装甲の一部が展開し、実弾のバルカン砲があらわになり、即座に火を噴いた。
発射された弾丸は“ヴォルガー”の前腕に次々と命中していく。
致命傷になんかならなくて良い!
少しでも牽制になればっ!
みるみる内に残弾ゲージが減っていった。
「チェーンガン、残弾二〇パーセント切ったわっ!」
「っ!!」
分かってる!
全弾撃ち尽くしてもいい、少しだけでも……。
そう願いながら俺は変わらずトリガーを引き続けた。
大量の弾丸を浴びた“ヴォルガー”の前腕部の装甲がボロボロになり、内部のフレームが顔を覗かせた。
その時、ほんの一瞬。
“ヴォルガー”は、ほんの一瞬だけそれを嫌った。
ここしかないっ!!
「うおぉぉぉぉッ!!」
腰の回転を使い、体を右に逃す。
同時に手首を返し、相手のSVSを弾く……!
機体を水平に回転させ、その勢いで縦に一閃! 小手を落とす!
「っ!?」
SVSが“ヴォルガー”の装甲をあっという間に切り進み、一瞬で両腕を切り落とした。
「は、早いっ……!」
再び彼女の感嘆の声。
でも、これだけじゃ終わらないっ!!
再び手首を返し、振り下ろした刃を反転させ思い切り右脚を踏み込む。
“ヴォルガー”の懐に入り込み、腹部に向かってSVSを全力で振り抜いた――っ!!
「うおりゃああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
超高速で振動する刃が“ヴォルガー”の腹部に命中。
合金製の装甲をみるみる内に削り、火花を散らせて切り進んでいく。
脳内に何か分泌されるのか、すごくゆっくりに見えた。
金属の焼ける匂い、目を刺す火花。
いつの間にか、俺が振った……いや、俺が振らせた刃は“ヴォルガー”の上半身と下半身を真っ二つに両断していた。
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続きは明日の朝更新。
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